Yahoo! JAPAN

FOX_FEST初日レポート:BABYMETALだからこそ実現できる刺激的な奇跡の舞台 2024.5.25 @さいたまスーパーアリーナ

YOUNG

FOX_FEST BABYMETAL

BABYMETALが主催するフェス“FOX_FEST”が、5月25日と26日の2日間に渡り、さいたまスーパーアリーナにて開催された。ここでは初日の25日公演の模様を振り返っていきたい。BABYMETALのオーガナイズにより海外アーティストが招聘された公演としては、2018年にサバトンとギャラクティック・エンパイアが参加した“BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN EXTRA SHOW “DARK NIGHT CARNIVAL””、2019年にブリング・ミー・ザ・ホライズンがスペシャル・ゲストとして参加した“METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN”が思い起こされるが、今回のような完全なるフェス形式は初。前述の公演を経たからこその進化版であり、“チームBABYMETAL”も並々ならぬ気合いが入っていたであろうことは想像に難くない。

そうした気概は開演前に登場したオープニング・アクトから感じることとなった。フェスの開演時刻である午後3時30分を待たずに突如登場したトリオ編成の“赤子金属”は、EDMアレンジとなったBABYMETALの「メギツネ」が流れる中でダンス・パフォーマンスを披露。筆者の席からはその正体をすぐに確認できなかったが、何と赤子金属の名を冠したBABYMETALの“変名ユニット”であり、今回のフェスを成功させんとする熱量を感じられる至極豪華なサプライズ的オープニング・セレモニーであった。

METALVERSE

赤子金属の出番が終わるや、すぐさま“METALVERSE”のステージが幕を開ける。今年2月の公演では5人編成だったが、今回は3人でのパフォーマンスとなり、加えてゲスト・バンドとしてASTERISMが生演奏でジョイントするスペシャルな趣向だ。結果、これが実に素晴らしいコラボレーションとなっており、1曲目の「Crazy J」から見事なケミストリーを見せてくれた。特に同曲はMETALVERSEのマテリアルの中で最もバンド・サウンド寄りのナンバーであり、軽快なシャッフルのリズムの中でツーバスも派手に打ち鳴らされる曲調だが、こうした血の通ったロック・グルーヴはASTERISMにとってお手の物。のっけからオーディエンスの心を鷲掴みにしていく(舞台上の立ち位置的にも両者を前面に打ち出していたのが良かった)。

METALVERSE (pic: Taichi Nishimaki)

METALVERSE (pic: Taichi Nishimaki)

続く「GIZA」は重厚なトラップ・メタル・テイストの音像で、ふとHAL-CA(g)を見やると、ESP製の7弦ギターで演奏していることに気づく。普段は一貫してSTシェイプの6弦モデルを使用している彼女だけに、この画は非常に新鮮だ(セクションによって持ち替えており、らしさ溢れるフラッシーな速弾きを披露する見せ場もあった)。また、METALVERSEのヴォーカルを務めるセンター・メンバーは妖艶な歌声からガナリも交えたパワフルな唱法まで幅広くアプローチし、さらに曲中でHAL-CAと向かい合って共に髪を振り乱して激しくヘドバンするなど、以前にも増して堂々たるフロント・ウーマンぶりを展開していたことも印象深かった。

BILMURI

続いては、元アタック・アタック!のジョニー・フランク(vo g)によるプロジェクト=“ビルムリ”が登場。ベースレスという編成で、日本人女性サックス奏者のユッコ・ミラーも参加したそのサウンドは、大枠ではメロディアスなポップ・ロックといった風情である。だが、ジョニーのクリーン・ヴォーカルとは対照的に、ギタリストによる激情型スクリームが不意に飛び込んできたり、ひねりの効いた楽曲群はすこぶる爽やかながらクセもある。今回の出演者の中では異色の存在という感もあったが、いざ体感してみれば、“初めて観た人でも自然と身体を揺らしてしまう”という実にフェス向きの心地よさを放出するアーティストだと分かる。彼らもまた“FOX_FEST”らしいラインナップだったと言えるだろう。

BILMURI (pic: Taichi Nishimaki)

BILMURI (pic: Taichi Nishimaki)

