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深川麻衣『ぶぶ漬けどうどす』インタビュー。“ヨソさん”でもリスペクトがあれば京都に飛び込める!?

さんたつ

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現在放送中のドラマ『特捜9 final season』をはじめ、映画や舞台と活躍の幅を広げる俳優・深川麻衣さん。最新主演映画のタイトルは、京都の都市伝説のように囁ささやかれるあの言葉……。奇想天外な物語の先に見えた古都の魅力とは?

深川麻衣

1991年、静岡県生まれ。初主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018)では、第10回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。近年の出演作に映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(2023)、『嗤う蟲』(2025)、ドラマ『特捜9 final season』(現在放送中)などがある。
Instagram:@fukagawamai.official
オフィシャルサイト:https://fukagawamai.com

本音と建前を使い分けるといわれる京都人の本質に迫る映画『ぶぶ漬けどうどす』で、主人公のフリーライター・まどかを演じる深川さん。京都の老舗の暮らしぶりをコミックエッセイにしようと、まどかが夫の実家である老舗扇子(せんす)店の取材を始めるところから話が始まります。

京都の表と裏に翻弄される!? チャレンジングな作品

——映画の話を聞いた時の気持ちは?

深川 企画書を見て、着眼点が斬新でチャレンジングな作品だと感じました。京都を舞台にした作品はたくさんありますが、主人公が京都の表と裏に翻弄(ほんろう)される展開が新鮮で。台本を読んでも、どんな映像になるんだろう?と想像がつかない(笑)。それもおもしろかったです。

——まどかという役柄はいかがでしたか? 深川さんと似ているところも?

深川 まどかは本当に純粋で、人に言われた言葉を100%信じる、そして強さもある女性です。まどかとの共通点はあまりないのですが、自分がやりたいと決めたことに突っ走るところは、似ているかもしれません(笑)。

いつも台本をいただくと、読みながら自分が演じる役がどんな人物なのか想像を膨らませていくのですが、まどかってコロコロ変わっていくので、いままでで一番難解でした!

彼女の京都に対する愛やエネルギーはどこからくるんだろうと、一つ一つの意味や動機の理由を考えていたんですけど、でもこの作品に関しては100%わかろうとしなくていいのかも?と。流されてみようと思うようになりました。

というのも、冨永昌敬(まさのり)監督の演出がとにかくおもしろくて、毎シーン何が飛び出すかわからないんです。台本から変わった部分も多く、リアルタイムで作品をつくっていく感覚がありました。

一つずつ、意味を考えながらつくることも大切ですが、堅くなりすぎず、演出にのっかってまどか像がつくれたら…という思いでした。

——まどかもパワフルですが、共演のみなさんもなかなかのクセ者で……。

深川 はい(笑)。大学教授を演じる若葉竜也さんは話し方が独特で、かなりのインパクトがありますし、室井滋(しげる)さん演じる義理のお母さんも、やさしくてはんなりとしているけれど、実は……というところがおもしろい。

普段の室井さんもとっても素敵で、よくご飯に連れて行ってくださったのですが、声優や執筆などいろいろな表現をされているのでお話が楽しいんです。

豊原功補(こうすけ)さんも、最初は話しかけていいのかな?と緊張しましたが、気さくに接してくださいました。

豊原さん演じる上田社長は、あることでまどかにコテンパンにやられちゃうんですけど、演じる人によってはかわいそうに見える可能性がある。そこを絶妙なバランスの憎らしさとチャーミングさで演じていらっしゃるのが、さすがだと思いました。

——ロケ地も素敵でしたね。

深川 そうなんです。まどかの義理の実家の扇子店は『大西常商店』、ほかにも『たん熊北店 本店』や銭湯を改装したカフェ『さらさ西陣』など、本当に素敵な場所ばかり。

町なかで撮影させていただけたので、京都が好きな方や地元の方が見たら「あ、ここはあの通りかな?」とわかるような、見覚えのある場所がたくさん出てくると思います。

お赤飯の風習と意外な目的をもつミニ鳥居

——映画には、京都ならではのしきたりや習慣も出てきますね。

深川 毎月1日と15日にお赤飯を食べる風習にびっくりしました。町家の外壁に取りつけられている小さな鳥居も、この作品をとおして初めて知ったんです(下の写真参照)。何度も来ているのに、気づいていなかったなぁと。

気づいていなかったといえば、映画の最後のほうで室井さん演じるお義母さんが「(京都)らしさを押しつけられたくない!」と、まどかとバトルになる展開には、ハッとさせられました。

京都=こうだよねというイメージって、どうしてもつくっちゃうじゃないですか。もしかしたら京都の方は、そこに違和感や疑問を抱いていたのかもしれない……。そんなふうに想像できて勉強になりました。

——京都の印象が変わりましたか?

