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MUCC 3回目のメジャーデビュー、結成27周年、今、何を思い、どこへ向かうのか?

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MUCC

今年4月1日に、キャリア3度目となるメジャー契約で徳間ジャパンへ移籍することを発表し、6月4日に通算47枚目のシングル「愛の唄」をリリースしたMUCC。そして“MUCCの日”である6月9日からは、今のヴィジュアルシーンで注目の10組を“サポートバンド”として各公演に迎えて全国11ヵ所をめぐる全国ツアー『MUCC TOUR 2024「Love Together」』がスタート。結成27周年に突入したバンドは今、何を思い、どこへ向かうのか? ニューシングルについて、ツアーについて、メンバーを代表して、ベースのYUKKEに話を聞いた。■デビューしたての新人ですけど3回目で27年目です!っていう(笑)、そんな自分たちに自信をもってやっていきたい。

――まずは、MUCCの3度目となるメジャーデビューをお祝いさせてください。振り返ってみると、MUCCは2003年5月のシングル「我、在ルベキ場所」で初のメジャー進出を果たして以降、その後には2011年11月のシングル「アルカディア」で再デビューをしたうえ、なんとこのたびは6月4日にシングル「愛の唄」で徳間ジャパンより再々デビューすることになりました。21年の初デビュー時と、今回のデビューを比べたとき、YUKKEさんの中での受け止め方には何かしらの違いがあるものですか?

やっぱり、最初にデビューが決まった頃って自分的には“メジャーのフィールドで活動できるんだ!”っていうことに対しての喜びを感じたところがありました。デビュー=それまで以上にたくさんの人たちに音楽を届けられる機会が増える、っていう風に捉えてたところがありましたし。それに、昔からいろんなバンドのライブに行ってた中で、本編の最後とかアンコールの時に“メジャーデビュー決定!”って大々的に発表するみたいな、ああいうのに憧れてたところもあったんですよ。ただ、実際にMUCCで4年くらい活動を続けてみると、いざデビューするとなっても、“別にうちは派手にメジャーデビュー!とか謳うバンドじゃないな”っていうことに気付きました(笑)。だから、あの21年前のときは特にそういう発表とかもせず、ぬるっと新しい音源をリリースして“実はメジャーデビューしてました”くらいの感じだったんです。

――そういう意味では、2回目のデビューとなったシングル「アルカディア」の時も相当にぬるっとしていましたよね。感覚的には、気が付いたらレーベル移籍していた!?という流れだったように思います。

ですね。あのときも特に何か発表した覚えはないです。でも、逆に今回で3回目ってなると、自分たちでもだんだん面白くなってきちゃったんですよ。周りでも、あんまり“3回目のメジャーデビュー”っていう響きは聞いたことがないし(笑) 。

――該当するアーティスト自体は皆無ではないと思うのですけれど、わざわざ“3回目のメジャーデビュー”という点をアピールする例は見たことがありません。

というのもあって、今回は敢えて盛大に“メジャーデビュー決定!”っていう発表をするのも面白いんじゃない?となったわけなんです。

■平成に入ってからのヴィジュアル系でもなく、自分たちが音楽を聴き出した頃のヴィジュアル系の雰囲気を、今この時代に表現してみたかった。

――それも、エイプリルフールに発表というのがフェイント的でしたよね。しかも、告知写真が90年代前半を彷彿とさせる“古のヴィジュアル系バンド”をオマージュしたような見た目でしたので、SNSなどでは“4月1日だし単なるネタなのでは?”と戸惑っている夢烏(ムッカー:MUCCファンの呼称)さんたちもいらっしゃったようです。

MUCCって、なんか5年に1回くらいああいう普段の自分たちとは全く違うことをやってみたくなる周期がやってくるんですよ。昔、雑誌でいわゆるソフトヴィジュアル系みたいなメイクと衣装で撮影したことなんかもありましたけど、今回はまたそれとは別の方向からガッツリといきました。