ELECTRIC CALLBOY

さて、次の“エレクトリック・コールボーイ”に関して、元々世界的ビッグネームであったことは確かだが、フェス開催の2日前にBABYMETALとのコラボ曲「RATATATA」がリリースされ、その後のMV公開もあいまって、一気にBABYMETALファンにとっても重要アクトになったことは間違いない。いやはや、この辺りの仕掛けっぷりはさすがである。開演を告げるSEを機に湧き起こる歓声の大きさは驚きを覚えるほどで、実際ショウが始まってからもその盛り上がりは圧倒的だった。時に美しいハモりも見せるツイン・ヴォーカルによるキャッチーな歌メロとEDM由来の分かりやすい前のめりのリズムはオーディエンスを終始牽引し、加えて、曲ごとの世界観に合わせた揃いの衣装やウィッグをまとうことでファニーな楽しさも演出していく。ラウドにしてポップ、往年のディスコ・ミュージックをも彷彿とさせる問答無用のノリやすさは極上で、BABYMETALとのコラボ云々を抜きにしても、新たに多くのファンを獲得したであろうエンターテイナーぶりを見せつけた貫録のステージだった。

Nico Sallach / ELECTRIC CALLBOY (pic: Taichi Nishimaki)

Kevin Ratajczak / ELECTRIC CALLBOY (pic: Taichi Nishimaki)

POLYPHIA

フェス初日のトリ前を飾ったのは“ポリフィア”だ。彼らもワールドワイドに確固たるポジションを築いているとはいえ、通常であればインストゥルメンタル・バンドの存在は浮いてしまうところだが、言わずもがなBABYMETALとの関わりを踏まえれば、ようやくこの日が来たと感じたオーディエンスも多かったはず。また、おそらく1曲目「Loud」が始まった瞬間、BABYMETALの「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」で聴けた彼らのギター・プレイはまさしくポリフィア節全開だったのだなと、改めて感じ入った人も数多くいたのではないか(実際「Brand New Day」について、「BABYMETAL側が俺たちに求めているであろう要素をできるだけ詰め込もうとした」と本人たちも語っているのだが)。それほどまでにスコット・ルペイジ(g)とティム・ヘンソン(g)のアプローチには、呼吸が伝わるような個性豊かなニュアンスが多分に含まれており、その流麗に弾きこなす様はオーディエンスを瞬時に魅了する。

ただ、テクニカルでプログレッシヴではありつつ、例えばナイロン弦を張ったエレアコを用いてスパニッシュ風プレイを聴かせる「Chimera」や、コール&レスポンスの掛け合いを盛り込んだ「Champagne」など、技巧の中にも様々な味わいを持たせて観る者を飽きさせない。この日は過去4枚のアルバム+EP『THE MOST HATED』(2017年)からのセレクトで凝縮したポリフィア・ワールドを展開し、大きな余韻を残してステージを後にした。

POLYPHIA (pic: Taichi Nishimaki)

POLYPHIA (pic: Taichi Nishimaki)

BABYMETAL

ラストは、まさに満を持してといったタイミングでBABYMETALの登場である。舞台中央に巨大ライザーが設置されたステージ・セットになっており、「BABYMETAL DEATH」のイントロと共にメンバー3人がせり上がる様式美的オープニングはフェスでも健在。クレイジーなギター・ソロ・パートでは、舞台狭しと勢いよく駆け抜けるメンバーの姿を追うように捉えるドローン映像が抜群のカッコ良さで、彼女たちのダイナミックなパフォーマンスを余すことなく伝えていく。「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」ではSU-METALが「Show me big circle!」と煽り、その後のBABYMETAL流トラップ・メタル「BxMxC」におけるヴァイオレントな空気感と轟音、入り乱れるレーザーライトもフェスならではの熱狂を後押ししていった。

そして、当夜の興奮のピークは「Brand New Day」である。ライヴ仕様のイントロダクションが流れ、台上に現れるメンバー3人のシルエット──そしてその両サイドに2人が加わり、5人のシルエットになった時の感動といったら…! ポリフィアからスコットとティムがギターを手にしてジョイントし、いわば完全体の「Brand New Day」が世界初披露と相成った。シュレッディングに鋭く切り込んでくるギター・ソロ前半はスコットが、ハーモニクスを華麗に織り交ぜた後半はティムが担当する。もちろんリードだけでなくバッキングも弾く2人とBABYMETALの共演が観られるなんて、何と贅沢な時間だろうか(テーマ・メロディーを弾きながら少年のような笑みをたたえるティムの表情も記憶に残っている)。曲を終えると、ついにこの瞬間がやってきたと歓びを言葉にして叫んだSU-METAL、2019年10月のリリースから約4年半の時を経てついに夢を実現させたのだった。