深川 京都が大好きなことに変わりはないんですけど、見る目線が変わった感覚です。まどかは外から来た、いわゆる“ヨソさん”。

京都が好きすぎて、周囲を引っかき回しちゃうんですけど、それってまどかの愛ゆえなのか、京都がそうさせるのか。そこがこの映画や、いままで訪れた経験をとおしてもわかりきっていない。というより、わかっちゃいけないような……。

京都にはそれくらい、長くて深い歴史があるんですよね。だから、まどかのようなヨソさんが入っていくときも、わかった気にならずにリスペクトをもつことが大事なのかなと思いました。

何も知らないまどかは鳥居に手を合わせるのだが、実は立ち小便禁止の意味で……。(C)2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会。

——変わらず守り継がれることもあれば、時代に応じて変わっていく、そんな京都の姿も描かれていました。深川さんがお仕事で意識されている変わること、変わらないことは?

深川 こういうインタビューで「作品を通じて成長したところは?」と聞いていただくのですが、一つの作品で自分の成長を実感することは少なくて。

でも何年後かに、当時かけてもらった言葉の意味がわかってきたり、そういう変化があったりすると、少しずつでも前に進めているのかなと感じます。

それと憧れる方がいても、自分はその人になれるわけじゃない。でも素敵だなと思う方の吸収できるところは吸収していきたいと思っています。

好きな服や趣味は年々、変わるどころかどんどん強固になっていますが、仕事では柔軟でいたいなと。変わること、変わらないこと両方の大切さを感じています。

——京都にはプライベートでも?

深川 「ホッとしに行きたいなぁ~」というときに何度か行っています。母と旅行したことも。今回はしばらく京都に滞在したので、グルメに詳しい方々からおすすめのお店をたくさん聞きました。

私、いつもおいしいお店をチェックしてGoogleマップにピンを打っているんですけど、この撮影期間で京都のマップが潤いました!

——どんなお店か気になります。

深川 いっぱいありますよ~。中華料理屋の『大鵬(たいほう)』さんは、撮影中に2回行きました。見た目は「ザ・町中華」ですが、中に入ると食器や店内の雰囲気が洗練されていて、フードロスをなくすことなど、環境にも気を配っていらっしゃる。なにより、すごくおいしいんです。

京都って和食のイメージが強かったのですが、実はグルメの幅が広いんですよね。カレーでも焼肉でもどのお店に入ってもおいしくって!

『スパイスチャンバー』という、キーマカレーがおいしいお店を教えてもらったんですけど、おいしすぎて2回行っちゃいました(笑)。

『スパイスチャンバー』のキーマカレーは17種の香辛料を使ったクセになる味わい。写真はチーズトッピング。

——映画を楽しみにしている方たちにメッセージを。

深川 京都を愛するまどかによって、古都に激震が走る! そんな奇想天外な世界が繰り広げられますが、人と人ではなく、人と京都のラブストーリーだと思って見ると、しっくりくると思います。奥深い京都の魅力を見つけてほしいです。

映画 『ぶぶ漬けどうどす』

(C)2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会。
(C)2025「ぶぶ漬けどうどす」製作委員会。

京都の老舗扇子店の長男と結婚したフリーライターの澁澤まどか。老舗の暮らしをコミックエッセイにしようと、義実家や町の女将さんを取材するのだが、本音と建前の文化を甘く見ていたせいでみんなを怒らせてしまう。それでもくじけず正しい京都の伝道師になろうと奮闘するが、事態は町を巻き込み思わぬ騒動へ——。

出演:深川麻衣
小野寺ずる 片岡礼子 大友律 / 若葉竜也
松尾貴史 豊原功補
室井滋
監督:冨永昌敬 企画・脚本:アサダアツシ
配給:東京テアトル

聞き手=岡崎彩子 撮影=千倉志野
ヘアメイク=鈴木かれん スタイリスト=山口香穂

『旅の手帖』2025年7月号より一部抜粋して再構成

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