デザイナー職の需要は本当にある?検索動向から見る人気職種と職種別年収ランキング|求人ボックス【デザイナー職の仕事探し・求人動向】
近年、「デザイナー職」は非常に注目されている一方で、「将来性がない」「競争が激しすぎる」といった声も少なくない。デザイナーの仕事を探す人はどのような条件を求めているのか。実際の求人検索データや年収統計、業界の成長トレンドを踏まえて実態を調査した。
はじめに:デザイナー職の需要は本当にあるのか?
デザイナー職とは、視覚的・空間的・体験的な要素を通じて情報や価値を伝える仕事であり、単に「見た目を美しくする」ことにとどまらず、ユーザーの行動や感情に訴えかけ、デザインにより顧客の課題を解決すことが求められる。
デザイナーの職種
デザイナーはさまざまな分野に欠かせないクリエイティブな職業。代表的なものとして以下のような職種が存在する。
Webデザイナー:Webサイトやアプリの画面設計、UIデザインを行う。ユーザーが使いやすく、視覚的に魅力的なWebサイトを提供することを目指す。
グラフィックデザイナー:広告やパッケージ、販促ツールなどのデザインを担当する。クライアントの要望に応じたクリエイティブな作品を制作する。
UI/UXデザイナー:ユーザーがWebサイトやアプリを直感的に操作できるデザインの設計を担当する専門職。UIはユーザーインターフェースの略での見た目や操作性向上、UXはユーザーエクスペリエンスの略で使いやすさを追求することを目的とする。
プロダクトデザイナー:家具や照明、デジタル製品などのデザインを担う。クライアントとの打ち合わせや制作管理、納品業務も行う。
空間・インテリアデザイナー:空間デザイナーは、展示会や商業施設、オフィスなどの空間設計。インテリアデザイナーは、住宅やオフィス、店舗などの内装デザインを手掛ける。
ゲーム・キャラクターデザイナー:ゲームデザイナーは、ゲームの企画立案や仕様書の作成、データ実装などを担当する。キャラクターデザイナーは、ゲームやアニメなどのキャラクターのデザインを担当する。
これらの職種は異なる専門性を持ちながらも、「 課題をデザインで解決する 」いう本質的な役割がある。
近年拡大しているデザイナー職の需要
近年、デジタル化の進展に伴い、WebデザインやUI/UXデザインといったIT系デザイナーのニーズが急速に高まっている。
経済産業省が発表した「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」によると、2022年度の国内BtoC-EC市場規模は前年より2兆499億円増加し、22兆7,449億円に達した。ECは現代生活に欠かせない存在となっており、市場の拡大に伴ってWebサイト制作や広告クリエイティブの分野でデザイナーが必要とされている。
また、広告業界でもデジタル領域の成長が顕著である。電通の「2024年 日本の広告費」によると、2024年の総広告費は前年比104.9%の7兆6,730億円。そのうちインターネット広告費は3兆6,517億円で、前年比109.6%(3,187億円増)と大きな伸びを記録している。
企業がWebやSNSを活用したデジタルマーケティングへとシフトしていることから、グラフィックコンテンツ制作においてもデザイナーの需要が拡大している。
さらに、副業・フリーランスという働き方の広がりや、クリエイティブ人材への関心の高まりも、デザイナー職への注目を集める要因となっている。
国の「リスキリング支援」で参入障壁に変化
経済産業省が推進する「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」も、Webデザイン分野の社会的ニーズの高さを象徴している。
この事業では、Webデザインやグラフィック、UI/UXなどに関する初心者向けの講座が充実しており、未経験者がデザインスキルを学びやすい環境が整備されている。
その結果、社会人のキャリアチェンジや副業・フリーランスとしての活動を目指す人々がWebデザインの世界に参入しやすくなり、業界全体の活性化につながっている。
一方で、支援制度の充実によりWebデザイナー志望者は増加し、 市場の競争が激化 している側面もある。したがって、今後は「ただ作れる」だけでは不十分であり、 AIの活用、マーケティング視点、UI/UX設計、コーディングスキル などを複合的に備えた、 実務力の高いデザイナー が求められる時代になるといえる。
有効求人倍率は低下傾向、それでも検索ニーズは増加中
厚生労働省のデータによると、「美術家、デザイナー、写真家、映像撮影者」の有効求人倍率は、2023年7月以降減少傾向にあり、2025年3月時点ではわずか0.18倍と、かなり厳しい数値となっている。
一方で、「デザイナー」「デザイン」に関する求人検索回数(※1)は緩やかに増加傾向。これは、就職・転職を検討している層において、デザイナー職が依然として高い関心を持たれていることを示している。
検索ワードランキングの集計・算出方法:「求人ボックス」利用ユーザーが、「求人ボックス」上で関連するキーワード(デザイン、デザイナー)で検索した数をもとに算出。(※1)
2022年3月の検索回数を1として指標化。
出典:厚生労働省『一般職業紹介状況』
【検索キーワードTOP500調査】デザイナーに人気の仕事は?
