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さっぽろテレビ塔近く「喫茶店で開かれる学習塾」…“コーヒー1杯”から学びをサポート【札幌】

SASARU

スタッフも和気あいあい

「あなたのコーヒー一杯で子どもにおせっかいを」というモットーを掲げた『喫茶こともし』が、さっぽろテレビ塔の近くにあります。そこには大人たちがコーヒーなどを飲む傍ら、子どもたちは勉強に励むというユニークな光景が…。
喫茶こともしの活動を取材しました。

喫茶こともしの仕組み…コーヒー1杯からでも子どもたちを応援

喫茶こともしのメニュー

喫茶こともしでは大学生以上の大人は次の方法で、子どもたちの学びを支えることができます。

1つ目は「おせっ会員」になるという方法。1カ月に3300円を支払うことでコーヒーが飲み放題になります。そして2つ目が、1杯500円のコーヒー購入から子どもたちの学びを支える方法。
「売り上げの20%を貯金し、喫茶店で勉強をしている子どもたちのシェアドリンクやおやつ代に当てる」(喫茶こともし 平野 順風店長)

さらにユニークなことがもう一つ。なんと喫茶店の中で、平日の火曜日から金曜日にかけて子どもたちの学習塾が開かれています。大人たちは飲み物を飲みながら子どもたちの学びを見守っています。

「安心できる場」子どもから大人までが利用

喫茶こともしの店内

喫茶こともしには幅広い年齢層の人々が集まります。取材した日にも、中高生や大学生、高校教員などさまざまな立場の人が訪れていました。

店内で一緒に仲良く勉強をしていたのは、女子中学生と女子大学生。札幌市内の学校に通う2人は、カフェが落ち着く場だと言います。

「訳があって学校に行けていない分、ここは安心できる場所。ここに来たらなるべく勉強をしようとしている」(札幌の女子中学生)

「1人暮らしなので寂しい。そんな中、『こともし』はよりどころ。ここのことを知っている友人から教えてもらって来るようになった」(札幌の女子大学生)

さらに、こともしに通うようになり、視野が広がったと言います。
「ここに来るようになり、人と関わることが多くなった。そうすると大人の会話もよく耳に入る。どういう会社が必要とされているとか、学校では学べない最新の知識を学べる」(札幌の女子大学生)

喫茶店内の学習塾とは?

塾「こともし」の塾長・今村太一さん

喫茶こともしの中では、3対1の自立学習塾「こともし」が火・水・金曜日に開催。それぞれの開催日の午後に、3コマの授業が用意されていて、1コマ当たり最大3人の生徒が受講できます。

塾長は今村太一さん。北海道大学工学院に通う現役の大学院生です。

現在、同塾に通う生徒は小学生8人、中学生10人、高校生3人。授業では先生1人が、多くても3人の生徒に対し勉強を教えます。今村さんは「同じ1コマの授業に高校生と中学生、小学生が参加していることもある」と言います。

さまざまな学年が一緒に勉強する塾「こともし」では、どのような指導をしているのでしょうか。今村さんは子どもたちの理解度に合わせた学習が大事だと言います。

「『めんどくさい』『動機が分からない』と思い、勉強をしなくなってしまう子もいる。そんな状態でレベルの高い勉強を理解できない。なのでしっかり初歩まで戻る」

さらに今村さんは生徒一人一人との対話を通し、生徒自身に合った学習計画を立てています。
「何よりも子どもたちと話すことを大切にしている。特に受験生は、なかなか自分一人で勉強の計画を立てるのは難しいので、サポートする」

