Yahoo! JAPAN

希望が通らなかった就学相談。納得いかず教育委員会と面談へ。4年生の今思うこと【読者体験談】

LITALICO発達ナビ

希望が通らなかった就学相談。納得いかず教育委員会と面談へ。4年生の今思うこと【読者体験談】

監修:井上雅彦

鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー

希望が通らなかった就学の判定。結果に納得できなかったわが家は……

2歳の時、中度知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム)と診断を受けた息子がいます。現在10歳です。

小学校入学前の息子は、ひらがなの読み書きができず、数字も3まで数えることが難しい状態でした。一方興味があるものにはとことんのめりこむタイプで、鉄棒と跳躍器具ばかりの毎日。興味がかなり限定されていました。
学校見学をし、夫とも相談した結果、息子には特別支援学校が合っていると希望を出したのですが、結果は知的障害特別支援学級判定でした。納得がいかなかった私は、教育委員会との話し合いに臨みました。そんなわが家の就学の時の体験談をご紹介します。

学校見学へ。授業が難しいと感じた特別支援学級、息子が笑顔で通うイメージが浮かんだ特別支援学校

年長の1学期、まず地域の特別支援学級を見学しました。あくまで私の印象ですが、その時のクラスはどちらかというと息子のような特別支援学級か特別支援学校か迷っている人が選択する場所というよりは、『通常学級だと少し心配だから特別支援学級を選ぼうかという人が対象』なのかなと思うほど、授業が難しそうだったのです。また、その時の1年生が偶然にも幼い時から知っているお子さんばかり。みんな昔とは比べようもないほど言葉が増え、成長していました。今から7か月後、息子はこの教室でみんなと同じように授業を受けられるのだろうか……と考えると、どうしてもその教室にいる姿を想像できなかったのです。授業だけでなく、交流級の様子も見学しましたが、こちらも息子が参加するのは難しそうだと感じました。

それに対して特別支援学校を見学した時は、すぐ息子が笑顔で教室に居られる姿を想像できました。息子は3歳から卒園まで児童発達支援に通っていたのですが、『いつもの児童発達支援の対象年齢が上がった場所』という印象だったのです。ここなら息子も嫌がらずに通える!と思い、わが家は特別支援学校を希望することにしました。

ですがなんと結果は特別支援学級の判定だったのです。「どうして⁉」ととてもショックを受けました。

判定は変わる?教育委員会の方との面談へ

結果に納得がいかなかった私は教育委員会へ行き指導主事の方とお話をしました。しかし、「就学支援委員会が決めたことはどうにもなりません」というお返事でした。それでも何とかなりませんか?と相談したところ「判定をされた教育委員会の方と面談をセッティングします」と提案され、後日面談をすることになりました。

※編集部注:基本的には就学先は市町村教育委員会が、本人・保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人・保護者の意見を最大限尊重し決定しています。

私は、(教育委員会の方と話すことで、もしかすると判定が変わるかもしれない)と希望を持って面談に行きました。ただ実際は私を安心させるための面談だったと思います。

「(特別支援学級に通うことで)お母さんが不安に思っていることはどんなことですか?」という質問があり、不安なことをいくつか話しました。ひらがなが読めない、書けない、数を数えられない、興味があることが限定されている、興味がないことはやる気がないし、集中力も続かないなど……。あとは、言葉も2語文3語文程度しか話せないことも言いました。

教育委員会の方は一つひとつの質問にきちんと答えてくれました。その後で「息子さんは教科書で勉強することは難しいと思います。でもこういうのもあるんですよ」とひらがなや数字が書いてある絵本を見せてくれました。文字より絵が多い特別支援学校向けの教科書があり、それを使うことができるということも教えてくれました。そして、「特別支援学級のほうが息子さんの成長に繋がるからこそこの判定だと思います。安心して地域の学校(特別支援学級)に通わせて下さい」と目を見てまっすぐ言われたのです。

しっかり話を聞いてくれ、具体的な対応方法を聞けた私は(ここまで言われたのなら通わせるしかないのかもしれない。もし通えなくなったら転校も視野にいれてで特別支援学級に通わせてみようかな)と前向きな気持ちになれました。
そして、息子は知的障害特別支援学級へ入級することになりました。

知的障害特別支援学級に通って4年。良かった面と気になる面、そしてまだ尽きぬ悩み

息子は、4年生になった現在も知的障害特別支援学級に通っています。

この4年で息子には大きな変化がありました。なんといっても、入学前と比べて言葉がかなり増えました。学校で学んだことはもちろんですが、おしゃべりが上手なクラスのお友だちの影響が大きいと思います。先生が言っても言うことを聞かないのに、お友だちから言われると素直に聞けることがあるようです。入学前はほぼ大人とのやりとりで、大人が介入しないと子ども同士でやりとりはできなかったので、同じ年齢のお友だちと接することができるようになったというのも成長したなと思います。

入学前は、(こんなに幼いと、クラスメイトから相手にされないんだろうな)と悪い方向に考えていたので、優しく接してくれるクラスのお友だちに感謝しています。息子もクラスのお友だちが大好きです。

ただ、当初から懸念していた通り、学習面では特別支援学級のクラスのお友だちとはレベルが違います。学年が上がるにつれて、差はますます広がるばかりです。勉強だけでなく体育も個別授業になっているため、もしかしたら小学校在籍中に特別支援学校の判定が出るかもしれません。わが家は地域の中学校の特別支援学級、特別支援学校の中学校両方見学済みで、中学校では特別支援学校を考えているのですが、場合によっては中学生になる前に転校したほうが良いのかもしれないとも思っています。

一方で、今の特別支援学級のお友だちはみんな息子によくしてくれ本人は喜んで通っているため、できれば小学校は今のクラスで卒業させたいとも思うのです。どちらが息子にとっていいのか、答えがでません。

特別支援学級ではハードルが高く、希望していた特別支援学校では一日の勉強時間が30分と聞きました。特別支援学級よりはゆったりとしたペースで、特別支援学校よりはもう少し勉強時間が多い、着替えや排泄が自立していて言葉でコミュニケーションのとれる息子のような中度知的障害の子ども向けの教室(学校)があればいいなと、強く望んでいます。

幸いなことに今は「楽しい」と言って学校に通ってくれている息子。これからも同じ気持ちで通ってもらいたい、そのためにどうすればいいのか考える日々です。

イラスト/よしだ
エピソード提供/ゆきこ

(監修:井上先生より)
投稿者さんのお子さんのように知的障害が中程度の場合、知的障害特別支援学級か、特別支援学校か迷われている方は多いと思います。特別支援学校は複数担任制ですので、その面で安定感はあると思いますが、特別支援学級の場合は担任の先生の専門性や力量、クラスメイトの障害特性や相性、人数といった入級前には予測できない不確定要因もあるかもしれません。特別支援学級の場合、地域や学校による違いが大きいので、実際の授業を見たり、どの程度本人に合わせたカリキュラムを作ってもらえるかを事前に中学校と相談していくことが大切だと思います。一方、特別支援学校の場合は、中・軽度の知的障害のある生徒のためのクラスを作っている学校もありますので、こちらも実際に見学に行かれるといいと思います。ベストな選択を考えると悩ましいところですが、いずれの選択肢も合わなければ途中の進路変更も可能です。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

【関連記事】

おすすめの記事