デザイナーの仕事を探す人から注目を集めている仕事を調査するため、「デザイン」「デザイナー」と合わせて入力された検索キーワードの検索数上位500ワードから、職種に関するキーワードを抽出し、ランキング化した(1位の検索回数を100として指標化)。
人気のあるデザイナー職種ランキング
「デザイン」「デザイナー」と合わせて検索されている職種キーワード1位は「Web」、次いで2位「グラフィック」、3位「ファッション・テキスタイル」と続いた。
Webデザイナーが圧倒的な人気を誇っていることがわかる。さらに、掛け合わせのキーワードとして「未経験」「新卒」といったキーワードを含む検索が多く見られることから、キャリアのスタートとしてWebデザイナーを目指す層が多いことも注目点である。
検索動向の集計・算出方法:「求人ボックス」利用ユーザーが、2024年1月1日から2024年12月31日の期間に、「求人ボックス」内で仕事探しを行う際に、「デザイン」「デザイナー」と合わせて入力された検索キーワードの検索数上位500ワードから抽出。(以下同様)
出典元:Adobe Analytics
人気のある「Webデザイナー」「グラフィックデザイナー」の求人数トレンド
求人ボックスに掲載された求人データによると、2025年4月時点における 直近30日以内の平均求人数 は、
「Webデザイナー」が 104,059件 、平均年収は 465万円 「グラフィックデザイナー」が 21,787件 、平均年収は 459万円
だった。
Webデザイナーの求人数はグラフィックデザイナーの 約4.7倍 と、圧倒的に多く、市場のニーズの高さがうかがえる。
Webデザイナーの正社員の給与分布を見ると、 おおよそ300万円〜900万円 と幅広く、勤務先の規模や業種、保有スキル、実務経験の有無によって年収に大きな差があることがわかる。
背景には、インターネットサービス市場の継続的な成長があり、 Webコンテンツの制作・改善・最適化 といった業務への需要がますます高まっていることがあると考えられる。
【検索キーワードTOP500調査】デザイナーの希望条件は?
デザイナーの求人検索における傾向を把握するため、「デザイン」「デザイナー」とともに検索されたキーワードのうち、検索数上位500件を対象に分析を行った。
就業スタイル
雇用形態・就業タイプ
希望される就業形態では、 「新卒・既卒」が最も多く、41.6% を占めた。
次いで、「アルバイト(バイト)」が29.3%、「業務委託」が16.2%という結果だった。
勤務方法
勤務方法に関するキーワードでは、 「完全在宅」が60.0 %、「在宅」が40.0%という結果となり、 リモートワーク志向の高さ がうかがえる。
希望月給
人気職種「Webデザイナー」と「グラフィックデザイナー」の検索において、希望月給について調査をした。
Webデザイナー
希望月給では、 「24万〜26万円」が52.7% で最多。次いで「21万〜23万円」(25.5%)、「20万円以下」(10.3%)が続いた。
また、「未経験」のキーワードを含む場合でも、「24万〜26万円」が83.5%と圧倒的に多く、 未経験者でも高めの報酬を期待する傾向
があることがわかった。
グラフィックデザイナー
こちらも希望月給「24万〜26万円」が41.9%で最多。次いで「21万〜23万円」(27.7%)、「20万円以下」(19.0%)となった。
「未経験」を含む場合でも、構成に大きな変化は見られなかった。
デザイナー職の年収ランキング
求人ボックスに掲載された求人情報のうち、デザイナー関連職種(※2)について、求人に記載された給与データをもとに年収を調査した。
平均年収が最も高かったのは「プロダクトデザイナー」の750万円だった。プロダクトデザイナーは、メーカーなどの事業会社における社内デザイナーとして勤務するケースと、デザイン会社などでクライアントからの依頼を受けて製品設計を行うケースがある。前者の方が労働条件が良好な傾向にあるものの、いずれの働き方においても高度な専門性と実務経験が求められることから、高年収につながっていると考えられる。
次いで、「UXデザイナー」671万円、「UIデザイナー」648万円と続いた。UI/UXデザイン職は、ユーザー体験の最適化や操作性の向上といった戦略的設計スキルが求められる分野であり、今後も需要の拡大が見込まれる。こうした背景からも、年収面での伸びしろが期待される職種といえる。
求人給与の集計・算出方法:平均年収(統計上正確には中央値)は、「求人ボックス」の「給料ナビ」に掲載されている給与を参照。(2025年5月掲載情報)
給与ナビとは:求人ボックス内に掲載されている求人情報および政府統計データに基づき、給与動向を独自算出したコンテンツ。
(※2)職種は求人ボックスの検索条件として登録されている「デザイナー」に分類された職種および求人数の多いワードを抽出
デザイナー職を選ぶなら「戦略とスキル」の時代
デジタルシフトの加速や多様な働き方の広がりにより、デザイナー職の需要は今後も高まると考えられる。一方で、有効求人倍率が低い中でも人気の高い職種であるため、「好き」だけでは通用しない現実がある。特にWebやUI/UXなどビジネスに直結する領域では、高度な専門性と実務経験を兼ね備えた人材が求められており、スキルの差別化が重要である。
市場の動向を的確に捉え、自身の強みを戦略的に磨くことが、これからのキャリアを築く上で大きな鍵となるだろう。