シングル「愛の唄」【CROWN TOKUMA SHOP限定盤】ジャケット写真

――令和6年であり2024年となる今、わざわざ90年代初期あたりの雰囲気を醸し出すことになった理由は何でしたか。

そもそも、今回は「愛の唄」を作り出す時点でそういう90年代っていうキーワードが出てたんですよ。平成に入ってからのヴィジュアル系でもなく、自分たちが音楽を聴き出した頃のヴィジュアル系の雰囲気を、今この時代に表現してみたかったんです。しかも、MUCCとしては今までそういうことは全然やってきてないですから。

――確かに。MUCCは始動当初から、当時の流行りや王道的なスタイルとは無縁なスタンスを今に至るまで貫いてきているバンドだと言えるでしょう。それどころか、密室系という異端派に属していたほどですものね。

そのMUCCが、あのエイプリルフールの写真では完全に密室系じゃないバンドになったわけです(笑) 。

――ちなみに、あの写真の中でYUKKEさんはいわゆる女形としての存在感を強く放っていらっしゃいました。ゴスロリの雛形を感じさせる風情が素敵ですね。

それはだって、3人のうちひとりは絶対に女形がいなきゃダメだと思ったんです。あと、昔から女形というのをやってみたい気持ちも2%くらいありました。

――なるほど。この場合、以前から夢烏さんの間ではおなじみの輸○子さんの件については触れない方がよろしいのですかね…?

まぁ、そういう意味で言えばそこそこ慣れてるところはありますけどね(笑)。とは言え、あらためてやってみると女形って良い気分になるなって思いました。写真だけじゃなくて、楽器を持っての映像もちょっと撮らせてもらったところ、スカートを履いてあの格好だと気持ちの入り方が凄い変わるんですよ。あれは非常にアガりますね。バンドを27年くらいやってきても、まだこんなに新鮮な気持ちになれることがあるんだ!って思って、ほんとに楽しかったです。

――では、ここからはそんなインパクトの強いトピックスもありつつで、いよいよ完成したシングル「愛の唄」についてのお話をうかがって参りましょう。先ほどは、当初から90年代というキーワードが事前に出ていたという発言がありましたけれど、それはいかなる経緯で浮かび上がってきた言葉だったのですか?

作品の制作に入るときって、MUCCでは特に話し合いとかってそんなにしたことがないんですよ。ただ、今回は作曲に入る前の段階でリーダー(ミヤ:Gt)からワンワードだけ“90年代かな”って言ってたので、そこを軸に自分でも作曲をしていくことになったんです。

――かくして、今作「愛の唄」にはミヤさん作曲の表題曲と、YUKKEさんとミヤさんの共作による「Violet」が収録されることになりました。YUKKEさんからすると、表題曲「愛の唄」については特にどのような点から90年代の香りを感じられたのでしょう。

最初に曲をもらった段階で自分が感じたのは、ダークな中にポップさも持ち合わせてる曲だなと思いました。‟その頃のBUCK-TICK”からも近い匂いを感じてたというか。そういう感覚がこの「愛の唄」の中には入ってるような気がしたんです。でも、だからと言ってそれらしい曲をまんま作ろうとしていたわけではないので、ここには今まで自分たちが積み重ねてきた経験値とか、自分たちの持ってるスキルの中でこの曲に活かせるもの、そして今の自分たちだから出せる音といったものもいろいろ詰め込んでいくことになりました。

――骨太なバンドサウンドが基盤となっている曲だけに、この「愛の唄」からはYUKKEさんのベースラインが深いところで躍動している様子も克明に伝わってきますね。

そう言ってもらえると嬉しいです。この曲には全体的にドロッとした空気が漂っていて、色のイメージとしてもダークなトーンになっているので、ベースではそこにうねりを加えられたらいいなという気持ちで弾きました。