また、受験期でない生徒の場合はどうするのでしょうか。
「『知らないことを知ってみたい』などその子の性格に合った計画を立てることもある」

塾「こともし」の授業の様子

実際に塾「こともし」の授業の様子を取材しました。喫茶「こともし」の利用客がくつろぐ中、今村さんとともに生徒たちは各々の課題に取り組んでいました。

共通テスト対策をしていた女子高校生は「勉強は順調」といい、今村さんと楽しく学んでいる様子が良く伝わってきます。

さらにここは喫茶店。勉強を終えてから飲み物やご飯を食べて、一休みして家路につく生徒の姿も。カフェで小中高生が勉強する利点があると今村さんは言います。

「大学生や大人だとカフェに行ったら、めんどくさい作業でも集中できるという人も多いはず。このハードルを下げるカフェという空間が生徒たちにも受け入れられている」

塾「こともし」意外にも「まくりんく」という授業も…生徒が興味を持つテーマを「探究」

平野 順風さん

喫茶こともしでは学習塾「こともし」のほかに、探究型の学習塾「まくりんく」を毎週木曜日に開講。1人のスタッフと3人のボランティアで子どもたちの学びを支えています。

そして同塾の珍しいのが、国語や数学といった学校の基礎科目の授業をしていないという点。探究型学習を通し、子どもたちの行動力をはぐくむことに主眼が置かれています。

「もちろん学校の勉強も大事。しかし、最近の子どもたちはさまざまな情報に触れやすい環境で生きているので、『自己選択』をするのが難しい社会になってきていると感じる。
そんな中、子どもたちが自己選択をするための練習ができる場となれば良いなと思い、探究型学習塾を始めた」(平野さん)

まくりんくの授業

実際に「まくりんく」ではどのような学習を実践しているのでしょうか。平野さんは「子ども一人一人がやりたいことに合わせてサポートしている」と話します。

そのため子どもたちが学ぶ題材もさまざま。LGBTQ+やフードロスに興味を持ち、ワークショップや発表を行った受講生もいると言います。
「『関心があるなら一緒にTシャツを作って、レインボープライドというイベントでアピールしないか』と誘われて、東京に行った生徒がいる」(平野さん)

まずはLGBTQ+について知ることから始めた取り組み。しかし、学びはそれだけにとどまらないと平野さんは語ります。
「Tシャツを作るといっても、材料費や納期について考えなくてはならない。そこにはいろいろな学びがある。これらの経験を日常のさまざまな場面で生かしてもらえたらと思う」

喫茶こともしの外観

「まくりんく」で大切にしている考えがあると平野さんは言います。
「僕らはよく『試み』という言葉を使うのだが、この言葉はチャレンジよりも手軽な感じ」。平野さんは、子どもたちには少しでもやりたいと思ったことに挑戦してほしいと強調します。

「『木で筆箱を作りたい』と話していた生徒がいた。もちろんいきなり木材から筆箱を作ることは難しいので、絵を描いてみたらとアドバイスした」

実際に生徒が自分の理想の筆箱の絵を描いてみると、構造的に作ることが難しい部分があることが判明。その後、生徒が色々と絵を描いてみて現実的に作ることができる筆箱について一緒に考えました。生徒の「試み」をうまくアシストできた一例です。

まくりんくの授業

まくりんくの生徒たちは2023年に、北海道にゆかりのある学生を対象とした人材育成プログラム「EzoFrogs」のカンファレンスイベント「Ezo LEAPDAY」に参加。一般の人向けに自分たちの成果を発表しました。

「観客からリアルに質問される経験は少ないので、生徒たちは悩みながら答えていた」(平野さん)

また、定期的にまくりんくを運営するNPO法人 E-LINKでも、対面とオンラインの両方で成果発表できたらいいなと平野さんは考えています。「あくまでも生徒が自分のペースでやっていることを発信できたらと思う」

喫茶こともしに来店していた2人

喫茶店と塾――目的や立場、年齢が異なる人々が訪れる喫茶こともし。今日も新たな出会いが生まれています。

喫茶こともし
住所:札幌市中央区南2条東3丁目
公式サイト:https://kotomoshi-coffee.studio.site/

(上記の情報は記事作成時点でのものです。
最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください)

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