BABYMETAL X POLYPHIA (pic: Taichi Nishimaki)

また、こちらもお待ちかねの「RATATATA」は終盤に披露。同曲のエレクトロ・テイストのイントロから大きなハンド・クラップが湧き起こり、エレクトリック・コールボーイのシンガー、ニコ・サラックとケヴィン・ラタクザックがMVでもおなじみのミラーボールを象ったヘルメットを着用して登場する。ここでもSU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALと、彼ら2人が台上に横並びになった瞬間の盛り上がりは凄まじいものがあり、全員が高いテンションでパフォーマンスしていく。パーティー感満載のディスコ・ミュージック、テクノ、メタルなどの要素がブレンドされた「RATATATA」におけるBABYMETALのハマり具合は天晴れで、キュートでファニー、かつライヴではより一層威力を増す血湧き肉躍るキラー・チューンとなると実感(同曲での熱狂もまたピークだったかもしれない)。それにしても、ポリフィアとエレクトリック・コールボーイとの各コラボレーションのスタイルは月と鼈(すっぽん)ほどの大きな差異があるが、姿形を限定せず、しかしいつ何時もBABYMETALらしさを発揮できる彼女たちの底知れぬポテンシャルに改めて舌を巻くのであった。

BABYMETAL X ELECTRIC CALLBOY (pic: Taku Fujii)

ラスト・ナンバーを自身の生き様を描く正統派メロディック・スピード・メタル「Road of Resistance」で締め括り、大ラスではSU-METALがこの日出演したアーティストの名前をリスペクトを込めて熱くコール──これにて約5時間に及ぶフェスは幕を閉じた。

BABYMETAL (pic: Taichi Nishimaki)

“FOX_FEST”のラインナップが発表された段階では様々な声が上がっていたが、ヤング・ギター2024年6月号でプロデューサーのKOBAMETALが語っていたように「間口の広さ」をテーマとし、「曲をまったく知らなくても楽しめる内容」で、「日本ではまだ知らない方も多いアーティストであっても、今後BABYMETALにとっても良いコラボレーションができそうだなという期待を込めたラインナップにしたかった」という目的は果たされており、結果しっかりとBABYMETALがオーガナイズするフェスならではの形に仕上がっていたと思う。BABYMETALだからこそ実現できる刺激的な奇跡の舞台を、今後も創っていってほしいと願うばかりである。

BABYMETAL (pic: Taku Fujii)

(レポート●早川洋介 Yohsuke Hayakawa)

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 暖まるコンテンツが盛りだくさん!『京丹波クリスマスマーケット2024』/丹波自然運動公園

    Leaf KYOTO
  2. 十二支デザイン手ぬぐいに「致命的ミス」発覚 →粋すぎる〝起死回生〟でネット絶賛「リアル怪我の功名」

    Jタウンネット
  3. 【熊本市中央区】庭先を間借り!? ペットもOKの穴場カフェで食べるボリュームサンドが最高すぎた!

    肥後ジャーナル
  4. 自ら発行する『ケミホタル』って何? よく使われる釣り&対象魚を考察

    TSURINEWS
  5. 【2024忘新年会・しゃぶ鍋ビュッフェNS+】しゃぶ鍋、すし、飲茶が食べ放題!|新潟市中央区駅南

    日刊にいがたWEBタウン情報
  6. 愛犬がストレスを抱えかねない生活音4つ 不安な気持ちにさせないために飼い主ができることとは

    わんちゃんホンポ
  7. 愛猫の『血液型』に関する豆知識3選!人間にあって猫にないのは何型?

    ねこちゃんホンポ
  8. 現役のだんじりに会える!住吉の『東灘だんじりミュージアム』がいよいよオープン 神戸市

    Kiss PRESS
  9. モーニング娘。’24が初の「THE FIRST TAKE」 特別フォーメーションで「恋愛レボリューション21」披露

    おたくま経済新聞
  10. とにかく可愛い優れもの。"防災"に役立つミッキー&ミニーグッズが付録に登場。《付録レビュー》

    東京バーゲンマニア