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【梨騒動2024】鳥取に現れた “梨界の大谷翔平” が二十世紀梨を潰しにかかっている件を当の鳥取県民が危惧していないことが問題

ロケットニュース24

今年も鳥取の実家から二十世紀梨が届いた。元々二十世紀梨が発見されたのは千葉県の松戸で、それが巡り巡って鳥取の名物になった……という経緯については以前の記事でお伝えしたとおりだ。ちなみに今年で鳥取導入120周年らしい。お母さま、今年もありがとうね!

ところが……! そんな永遠に続くと思われた鳥取・秋の梨送り行事にここ数年、とんでもない異変が起きている。なんと他県に住む息子や娘に “二十世紀じゃない梨” を送る家庭が急増しているというのだ。そのような暴挙、たとえ神が許しても私は許さない!!!!!!

・梨界の大谷翔平

9月某日。都内に住む鳥取出身の友人より「実家から梨が来たで」という知らせが入ったので、イソイソと友人宅へ向かう私。二十世紀梨のシーズンは短い。「食えるうちに食えるだけ食う」が鳥取県民の本能なのである。

と、思ったら……

ちょ、おま、これ……

茶梨やないかい!!!!!

梨に詳しくない方のためにご説明しておくと、梨界には「茶梨」と「青梨」がある。日本に流通する梨の大部分が茶梨であることは認めざるをえないところだが、鳥取の心こと二十世紀は青梨だ。鳥取県民の家に茶梨があっていいハズはないのだが……?

友人にワケを尋ねると「去年くらいからオカンが二十世紀ではなく『新甘泉』を送ってくるようになった」とのこと。オカンこの野郎! なお新甘泉とは約15年前に鳥取で開発された梨で、二十世紀と『筑水』(茶梨)を掛け合わせて作られた品種である。

実は認めたくないが、最近、都内のスーパーで売られる鳥取産の梨は二十世紀より新甘泉が多い傾向にある。二十世紀の血が入っているとはいえ、新甘泉の見た目は完全に茶梨だ。母乳代わりに二十世紀の汁を吸って育った(※ 嘘です)生粋の鳥取県民として、これは由々しすぎる事態……!

なお友人は「二十世紀より新甘泉のほうがウマい」と断言しており、鳥取県民の風上にも置けないのであった。慌てて鳥取出身の他県在住民数名に聞き取りを行ったところ、約半数が「ここ数年で実家から二十世紀ではなく新甘泉が届くようになった。新甘泉のほうがウマい」と証言。お前らこの野郎……!

・梨騒動2024

忘れている読者がほとんどだと思うが、実は当編集部内では秋が近づくたび、茶梨好きのサンジュン記者と青梨好きの私との対立構造に端を発する梨騒動が巻き起こっている。

ちなみに茶梨(幸水)を食べた時の私の心の表情はこんな感じ。茶梨の特徴は主に「柔らかさ・甘み・水分豊富」なのだが、青梨派の私にとっては、なんというか、あえて言葉を選ばずに言うとすれば ”腐りかけ” みたく感じられる。

ついでに青梨(二十世紀)を食べた時のサンジュン記者の心の表情はこんな感じ。青梨は主に「酸味・甘すぎない甘さ・歯ごたえ」が特徴だが、彼に言わせるとスッパくてジューシーさに欠けるらしい。うるせー黙れ!

そんな茶梨と青梨の直接対決を編集部内で行ったところ、我が青梨が大勝利をおさめた……という件については2年前の記事をご確認いただくとして、今回は茶梨・青梨に加え、茶梨と青梨の合いの子である新甘泉の3つを食べ比べてみたいと思う。

先にお伝えしたとおり、正確には新甘泉は二十世紀と『筑水』を掛け合わせた品種。しかし筑水のシーズンはもう終わっているため、今回は似た品種の幸水を代役とさせていただきます。あしからず。

・梨ゆかりの者たち

見るからにザラザラとした断面の二十世紀(A)に対し、リンゴみたいになめらかな幸水(C)。新甘泉(B)はちょうどその中間くらいである。

これらの正体を伏せたうえで、梨とゆかりのある当編集部メンバーに「どれが一番好きか」を答えてもらう。

まず鳥取県のお隣・島根県出身の佐藤記者。特に梨好きではないそうだが、青梨文化圏で育ったからには確実に二十世紀を当ててほしいところ。

佐藤「ウマさはA(幸水)とB(新甘泉)が僅差だな。Aは一番水分が多い、Bは一番甘い。でも……昔から食べ慣れてるのはC(二十世紀)だと思う。どうせコレが二十世紀だろ?」

ランクづけには納得いかないものの、舌の確かさを見せつけてみせた佐藤記者。まぁ島根の人はそこまで二十世紀に愛着がないハズなので、結果は大目に見てあげよう。

編集部内で私と並ぶ梨好きのサンジュン記者。梨生産量日本一を誇る千葉県(市川)出身の彼は幼少期から数々の品種を食べてきたうえでの茶梨推しであるため、発言の説得力が異様に高い。そんなサンジュン記者の評価は果たして……

サンジュン「A(幸水)は幸水か豊水。C(二十世紀)はシンプルにおいしくない。市川で出されたらカブトムシしか食わないだろうね。これは別に二十世紀を酷評してるワケじゃなく、個体差の問題が大きいと思う。去年の二十世紀はウマかったって、お母さんに伝えといてよ。

B(新甘泉)は……何だろ、豊水系? あ、二十世紀と茶梨のミックスなの? 言われてみれば確かに肉質に二十世紀の遺伝を感じなくはない。けど、茶梨への憧れが完全に出ちゃってるよね。その点は、鳥取県民としてどうなんだい?」

・そのとおりである

そう……ここまで言っといてナンだが、新甘泉はウマい。悔しいけれど、ウマいのである。

サンジュン記者の言うとおり、茶梨嫌いの私が「ウマい」と感じるほどなので、新甘泉には間違いなく青梨の遺伝子が含まれている。青梨派も茶梨派も虜にする二刀流のハイブリッド梨。お前は大谷翔平なのか? 

ただし、その割合は “青梨3:茶梨7” といった感じであって、「青梨か茶梨か」と言われると、これはもう完全に茶梨なのだった。

鳥取県民としての意地みたいなものを捨てて白状すると、全国的に見て青梨より茶梨のほうが圧倒的に人気であることは、そんなもん、ずっと前から解っている。しかしながら鳥取は120年も前から青梨を名産としてきたワケで、人気があるとかないとか、そんなのは何の関係もないじゃない? 鳥取県民が青梨を推さなくて誰が推すの? ……と、個人的には強く思う次第なのだ。

「鳥取で二十世紀を超える人気のある品種がほぼ茶梨」……これをどう感じるかは県民個人の主観による。ただ母乳代わりに二十世紀の汁を吸って育った(※ 嘘です)生粋の鳥取県民の1人としては、やや寂しさを感じる2024年の初秋なのだった。

とはいえ新甘泉がガチでウマいことは間違いないので、どなたも一度は食べてみてほしい(東京ではオオゼキとかに売ってます)。梨を愛する鳥取県民として、二十世紀と新甘泉が共存できる平和な鳥取の未来を願ってやまない。

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

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