――ここでYUKKEさんの表現されている“うねり”は、すこぶる絶妙なものだと感じます。思うに、これは心地良さと気持ち悪さの狭間で鳴る音になっておりませんか。

気怠い感じはありますよね。自分がレコーディングで弾く段階だと、まだ逹瑯(Vo)の歌詞はついてない状態だったんですけど、最後はこの歌詞と唄がのることでMUCCならではの濃度がより高まったところもかなりあるかな。ベースを弾いているときには、こうなる先をなんとなく想像しながら弾いたところもありました。

――さすがです。それにしても、3度目となるメジャーデビューを飾るシングルの表題曲が「愛の唄」とはなんとも粋ですね。

デビューシングルが「愛の唄」って、とにかくこの響きがいいなと俺も思います。すごく気に入ってるんですよ。世の中には他にも“あいのうた”っていう言葉の響きを持ったタイトルの曲がいくつもあるとは思うんですけど、少なくともこれまでの俺が知ってた“あいのうた”たちとは全く違うテイストの「愛の唄」を完成させることができたことがほんとに嬉しくて。華やかでメロディアスなこのデビュー曲をみんなで一緒に歌いましょう!っていう方向性とはまるで違う、MUCCとしてのこの「愛の唄」を今後ツアーでやっていくのも楽しみですね。おそらくこれは、ライブの雰囲気を一瞬でガラリと変えていくような曲になっていく予感がしてます。

■「愛の唄」の曲のMVを先行発表したときにお客さんたちの中からは“ここにきて、MUCCがアダルトな色気を出してきた”っていう意見が出てました。

――なお、そんな「愛の唄」を今回【CROWN TOKUMA SHOP限定盤】では「愛の唄(Original YukkeOKE)」「愛の唄(Original MiyaOKE)」というかたちで、YUKKEさんとミヤさんもボーカリストとして歌っていらっしゃいます。シングル曲をメンバー全員がそれぞれに歌って音源化するという例は前代未聞のように思うのですけれど、これは一体何を切っ掛けに実現した企画だったのですか?

90年代つながりで、当時のシングルとして主流だった“8cmCDを作ろう”っていう話になり、だったらカップリング曲をどうしようか?と考えてたときに出てきたアイディアだったんですよ。昔、自分の作ったデモを音源として発表したことはあったんですけど、こんなにバッチリ本気で歌をレコーディングするっていう経験はなかったので、これも自分にとってはバンドを27年やってきて初めて経験することでしたね。

――しかも、この「愛の唄」のボーカルは相当に難易度が高いのではありませんか。

むっちゃ難しいです。しかも、この曲のMVを先行発表したときにお客さんたちの中からは“ここにきて、MUCCがアダルトな色気を出してきた”っていう意見が出てたりしましたからねぇ。そういう曲で“恥ずかしい…!”とか“難しくて歌えない!!”ってなっちゃうのは避けたかったし、何より面白くないんで、ここはこう歌おうとか、ここはこんな風に表現したい、って考えながら事前にけっこう綿密な練習をしたんですよ。でも、実際にレコーディングブースでマイクを前に歌うとなると、思っていた以上に難しくて。当然、普段コーラス録りとかで歌ってるのも全く感覚が違うし、ほんと“歌ってこんなに難しいんだな”とあらためて感じました。そして、MUCCの本気の演奏に対して自分が歌を入れるというあの独特なプレッシャーも初体験でしたね。

――ということは、録り終わるまでにはある程度の時間もかかることに?

いや、それが意外とすんなりOKもらえたんですよ。というか、はじめに練習でワンテイク歌わせてもらったつもりだったのがOKになっちゃいました。俺としては“ちょっと待って。もう少しできるんだよ!”って言って、もう1回だけ録らせてもらったんですけど。この俺なりの表現で歌った「愛の唄」の声色も、ぜひ皆に聴いてもらいたいです。

――逹瑯さんの貫録と深みのある歌声はもちろんですが、YUKKEさんの健気でひたむきな歌声、ミヤさんのロックでエモい歌声もそれぞれに魅力的ですし、同じ曲を歌っているはずなのに見事なほど三者三様で大変興味深いです。

