「渓流釣りはややこしい?」4つの流域ごとの釣り方の違いを解説【源流・渓流・清流/里川・本流】
気温の上昇と共に、冬の間に積もった雪は山間を流れる穏やかな流れへと姿を変え、渓流釣りはいよいよ本格的なシーズンインを迎える。一口に「渓流釣り」といっても、その様相は訪れる場所によって大きく変わり、当然それに合わせた釣り方が必要だ。今回は、渓流釣りにおける「4つの流域ごとの違い」を見ていこう。
源流
源流とは「河川の最初の一滴」に近い、人の手が全く入っていないような場所の事を指す。いわば秘境だ。まずはその特徴と釣り方をみていこう。
源流の環境
源流部は河川の始まりにほど近い場所という事もあり、多くの河川が合流し一つの流れを作り上げるような中流域とは、似ても似つかないレベルの川幅だ。
場所によっては水が地面から滲み出してくるだけのような所もあり、「これが本当に川になるのか?」といった様相だが、そこから数百mずれると川になっているから不思議だ。
とはいっても、この時点での川幅は数m程度と非常に狭い。そして大小さまざまな岩がゴロゴロと転がっていたり、ゴルジュ帯を形成していたり、うっそうとした山中の地面をただ流れているだけだったりと、環境は場所によって大きく違う。
多くの場合、このような源流部に到達するまでかなりの時間を要するので、安全対策は万全に行いたい。
源流の対象魚
源流部は山奥にある関係上、水温が低い上に水量も安定せず、非常に過酷な環境だ。こういった場所には、生命力が強く低水温にも強いイワナの仲間が多く棲息している。そこから少し下流に降るとヤマメ・アマゴが混ざりだす。
源流で狙いたいポイント
水が滲み出し始めるような「始まりの場所」は魚が棲めない。大抵は、流れが纏まるような場所に滝壺や落ち込みが出来始め、魚たちはそういった場所にピンポイントで留まっている。
ちなみに、「始まりの場所」に最も近い滝壺は、これ以上魚が遡上できないという意味で「魚止めの滝」と呼ばれている。
源流での釣り方
餌釣りの場合は、長くて硬い竿+極端に短い仕掛けという組み合わせの「チョウチン釣り」で木々の間を縫って釣るのが一般的だ。
例えば、5mの超硬調竿+1mの仕掛け等が該当する。ヒットしたら竿を縮めてやや強引に取り込むことになるので、ラインは太めの0.6号~1.5号程度が好まれる。エサは現地採集の川虫・ミミズ・昆虫類など、ポイントに合わせたものなら何でもいい。
ルアーの場合は「アクションするスペース」が非常に小さくて狭いため、着水後反射的に食わせられるようなフラッシング強めのルアーや、ワンアクションでバイトに結びつくようなルアーが好まれる。
渓流
ここでいう渓流とは、「山中を流れていながら源流よりも少し下流側」に該当し、護岸化されていない自然状態の川を指す。特徴や釣り方をみていこう。
渓流の環境
源流部とは違い、幾つかの源流の流れや地中から滲み出してきた水が合流して一つの流れを形成するため、川幅は多少広くなる。大小さまざまな岩がゴロゴロ転がっている場所が殆どで、まさに「大自然の中を流れる美しい川」といった様相だ。
とはいえ、「渓流釣りポイント」としてマップ等で紹介されている場所は、川の傍まで車で近づける場所も多い。だが、道幅が狭いことが多いので要注意だ。
渓流の対象魚
河川によってはイワナが混じるところもあるが、一番の対象魚はヤマメ・アマゴだ。どちらがメインで釣れるかは各漁協のHPや、遊漁券を購入した際に貰える「放流実績」等の用紙を確認すると良い。
稀に淀みやヨレでゲストのハヤが食ってきたりもするので注意しよう。
渓流で狙いたいポイント
こちらは著者のメインフィールドという事もあり、こちらの記事で詳しく紹介している。
淵や瀞(トロ)と呼ばれる穏やかな深場、流れ込みに出来たエグレ、落ち込み、瀬やヒラキなど、ポイントは無数にある。時期によって魚が定位する場所が変化するため、狙う場所を変える必要があるのも面白いところだ。
渓流での釣り方
餌釣りの場合、基本は5~6m程度の延べ竿を川幅によって使い分ける。
その竿に合わせた仕掛け(竿の全長+-20cm程度)を用い、非常に細いライン(0.1号~0.6号程度)を使用する。エサは時期によって、イクラ(解禁直後)、川虫(オールシーズン)、ミミズ・ブドウムシ(梅雨以降~夏場)等を使い分けるのが一般的だ。
ルアーはキャスト後にアクションするスペースが比較的広く取れる為、よく泳ぐミノーや川虫の羽化時を模したとされるスピナー等、好みの物をチョイスすると良い。
清流/里川
