魚の養殖と野菜の栽培を同時に行う次世代の循環型農業 「小さな地球」と呼ばれるその方法とは?|地球派宣言
水からひょっこり顔を出すのは、チョウザメ。
塩漬けにした卵は、世界三大珍味・キャビアとして珍重され、魚肉もヨーロッパや中国などでは、高級食材として知られています。
チョウザメの水槽のすぐ隣では、ホウレン草などの野菜が栽培されています。
この小さなスペースで魚の養殖と野菜の栽培を一体で行うのは、次世代型農業として注目されている「アクアポニックス」と呼ばれるシステム。
神石高原町にある油木高校の産業ビジネス科が、地域の農業をビジネスに活かす実習として去年の4月に導入しました。
アクアポニックスの仕組みは、水槽の魚が糞をしてアンモニアが発生すると、微生物がいるろ過装置へ。
微生物が糞を肥料の成分として分解すると、野菜の栄養になります。
それを野菜の根が吸い上げると、水が浄化されます。
そして浄化された水は、再び魚の水槽へと戻るというシステム。
この循環は、一度はじまると人の手はほとんど必要なく、生産が持続的にできるといいます。
そのため「小さな地球」とも呼ばれています。
通称・アクポニ班の杉迫将希さんは、「いざやってみるとこんな合理的な農法があるんだったら早くやりたかった」とこのシステムに興味津々。
生徒たちは、まったく新しい挑戦として、手探りの状態からはじめました。
一番苦労したのは、水質の調整だったそうです。
「チョウザメの暮らしやすい水質に合わせることと、植物がちゃんと栄養を吸える濃度にするという水質の管理が大変でした。難しいけれど、新しいことに挑戦するという責任感もともなうので、それもいい経験だなとすごく感じます」と杉迫さんは話します。
導入からおよそ1年、生徒たちは試行錯誤をしながらようやくおいしい野菜の収穫もできるようになりました。
杉迫さんは、「まだ日本ではあまり浸透していないので、『これができたよ』というのが増えていくと強みになる。もっと観光資源として活用できたらいい」と神石高原町の新たな産業としても期待しています。
実習助手・石田七生さんは、「このアクアポニックスで地域が盛り上がってくれればいいなという部分はあるんですが、アクアポニックスは生徒にとっても、地球の循環というのを意識できるのでいい教材になっているかなと思っています」と話します。
育った野菜とチョウザメはまだ商品化されていませんが、いずれは神石高原町のブランド食材として売り出したいそうです。
広島ホームテレビ『ピタニュー』
地球派宣言コーナー(2025年2月19日放送)