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存在感増す琉球ゴールデンキングスの“セカンドユニット” 機能する鍵はPG伊藤達哉の統率力と「組み合わせの妙」

OKITIVE

セカンドユニットを支えるアレックス・カークやケヴェ・アルマら
最近の試合で躍動するセカンドユニットの面々=1月5日、沖縄アリーナ(長嶺真輝撮影)

アレックス・カーク、伊藤達哉、ケヴェ・アルマ、松脇圭志ーー。 1月4、5の両日、新年初の2連戦で白星を重ねたBリーグ・琉球ゴールデンキングスの試合後、沖縄アリーナのコート中央でマイクを握った選手6人のうちの4人である。 ホームでの挨拶は、その試合での活躍が目立ったヒーローたちに許された権利。キングスは東地区の茨城ロボッツを相手に82ー67、91ー66で勝利し、2戦目は1試合で一人のみのMVPに伊藤が選ばれた。 この4人は、いずれも先発メンバーではないセカンドユニットだ。ちなみに、昨年末の12月28日にあった京都ハンナリーズ戦では、同じくベンチスタートの荒川颯もMVPに選出されている。 開幕から3カ月間はケガ人や体調不良の選手が続出したが、ようやくフルメンバーが揃ったキングス。ここ数試合は岸本隆一やジャック・クーリーらスターティング5以外の選手の存在感が際立ち、目に見えて選手層に厚みが増している。

ベンチポイントで「39対29」「44対20」と圧倒

3Pシュートの成功率が上がってきた荒川颯

茨城との初戦はスタートから攻守で相手を上回り、リードする展開。主にセカンドユニットが出ている時間帯で若干失点が増えたものの、ミドルシュートやゴール下でチーム最多の20得点を挙げたカークを中心に流れは渡さず。ベンチポイントで39対29と上回り、先勝した。 2戦目はヴィック・ローの3Pシュートや速攻からのダンク、岸本隆一の長距離砲などで得点を重ねるが、なかなか抜け出せない展開。しかし、第1Qの終盤に両チームともベンチメンバーが主体になると、キングスの勢いが増す。 セカンドユニットを束ねるPG(ポイントガード)の伊藤が相手ボールマンに激しいプレッシャーを仕掛けてオフェンスファウルを誘うと、全体のディフェンス強度も向上。さらに伊藤がミドルシュートや鋭いドライブからの得点でオフェンスのリズムもつくり、荒川の3Pシュートも決まって8点リードでこのクオーターを終えた。 48ー31で迎えた第3Q、再びセカンドユニットが見せ場をつくる。 前半の勢いのままリードを20点台まで広げたが、相手の激しいプレッシャーを受けて流れが停滞する。しかしセカンドユニットがコートに入ると再びボールの流動性を取り戻し、松脇やアルマが第4Qに効果的に3Pシュートを決めて突き放した。 2戦目のベンチポイントも44対22で茨城を圧倒したキングス。2試合ともベンチメンバーが総得点のほぼ半分を奪った。 桶谷大HC(ヘッドコーチ)も2戦目の後、記者会見で「昨日はファーストユニットが良かった分、セカンドが少し悪く見えましたが、今日はかなり機能しました。ボール回りが良かったし、ディフェンスで圧力を掛けてくれた。茨城さんもセカンドユニットに入った時に、そこで差をつくってくれたと思います」と話し、ベンチメンバーの活躍を高く評価した。 茨城との連戦を終え、キングスは連勝を「5」に伸ばした。通算成績は21勝7敗。西地区2位につける島根スサノオマジックとのゲーム差を「4」に広げた。

伊藤がもたらす高いディフェンス強度

自らのアシストで荒川が3Pシュート決め、荒川に向けてポーズを決める伊藤

セカンドユニットのパフォーマンスの質が上がるキーマンとなっているのは、司令塔を務める伊藤だ。「ゲームチェンジャーとして、スタートの流れが良かったらそれをさらに良くするし、ダメだったら喝を入れて流れを呼び込むということが、ここ数試合はできています」と手応えを語る。 2戦目は15分23秒出場し、4本のシュートを全て沈めて8得点。アシストは2本。「+/−」(その選手が出ている時間帯の得失点差)はチームトップの「+25」に達し、この試合のMVPに選出された。 オフェンス面の数字が目立って高い訳ではないにも関わらず、自身がコートに立っている間にこれだけのアドバンテージをつくれた要因は何か。以下は指揮官のコメントだ。 「一番最初の達哉のディフェンスからリズムをつくれたと思います。オフェンスに関しても、達哉のところでアンダーを通られてもどういうオフェンスしたらいいかの模範となるようなオフェンスができたと思います」 まず、ディフェンスについては先述した通り、激しいボールマンプレッシャーで全体の強度を高める役割を担った。声を出してスイッチを指示し、「ズレ」が生まれるの防いだり、自ら素早くローテーションしてボールをカットしたりする場面もあった。 伊藤自身は全体のディフェンス強度の高まりを感じている。 「メンバーが揃わなかった時は、長く出続けるために全員がどこかでちょっと力を抜いてしまったりする部分がありました。でも、今はそれぞれが100%の力をぶつけることができているので、ここ最近の勝利に繋がってるいんじゃないかと思います」

