単身世帯、増加の一途 高齢者訪問、担い手負担増
国立社会保障・人口問題研究所が今年11月に公表した「日本の世帯数の将来推計」によると、全国的に単身世帯の増加傾向が続くと予測されている。神奈川県内では2020年に全体の39・2%だった単身世帯の割合が、50年には45・6%まで増えるとされ、地域社会への影響も懸念される。
同研究所の推計によると、全国の全世帯数に対して単身世帯数の割合は20年の38・0%から、第2次ベビーブーム世代がすべて75歳以上の後期高齢者になる50年には20年比で6・3ポイント増の44・3%となる。
このまま単身世帯の増加が進めば、医療や介護体制への影響や、地域コミュニティの希薄化、生活困窮者の増加、孤独死の増加などがさらに深刻化することが懸念される。さらに、消費活動の縮小による税収減など、自治体運営や地域経済への影響も懸念される。
こうしたなか地域の自治体では、高齢者の単身世帯を対象とした見守りや相談事業の強化に取り組んでいるが、戸別訪問に人手を割く余裕がない状態も課題のひとつとなっている。
綾瀬市では
たとえば綾瀬市では、75歳以上の単身世帯を対象に毎年、専門員による個別訪問を行なっている。訪問は市内に4カ所ある地域包括支援センターに委託していて、受託事業者の職員が「認知症地域支援推進員」として、日常業務と並行しながら訪問を担っている。
同市上土棚南の地域包括支援センター泉正園に勤務する介護福祉士の山崎三枝子さんは、介護業界19年目のベテランで、推進委員5年目の今年度は、1人で年間945人(世帯)を受け持つ。
2020年の開始当初の受け持ちは710人だったが、この4年間で3割以上増え、「これからまだまだ増えると思う」という。訪問は日常業務をこなしながら1人で行っているため、「1年で全て回るのは現実的に難しい。1日70件の目標を立てて訪問していても多くて60件がやっと」とこぼす。
23年度は888人分のリストをもとに686件に足を運び、今年度は4月から11月までに392件を訪問した。訪問の際は、「玄関先など、目に見える範囲の室内とご本人の様子から、異常がないかを見極めている」。
防犯意識の高まりからか、「インターホンを押しても応答がないケースが増えた」という。そうした場合でも連絡先と名前を書いたチラシを入れて帰ると後日、本人から連絡があり、相談や支援、介護に繋がるケースもあるという。
綾瀬市ではほかにも、民生委員・児童委員による65歳以上の単身世帯訪問も実施。毎年5月と12月に116人(定数128)の民生委員・児童委員が集中訪問しているが、訪問先の世帯主よりも、訪問する側の方が年長者であることも少なくない。人手不足も慢性化しているという。
同市の関係者は、「高齢者の単身世帯は今後も増え続け、戸別訪問や見守りなどの支援がさらに必要となるが、現状の行政ではそこに人員を割けるだけの余裕がない。いずれも想定される状況なので、行政のあり方にも影響を与えるのではないか」としている。
少子高齢化や高齢者の単身世帯の増加は、今後ますます加速するとみられる。こうしたなか、従来の自治体サービスにも変容が求められそうだ。