清流/里川は、渓流部よりやや下流部の事を指す事が多く、場所によってはある程度人の手も入っている。特徴や釣り方をみていこう。
清流/里川の環境
周囲に集落や畑がある等、我々ヒトと川の関わりを密接に感じられるような場所も多い。一部護岸化された場所があったり、頻繁に橋がかかっていたりと、比較的釣りを行いやすいのも特徴の一つだ。
その分釣り荒れが速い可能性もある事を考慮しておきたい。とはいえ、川の中はまだ自然環境のままという場所も多く、渓流とあまり変わらないといっていいだろう。
清流/里川の対象魚
この辺りになると低水温や天然状態の岩場を好むイワナはほぼ姿を消し、大半がヤマメ・アマゴとなる。また、水温が高めの場所・流れが緩い場所も増えるので、ゲストのカワムツやハヤ、ウグイの数も一気にますので対策が必要だ。
清流/里川で狙いたいポイント
人里近くであっても、狙う場所は渓流部とほぼ同じ。それに加えて、堰堤等の人工物の下に大きなプール状の場所が登場したりするので、こういった所は積極的に狙ってみたい。
また、清流/里川は漁協が放流を行っている場所が多い為、こういった所をピンポイントで狙うと初心者でも釣果を得やすいのでオススメだ。
清流/里川での釣り方
こちらも渓流と同じような釣り方が基本となるが、里川の場合は川幅が狭い場合もあるので、餌釣りの場合は4mクラスのズーム竿を所持していると小回りが利いて釣りやすい。
逆に清流部は川幅が広い場所も多く存在するので、7mクラスの竿が役に立つシーンも出てくる。解禁後はスレるのが早いので、0.1号~0.3号程度の細糸を積極的に使用したい。ルアーの場合は、渓流とほぼ同じと考えていいだろう。
本流
本流は、いくつもの支流が合流し、最終的に海へと至る。多くがその川の「本体の名前」が付いていることが多い。
著者が住む兵庫県であれば、揖保川や千種川、加古川、円山川等が該当する。これまでの場所とは大きく様変わりする本流の特徴・釣り方をみていこう。
本流の環境
多くの支流が合流することもあり、川幅は一気に広くなる。幅10mクラスの流れがいくつも枝分かれして流れるような大河川も多い。水深も深く、安易に立ち込むと大変危険なため、安全に釣りが出来る場所を慎重に見極めてほしい。
本流の対象魚
「本流ヤマメ」や「本流アマゴ」といった、「本流」という名を冠した大型の渓魚の他、「戻り」と呼ばれるサクラマス(降海型ヤマメ)やサツキマス(降海型アマゴ)も春頃に狙える。
その他、場所によっては巨大なニジマス(レインボートラウト)やブラウントラウトが釣れる河川も存在するが、ゲストとしてコイやニゴイ等が掛かる事もあるので注意が必要だ。
本流で狙いたいポイント
漁協のHPに掲載される情報を参考に、入渓場所を決めるのが一般的。入渓後は、他と比べて流れに変化がある場所の底付近をじっくり攻めていく事となる。
また、流れが合流している場所や分岐している場所、大岩周辺、堰堤周辺も狙い目となる。
本流での釣り方
本流は川幅が極端に広くなるため、餌釣りの場合は自身の体力に合わせた長めの竿を使用する。幅が狭い場所でも6~7mで、通常は8~9mクラスが一般的。10mクラスを自在に操ることが出来れば猛者の仲間入りだ。
ラインも対象となる魚に合わせて太くなり、1号~3号程度を使用するケースが多い。必然的に針のサイズも大きくなるので、それに合わせた大きめのエサを使用する。
大きめのクロカワムシやオニチョロ、ミミズ房掛けなどがよく用いられるが、レインボーやブラウンを狙う場合は筋子やマグロの切り身も人気のエサだ。
ルアーの場合はその遠投力・遊泳力を生かし、ある程度ウェイトのあるミノーで流れを攻略していくこととなる。
フィールドに合わせた釣り方と工夫を
こうして見てみると、一口に「渓流」といっても実に様々なエリアが存在し、その釣り方の多様性に驚かされるばかりだ。
大切なのは、自身が「どんな場所で」「どのような釣り方で」「何の魚を釣りたいか」だと著者は考える。
「とりあえず安全に渓流魚を釣ってみたい」なら放流のある里川や清流(支流)になるし、「雰囲気や魚との駆け引きを楽しみつつ冒険心を満たしたい」なら源流や渓流だろう。「大物のパワフルな引きを楽しみたい」なら本流一択だ。
行く場所をある程度定めてからタックルを整え、安全も確保したらならば、是非一度「渓流釣り」にチャレンジしてみてほしい。その時にはきっと「ややこしい」といった感情は消え失せ、代わりに感動が押し寄せてくるはずだ。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>