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パパ小児科医・ゆび先生 8児を育てて気づいた「ほしい物は与える」「𠮟らない子育てはしない」理由とは?

コクリコ

0~16歳まで4男4女8児のパパで小児科医の「ゆび先生」インタビュー第3回。ゆび先生の「子どものほしいものは自由に与える」「怒ったら親は我慢しない」の教育方針にある思いとは。全4回。

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8児のパパで小児科医、YouTubeなどSNSでマルチに活躍する「ゆび先生」こと田本直弘さん(43/鳥取県米子市在住)。看護師で相棒の「ひかちゃん」と共に配信するYouTubeとTikTok「ゆび先生&ひかちゃんねる」は大人気で、のびのび育つゆび家の子どもたちもたびたび登場します。

0歳から16歳まで8児の豊富な子育て経験を通じて、ゆび先生はどんな気づきがあったのか。ゆび家の究極の子育てスタイルについて伺いました。

ゆび先生PROFILE
小児科専門医・YouTuber・TickToker 田本 直弘(たもと・なおひろ)。米子市生まれ。2012年「医療法人田本会 米子こどもクリニック」開院。4男4女8児のパパ。

お話を聞いたゆび先生こと田本直弘さん。 オンライン取材にて。

「ほしい物はいつでも買って与える」そのワケは?

──前々回(#1)のインタビューで、4人目が生まれてから子どもたちの自主性を尊重する大らかな子育てに舵をきったとうかがいました。大家族になってからゆび家にはどんな変化がありましたか。

ゆび先生:4人目が生まれてから、お盆や正月、誕生日への考え方も変わりました。「○○の日はこうするべき」という考えをやめたんです。

例えば子どもの誕生日といえばプレゼントだったのですが、「誕生日だからプレゼントを買ってお祝いしてあげるべき」と決めてしまうと、ほかの日が輝かなくなってしまう。毎日が誕生日のような特別な日だと思って暮らすほうが楽しいなって思うんです。だからほしい物はいつでも買ってあげるようにしています。

──「いつでも買ってあげる」という子育て方針には、どんな意図があるのですか。

ゆび先生:実はいろいろな意図があります。まず「誕生日だからプレゼントを買ってあげる」というルールにすると、誕生日だけ特別で、ほかの日は“がまんの日”になってしまいます。ほかにも「勉強をがんばったら買ってあげる」とご褒美にするのも、“ほしい物のために勉強する”となるので、勉強が嫌なものになってしまうんです。

それだったら、何かを買ってあげることと、何かをがんばることは別にして考えたほうがいい。だから僕は、子どもが何かほしいと言ったらさっさと買ってあげます。ずっと「ほしい」と思っている時間は無駄だと思っているので。

──子どもの要求にその都度応えていると、家じゅうが物であふれてしまいませんか。

ゆび先生:それがおもしろいもので、ほしい物をぱっぱと買ってあげると、子どもって次から次へと「ほしい」って言わなくなるんです。これ、めちゃくちゃコスパがいいですよ(笑)。

あれもほしい、これもほしいにはならないです。例えば子どもがあるゲームソフトをほしいと言ったら、子どもと一緒に買いに行って、「流行っているゲーム、これも、あれも、これも買ってあげるわ」って3~4つまとめて買うんです。

でもいっぺんにゲームはできません。結局、全部中途半端になってしまって、次に「ゲームいるか?」と聞くと「俺、もういいわ」と言うんです。ラーメンが好きな子に毎日3食ラーメンを与え続けていたら、いらなくなりますよね。それに近いと思います。

──たくさん買い与えるとワガママになってしまうのでは、と親は心配してしまいますが、そうでもないのでしょうか。

ゆび先生:逆だと思いますね。「まだ開けてないのがあるしな」「まだ遊び終わってないしな」と自分で考えて、「もういらない」って自分から言います。

そうすると物に対する執着がなくなってくるので、お金で買えないモノに対して一生懸命になるようになるんです。うちの子たちはスイミングをやっていますが、速く泳ぐ能力はどれだけお金を積んでも絶対に買うことはできません。練習するしかない。

そうすると、物より練習のほうが大事になってきます。そうやって達成して自分でゲットできたものに価値を置くようになるんです。

勉強もそうです。何か買ってもらうために勉強するなんてことは、うちでは全くありません。物でないところに目標を持つと、勝手に勉強するようになるんです。

例えば「お医者さんになりたい」と思えば、勉強が“やりたいこと”になるんです。長女(16)の高校受験がありましたが、数学だけ塾へ行って、あとは独学で勉強していました。

長女同様に医師を目指している長男(13)や次女(11)も、テレビがついているにぎやかなリビングでいつも勉強をしています。周りで誰が騒いでいても、自分の勉強に集中することが癖になっているんです。

医師を目指す夢も僕が強く言ったわけではなく、子どもたちが考えて決めたこと。本人のやる気が大切だと思っています。

親のイライラはガマンはしない

──8人を育てるうえで、𠮟り方など気をつけていることがあれば教えてください。

ゆび先生:𠮟るうえでルールはありませんが、頭ごなしに𠮟るのではなくて、僕がいやだと思うことはその場で僕の気持ちを伝えるようにしています。例えば5歳児が下のきょうだいに意地悪したとき、「それ、パパはすごく嫌だからやめて。パパはそういう意地悪は好きじゃないな」と言います。

イライラしたときも、僕が今イライラしているんだということを伝えます。子どもって、やたら甲高い声でキャーキャー大騒ぎするときってあるじゃないですか。耐えがたいときは、「その“キャー”は、パパ超嫌いだからやめてね」と言いますね。一般論で伝えるのではなくて、僕がどう思っているかを、わかりやすくストレートに伝えます。

わが家では親がイラついたり怒ったりしたときに、ガマンは絶対にしないです。心で思っていることと言っていることが一致していないと、気持ち悪いですから。心と表情を一致させることで、「顔がニコニコしている=心もニコニコしている」って子どもは受け取ってくれます。このほうが超わかりやすいですよね。

僕がすごく怒ったあと、気持ちを切り替えてニコニコしていたら「パパはもう怒ってない」「引きずってないんだな」と理解してくれます。

嫌われたくなくて甘いパパだった時期も

──新米パパのころからこういう教育方針だったのでしょうか。

ゆび先生:今でこそこんな教育方針ですが、子どもがまだ3人くらいのころは、今よりずっと甘かったですね(笑)。自分が子どもに嫌われたくなかったですから。いい格好しちゃっていました。特に小児科なのでいろんな文献を読んでいて、「𠮟らない教育がいい」という考え方もよく理解していましたし、それを実践しようとしていた時期もありました。

でも実際に何人も子育てしていていると、イライラして心では怒っているのに、顔だけニコニコするほうが子どもにはよくないと考えるようになりました。実際にそういう論文も出ています。

子どものためになることは、その場で𠮟ったり修正したりしてあげたほうがいい。もし心と表情が一致しない子育てをしていたら、「顔はニコニコしているけど、本当は心で怒ってるんでしょ」「本当はどう思っているの?」と大人の顔色をうかがう子になってしまうと思うんです。

子どもが増えていくにつれて、自分をさらけ出して、飾らない、噓も言わない、思ったこともそのまま言うパパになりました。だから子どもたちも素直に感情を出してくれますね。

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8人の子育てでたどり着いたゆび先生の子育ては、独自のスタイルに昇華し、子どもたちとの絆を育んできました。
次回は小児科医のゆび先生率いる大家族の感染予防策などについて伺います。

取材・文/大楽眞衣子
※記事内の年齢は2024年11月21日時点のものです

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