手づくり小型ボート、いざ進水 釜石商工高・機械科の課題研究 試行錯誤で成長実感
釜石市大平町の釜石商工高(今野晋校長、生徒180人)の機械科3年生21人は、バイク製作やボードゲーム作りなど4つのテーマで課題研究カリキュラムに取り組んでいる。このうち、小型ボート(2人乗り)の製作に挑んだ7人が6日、同市鵜住居町の鵜住居川で出来栄えを確認。「学びや実習の経験を生かせた。楽しい」と納得の笑顔を連鎖させた。
課題研究は5月に本格化。小型ボート班は、製作や運航を通じて安全に関する知識や理解を深めることも目的に、今年初めてテーマに組み込まれた。楽しいことが好きな7人が選択し、週3時間、ものづくりを通じた学びの深化に取り組んできた。
ボートは発泡スチロール製。ガラス繊維で強化し、さらに繊維強化プラスチック(FRP)樹脂で固めて船体を作り、船舶用塗料で塗装した。手こぎ用にオールも作製。旋盤を使って加工し、固定する金具部分は溶接で仕上げた。製作の過程では、船体の曲げ加工や樹脂の塗布で隙間ができるなどの課題に直面。試行錯誤を重ねて完成させた。
川で実運転をする一週間ほど前に、市営プールで試験運転を行った。その際、船体の下部から水が浸入するトラブルが発生。この問題を受け、塗料を3度重ね塗りし、再度運航に臨んだ。
進水場所は鵜住居水門付近。初めにオールを使った手こぎで船を出した。想定通りに船が進むと、生徒らは「おー、やったー」と歓声を上げた。さらにボート用のエンジンを取り付けた運航も確認。交代で2人ずつ乗り込み、安定性や耐久性に好感触を得た。
この取り組みで生徒たちは、模型作りに3次元(3D)CADを使い、ボートやオールで使うパーツの寸法を測ったり、切り抜く作業でも校内にある機械を活用。船体とオールの製作を担当する班に分かれ、進ちょくを確認しながら作業を進め、計画性とチームワークの重要性を学んだ。試験運転での問題点を本番前に修正できたことも成長につながった。
リーダーの栗澤大翔さんは「実習の経験を生かしたものづくりができた。苦労もあったが、みんなで意見を出し合い、改善した結果。みんなが楽しそうに乗っていたのがうれしい」と胸を張った。地元の空気圧機器メーカーに就職が決まっていて、「技能職として力を発揮したい。仕事以外でも地域を盛り上げられたら」と未来を思い描いていた。
活動を見守り、指導や助言をしてきた同科の似内拓也教諭(34)は「樹脂の固まりのでこぼこをなくすため、ひたすら削ったり、細かい作業、根気のいる作業が多かったが、粘り強く取り組んでいた。船体の表面の滑らかさ、船の浮いたバランスも良かった」と肩の力を抜いた。最後まで楽しそうな姿が印象的な7人に目を向け、「職場で粘り強く頑張ってほしい」と願った。
今回、浮かぶ船の製作には成功したが、7人はさらなる改良の余地があると感じている。年内に科内の成果発表会があり、1、2年生に活動を紹介。「ハンドルなど船内の改装をしてほしい」などと希望を伝え、次年度以降、引き継ぎたいと名乗り出る後輩の出現を待つ。