みんな全然違いますよね。俺もそこが面白いなと思いました。

――そういえば、先ほど8cmCDの話題が出ましたので。YUKKEさんに、90年代当時に初めて買った8cmCDシングルが何だったのか?ということもうかがってみたいです。

浜田省吾さんの「悲しみは雪のように」です。

――1992年に放送されたTVドラマ主題歌だった曲ですね。懐かしい。

それより前にZOOの「Choo Choo TRAIN」も買ったことあったんですけど、あれは8cmで短冊形でしたけどジャケットのデザインは縦型じゃなくて横型だったんですよ。あとは、内田有紀さんの「TENCAを取ろう! -内田の野望-」は好きで買ったんですけど、そのことを友だちに公表するのはちょっと気恥ずかしくて、部屋の引き出しに鍵かけて大事にしまってました(笑)。

――バンド物の8cmCDの購入経験はありませんでした?

バンドの音楽を聴きだしたのは、高校生になってからだったんです。だから、その前は基本的にテレビから流れてくるJ-POPの中で好きなのを買って聴いてる感じでした。

――J-POPと言えば、今回のシングルでYUKKEさんとミヤさんの共作されている「Violet」からは、そこはかとないJ-POPの気配も若干感じます。

あー、でも「Violet」に関してはJ-POPというより、高校生になってバンドの音楽を聴き出した頃のことを意識しながら作った曲なんですよね。それこそ、当時はヴィジュアル系ばかりと言っていいくらいそういう音楽を夢中で聴いていたんですけど、友だちの中にはもっと幅広く聴いてる人もいて、彼らの家に遊びに行くとBOØWYやCOMPLEX、ハイスタ(Hi-STANDARD)とかオフスプリング(The Offspring)なんかがいろいろかかってたので、一緒に聴かせてもらったりしていたんです。これはその頃のことを思い出しながら作り出した曲で、中でもBOØWYとCOMPLEXのイメージが自分の中では強かったです。

――80年代後半から90年代にかけてバンドを始めた人たちについては、BOØWYかCOMPLEXのコピーからスタートしたという人が相当いたのではないかと思われます。

でしょうね。ただ、BOØWYとかCOMPLEXを友だちに教えてもらう前から、氷室京介さんの『SINGLES』だけは持っててよく聴いてたんですよ。俺が氷室さんのことを語るっていうのはこれが初めてになると思うんですけど、当時のYUKKEながらに“凄くカッコいい!!”と思ってたし、この「Violet」にはもしかしたらその時の気持ちも反映されたのかもしれないですね。多分それもあって、この曲は持っていったときに“90年代といより80年代後半じゃない?”って言われたんですよ。

――言われてみれば。イントロのシンセの音色や、このビート感は特に80年代的かもしれませんね。

そこに微妙なズレがあるのは、俺がリアルタイムよりも遅れて聴いてるからなんですよ。俺としては90年代に聴いてたんだけど、実際に作られたのは80年代後半だった、っていう音楽たちの雰囲気が「Violet」には投影されているんです。

――そういうことでしたか。80年代後半から90年代にかけての時代感を、音として生み出していく際にYUKKEさんが重視されたのはどのようなことですか。

現代と当時ではいろんなことが全然違うと思うんですよ。たとえば、聴いてる環境とかメディアからして違うわけじゃないですか。昔はラジカセとか、ポータブルCDプレイヤーとかを使ってたり。

――CDコンポというオーディオシステムなどもそれなりに普及していました。

その当時の音って、楽器単音をとっても今あらためて聴くと凄く雰囲気のある音なんですよね。昔はそんなことまで考えては聴いてなかったですけど、それぞれのプレイやフレーズは意外とシンプルなのに、ちゃんと説得力があって計算もされているんだと思うんです。「Violet」もそういうタイプの曲で、細かく凝ったフレージングとかは入れてないかわりに、シンプルなプレイだからこそ出せる味わい深さとか面白さを出せたんじゃないかと思います。これは去年、「under the moonlight」(2023年10月~11月に開催されたMUCC 25th Anniversary TOUR『Timeless』~カルマ・シャングリラ~」にて会場限定販売されたシングル「サイレン」のカップリング曲。同年12月にはアルバム『Timeless』にも収録されることになった)を作った後だったからこそ、曲の持ち味をしっかり理解したうえでやれたところでもありましたね。