アルマ、伊藤を「素晴らしいリーダー」と信頼

内外から得点を決められるケヴェ・アルマ

一方のオフェンス。桶谷HCのコメントにあった「アンダーを通られても…」という部分は少し解説が必要だろう。 「アンダー」とは、ピック&ロールの守り方の一つである。ボールマンのディフェンダーがスクリーンの下側を通り、相手に着いて行く動きのことを指す。逆に、上側をすり抜けて行く動きは「オーバー(チェイスとも言われる)」と言う。 伊藤のように、あまり3Pシュートが得意ではない選手に対してはアンダーで守ることが多い。そのため、インサイドを攻める難易度が高くなるが、伊藤はミドルジャンパーを高確率で沈めたり、ゴール下付近をドリブルで荒らして自ら決め切ったりすることができる。ズレをつくってから味方のビッグマンやシューターにアシストする選択肢もある。 この能力は、伊藤が自覚する強みの一つだ。 「まずは僕がそこをしないと、相手からしても怖くないと思います。積極的にアタックして、まわりを生かす時は生かす。自分がスクリーナーになる時もあり、いい潤滑油になることを心掛けています」 素早いトランジション(攻守の切り替え)からボールをプッシュすることもできるため、荒川が速攻で決め切ったり、カークが先頭を走ってミスマッチを作り、イージースコアを挙げる場面も多い。「走れる選手がたくさんいるので、僕の持ち味のアップテンポなプレーがうまくはまっていると思います」と語り、好感触を得ているようだ。 共にプレーすることが多いケヴェ・アルマも「彼はいつもチームのペースを上げ、ボールをシェアしてスペースを広げてくれるので、一緒にプレーするのが楽しいです。素晴らしいリーダーだと思います」と話し、伊藤に厚い信頼を寄せる。

スターティング5で松脇と小野寺を入れ替えた理由は…

茨城との2戦目で3本の3Pシュートを決めた松脇圭志

スターティング5、セカンドユニットとも、選手同士の相性やチームバランスを考慮して起用していることも好調を支える要因だ。フルメンバーが揃ってからの、それぞれの主な顔ぶれは以下になる。 スターティング5:岸本隆一、小野寺祥太、脇真大、ヴィック・ロー、ジャック・クーリー セカンドユニット:伊藤達哉、荒川颯、松脇圭志、ケヴェ・アルマ、アレックス・カーク(平良彰吾、植松義也) 開幕当初との違いの一つに、小野寺と松脇が入れ替わっていることがある。その狙いを桶谷HCに聞くと、明快な答えが返ってきた。 「岸本と松脇を一緒に出すと、なかなかインテンシティ(強度)が上がらないので、小野寺が最初に出てエナジーを持ってバスケットをするという部分をあえてやっています。あと、(3Pシュートの成功率が高くはない)脇と伊藤を組ませて相手ディフェンスがアンダーばかりになるのが嫌なので、そこはずらしています。伊藤と一緒にシューターを置きたいので、荒川と松脇がセカンドユニットにいるというところです」 セカンドユニットについては、伊藤と荒川の両ガードはフットワークに優れ、相手ハンドラーに激しいプレッシャーを仕掛けることができる。一方、松脇は動きが速い訳ではないが、ビッグマンにも押し負けないほどの体の強さを武器としているため、チーム全体として様々なタイプの選手にマッチアップすることができる。 先発に小野寺がいる効果に言及した指揮官は、セカンドユニットに松脇がいる効力も強く感じているようだ。 「ハードショー(スクリーナーのマークマンが積極的にボールマンにプレッシャーを掛けに行くディフェンス)などをやっている中で、松脇のポジショニングがかなり良くなっています。ヘルプポジションに入り、もう1回クローズアウト(マークマンにボールが渡った際に間合いを詰めること)に行くとか、オフェンスリバウンドもやってくれています。ボールに絡まないところでもしっかりプレーをして、5対5をやってくれるので、彼がセカンドにいてくれるとすごく信頼ができます」

強豪に対しても“セカンド”が存在感を見せられるか

セカンドユニットを支えるアレックス・カークやケヴェ・アルマら

層の厚さが増し、40分間を通して高いレベルを維持できるようになってきたキングス。茨城との2連戦は、いずれもユース育成特別枠の佐取龍之介を含めてベンチに入った13人全員がコートに立ち、プレータイムをシェアした。 ただ、その真価が問われるのは今後の戦いの内容次第かもしれない。桶谷HCも厳しい目を持ちながら、選手たちにさらなる進化を求める。 「試合に出ることで『成長をしないといけない』というシチュエーションはできているので、あとは選手次第です。正直、(このまま上位を維持して)プレーオフに入った時に、今のようにメンバー全員を起用できるかと言ったら、そうはならないと思います。一つのリズムの変化で10点くらいを一気に持っていかれることもあります。余裕のない展開の時に『あなたは起用できる選手ですか?』という話です。だから、今の状況を成長につなげてほしいです」 まだ進出できるかどうかは分からないチャンピオンシップ(CS)を待たずとも、直近で各地区の上位陣との対決は多い。1月25、26の両日にホームで東地区首位の宇都宮ブレックスと対戦し、2月1、2の両日には中地区2位のアルバルク東京とアウェー戦を行う。 その他にも、この2カ月間は西地区3位の大阪エヴェッサや中地区4位のサンロッカーズ渋谷など、好調なチームとの連戦が目白押しである。 強豪に対してもセカンドユニットが存在感を発揮することができれば、チーム力が底上げされていることが改めて証明されるだろう。

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