テープ2025年問題 急がれる歴史資料の保存
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今日は「テープの2025年問題」についてです。
マグネティック・テープ・アラートとは
昭和や平成の時代に普及したビデオテープやカセットテープが、今年2025年には、見たり聞いたりできなくなる可能性があると、ユネスコ(国連教育科学文化機関)などが警告を出しています。どんな内容なのか、映画の保存や研究、公開などを行う国立映画アーカイブ 主任研究員 冨田美香さんに伺いました。
国立映画アーカイブ 主任研究員 冨田美香さん
ユネスコと国際音声視聴覚アーカイブが、2019年7月に連名で出した警告なんですけど「マグネティック・テープ・アラート」と言って、いわゆる磁気テープですね。音声を記録するカセットテープとか、古いところではオープンリール、それからいわゆるビデオテープ全般についてのアラートになります。2025年くらいになると、動く再生デッキがどんどん少なくなってくるので、テープは残っていても見られなくなりかねませんよ、というアラートなんですね。テープ自体がダメになるから見たり聞いたりできませんということではなく、再生デッキが、もうメンテナンスは全て終わっていますし、生産もされていないので、再生デッキが無くなるので、見られなくなりますよ。聞けなくなりますよ。早めにデジタルファイルにして、保存をして、いつでもアクセスできるように管理していきましょうということです。
CD、DVDやブルーレイなどの普及によって、ビデオやカセットの需要がなくなり、再生デッキの生産や修理などのサービスがすでに終わってしまったということなんです。
運動会や結婚式の映像など、各家庭の思い出のビデオテープも見られなくなるので「大事なものから優先順位をつけてデジタルファイルにすること。デジタル化する際は、バックアップをとって、DVDやハードディスクなど複数の違うメディアに保存して、さらに4・5年に1回は保存するメディアを変える、移すことが大事」だと冨田さんは話していました。
沖縄 民話をデジタル化
さらに、2025年問題は、歴史や文化など各地の貴重な資料にも影響を与えています。昔話や伝説など「民話」の調査や保存を行っている沖縄のNPO法人は、この警告が出る以前から、民話のデジタル化に取り組んできました。NPO法人沖縄伝承話資料センター 理事長 比嘉久さんのお話です。
NPO法人沖縄伝承話資料センター 理事長 比嘉久さん
民話調査は1973年に始まっているんです。沖縄国際大学の学生たちが昔話とか民話の勉強をしながら、直接お年寄りから話を聞いていく。カセットレコーダーを持って行ってマイクでお年寄りの話を収録して、それをカセットテープにおさめて記録していくという作業。これが民話調査です。そのテープが残っているということです。30年間ずっと同じスタイルで調査をして、カセットが約4400本あります。劣化していくのが心配だったものですから、2000年になってどうにかデジタル化していこうという動きがあった。30年間で集めた話が約7万6000話。そのうちの4万5000話くらいまでは、デジタル化を終了しています。
(当時の民話調査の様子)
きっかけはカセットテープの劣化を心配してデジタル化を始めたそうですが、今は再生デッキが無くなっているのが問題だと。残り3万話ほどは「なんとかあと5年を目処に、デジタル化を終えたい」と話していました。デジタル化したものは沖縄県立博物館・美術館に寄贈し、HPで公開しています。
音声で次の世代へ残す意義
今後の課題や、デジタル化して「音声」で残すことの意義について再び、NPO法人沖縄伝承話資料センター 理事長 比嘉久さんのお話です。
NPO法人沖縄伝承話資料センター 理事長 比嘉久さん
今作業に関わっている人たちが、40年、30年前に学生として関わっていた人たちが作業しているんですよ。その世代がちょっと下におりると、今度は調査の経験のない人たちが整理することになって、聞き直すときに方言が分からない場合があるんですよね。そういった意味で、正しい言葉を伝えることができるか、という心配はあります。民話を次の世代に伝えるためにということで、民話集を作る、文字に起こして伝えてたんですけど、文字に起こしただけでは、語りのニュアンス、強調される部分とか、穏やかに喋る部分とか、方言の発音などが文字では表現できないので、デジタル化して、うまく次の世代に聞けるようにやっていければいいかなと思っています。
(当時の民話調査の様子)
比嘉さんは「僕らの世代でさえ、方言をうまく語ることができなくなっている。次の世代は、もう方言を聞くこともできない寂しい状況になっているので、デジタル化したものを活用して、もう一度ゆっくりでいいから、昔の人の語りを耳に入れていくことができれば、まだまだ大丈夫じゃないかな」と話していました。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:西村志野)