■「Violet」は、当時あったカクテルのイメージとか、“今じゃない言葉”が並んでる詞はすごくこの曲にぴったりだなと思いました。

――「Violet」の詞はミヤさんが書かれていらっしゃいますが、YUKKEさんから何かイメージを事前にお伝えするようなことはあったのでしょうか。

それは特になかったです。曲を出してから、音を仕上げていく中でずっと同じ線路を進んでいっている感覚があったので、詞ももちろん任せて大丈夫だなと思ったし、この詞がのることでさらに世界を拡げてもらえたなと感じてます。

――「Violet」だけに、情景描写としての《曖昧なColorの夜明け抱いて》というフレーズが美しく映えていますし、それだけでなく香りを思わせるくだりもあって、いずれも重要なポイントとなっているように感じます。

「Violet」は、自分の中でも最初からバイオレットだったんです。当時あったバイオレットフィズっていうカクテルのイメージとか、当時の記憶として残ってる匂いとかもあるんで、この“今じゃない言葉”が並んでる詞はすごくこの曲にぴったりだなと思いました。

――昨今はカラフルなお酒と言えばクライナーが定番ですけれど、1990年代中盤にはバイオレットフィズをはじめとした瓶入りカクテルが流行したのは懐かしい思い出です。また、《GIVANCYの影残して》という表現も今や定番の香りになり過ぎていますので、これも流行りではなくなっているものの象徴なのでしょうね。振り返れば、MUCCは2015年に『T.R.E.N.D.Y. -Paradise from 1997-』という作品を発表したこともありましたし、やはりこのバンドが描く90年代の感覚は随一かもしれません。もちろん、90年代の音に限ったことではないのですけれど、MUCCは音で時代感を醸し出すことが本当に得意なバンドなのだなと今回は再認識しました。

そういうのは確かに得意だと思います。曲によっては、いわゆる70'sとか、80'sっぽい音を意識して出すこともありますし。ただ、そのへんは自分にとってMUCCを始めてから完全に後追いして聴いた音楽なんですよ。その点、90年前後とかそれ以降の音楽はほぼリアルタイムか、それに近い感じで聴いてきてるから、自分にとって身近なのは間違いないです。「Violet」は「愛の唄」と同じシングルに入る曲としての対比も上手いこと出せたと思うし、自分たちとしては遊べた曲にもなりましたね。だから、今回カップリングとしては珍しく初回限定盤の方に「Violet」のMVも入れることになったんですよ。

――それはどのような方向性の映像になりそうなのでしょう?

ドキュメント映像を中心にしたものになると思いますけど、映像をわざと当時のガラケーで撮ったりしてます。あとは、90年代の日常を表現した映像なんかも入れてるので、MVでもけっこう遊んでますね(笑)。去年あたりから、TikTokとかにも投稿してる平成こじらせ部屋っていうYouTuberの方のチャンネルを個人的によく見てて、今回はその方に強力していただいてるんですよ。

――平成こじらせ部屋はわたしも拝見しております。MUCCとコラボとは胸熱です(笑)。

うちらが高校時代にたまってた友だちの部屋みたいな雰囲気とか、当時よく飲んでたジュースの缶とか、そういうものを映像で再現してるので面白いと思います。音だけじゃなくて、視覚的にもあの頃の時代感を楽しんでもらえると嬉しいです。

■これからもMUCCらしさをもっと突き詰めていきながら、いつまでも飽きない刺激的なバンドでたいです。

――さてさて。この記念すべきMUCCの再々デビューシングル「愛の唄」が晴れてリリースされますと、次に待ち受けているのはツアー『Love Together』です。なんでも、各公演には後輩にあたるサポートバンドたちを従えていくことになるそうですね。

去年くらいから次のツアーに向けた構想は練っていて、このところはずっとワンマンが多かったから、今年はちょっと新しいことをやりたかったんですよ。それで、今回は対バンというかサポートバンド形式でやりたいねというところから話は始まりました。

――キズ、NoGoD、甘い暴力、vistlip、MAMA.、CHAQLA.、JILUKA、ΛrlequiΩ、色々な十字架、DEZERTとは錚々たるメンツです。シーンの前線で戦い続けてきている頼もしい中堅どころから、今まさに成長中のバンド、これからのシーンを担っていって欲しいバンドまでがずらりと揃った印象です。27年選手であるMUCCとしては、後輩たちから刺激を受けたいという面もありつつ、彼らに貴重な経験の場を提供したいという想いもあったのでしょうか。

そこはメンバー個人によってもそれぞれの気持ちがあると思いますけど、自分の場合は最近いろんな若手のバンドのライブを観させてもらう機会がけっこうあった中で、純粋に“一緒にやってみたいな”って思ったのが大きいです。自分たちのお客さんに“このバンドを観せてあげたいな”っていう風にも思ったし。MUCCとやったときに、どういう化学反応するんだろう?って興味が湧いたバンドもたくさん出てきていたので、この機会に誘わせてもらいました。ほんと、後輩とはいえみんな刺激的なバンドばかりなんですよ。DEZERTなんて、平気で噛みついてきたりするし(笑)。

――昨夏の『DEZERT PARTY vol.14 -EXTRA Edition- DEZERT vs MUCC ~LAST SHINJUKU BLAZE~』も、ガチの真剣勝負でしたものね。

あれはDEZERTの方から“やりましょうよ!”って言ってくれて実現したんですけど、関係性的には弟分みたいな感覚もありつつ、ライブで戦ってみると“ああいう感じ”ですからね。きっとほかのバンドたちも、かなり闘い甲斐あるんだろうなって思っているんです。観たことはあるけど、一緒にやったことないバンドたちもいたり、未知数なところがあるのもワクワクしちゃいます。

――シングル「愛の唄」との相性という意味では、90年代V系の再来的な存在として認知度を高めている色々な十字架との1局も非常に気になりますよ。

あぁ、彼らも良い色を添えてくれそうですよね。日程的にもリーダーの誕生日とあわせて2デイズ出てくれるので、十字架だったら何か一緒に面白い仕掛けも考えてくれそうなので(笑)、俺も楽しみにしてます。とにかく全バンド、みんなには本気でかかってきて欲しいんですよ。

――受けて立つぞ、ということですね?

ビックリさせて欲しいですねぇ。今度の『Love Together』で深く知り合っていけるといいなと思ってます。そして、今回対バンしたからそれで終わりとかじゃなくて、ここから撒いていく種がいずれ芽を出していってくれる未来があると理想的だなと思ってます。

――愛あるところには、きっと新しい何かが生まれていくのではないでしょうか。つくづく『Love Together』とは良いツアータイトルを冠せられましたね。

「愛の唄」を持って廻っていくツアーなので、Loveっていう言葉がまずあった中、リーダーからもサポートバンドたちとやってくツアーだからTogetherっていう言葉が出て来たので、だったらLove Togetherにすれば響きも良いし、意味も素敵だし、キャッチーだなと思って。あと、時代感もちょっと出てると思いますしね。

――最後に。気付けば27年で、今まさに再々デビューするMUCCは、ここからいよいよ30周年も視野に入れた活動をしていくことになるかと思います。YUKKEさんの描く将来的ビジョンについても、もし可能であればお聞かせください。

「愛の唄」も出来上がってみたらMUCCらしいものになってたし、ツアーはツアーでMUCCにとって新しいことをやっていけそうなので、これからもMUCCらしさをもっと突き詰めていきながら、いつまでも飽きない刺激的なバンドでたいです。デビューしたての新人ですけど3回目で27年目です!っていう(笑)、そんな自分たちに自信をもってやっていきたいと思います!

取材・文=杉江由紀

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