「もどかし過ぎて悶絶!」伝統釣法『高仕掛け』でマダイをキャッチ【和歌山・畑中丸】
ビニールでマダイを狙う和歌山・加太の沖釣りにチャレンジ。実は、マダイを専門に狙ったことがなく、初物尽くしで苦戦して汗と涙と笑いの釣行となったので、レポートしたい。
東の風に強い加太
予定では那智勝浦へ天秤五目釣りだったが、雨と東の強風で中止。先週も先々週も中止だったので、虫が治まらずムズムズしていたところ釣友Nさんから和歌山・加太へのお誘い。行ったことはないが、地理的に東の風に強く、船は出るようだ。
紀淡海峡と呼ばれる和歌山市加太の田倉崎と淡路島の由良との間がポイントである。エサが豊富で魚影が濃く、潮が速いので釣れる魚は美味い。また、天気予報では雨が降り出すのは午前11時。上手く行けば雨に打たれないかもと即食いついた私……。
伝統の高仕掛け
加太は、明石、鳴門と並ぶブランドマダイで有名だ。ここの釣り方がちょっと変わっていて、高仕掛けと呼ばれる全長15mの胴付きで狙う。更にエサは使わずにビニールの切れっ端をチョン掛けする疑似餌釣りなのだ。知ってはいたが、敷居が高いんじゃないのかとチャレンジすることもなくスルーしていた釣りである。
鯛を狙う疑似餌釣りは鯛ラバが思い浮かぶが、鯛サビキ、チョクリ、高仕掛けと複数あってちょっとずつ違うらしい。釣行が決まってからTSURINEWSを予習して臨んだ。
畑中丸に乗船
釣友が予約してくれたには、加太港の畑中丸。予約順に釣座が決まるので、常連さんが前後の角に座った後に残った左舷胴に私、右舷にNさんと背中合わせとなった。釣座に着くと船長から渡された高仕掛け。
ハリス4号の6本針でオモリ30号がセットされており、船長が近況や天候からビニールの色や長さを決めてセットしてくれている。柔らかいロッドが良いらしく、ミチイトはPEライン2号が指定だったので、天秤五目で利用している物を流用した。
船長に初めてですというとポイントや釣り方、ビニール片の付替えなどを親切丁寧に説明してくれた。また、左舷ミヨシの常連さんも非常にフレンドリーで教えて頂きました。
仕掛けの扱いに苦戦
4時半に各遊漁船が一斉に出船、ポイントを目指す。車中でNさんから釣り方について散々レクチャーを受けていたが、渡された高仕掛けのセットの仕方が分からない。仕掛けの上端をリーダーに接続するのが普通だが、渡された高仕掛けは明らかにオモリ(最下部)から解くように巻かれている。どうするのこれ……?
聞けば良かったのだが、移動中なので躊躇ってしまった。悩みながらオモリから解いて幹糸を足元に垂らしつつ、船縁のマグネットに針を付けながらスナップをリーダーに接続したが、これは間違い。ポイントに着いてからオモリを海中へ落とし、仕掛けを解いていって最後にリーダーに接続するらしい。私のやり方だと仕掛け投入時に下から幹糸が出るためオマツリになるのだそうだ。この後も仕掛けの長さに苦戦、幹糸を踏んだり針がどこかに引っ掛かったりとまぁもどかしいこと、この上ない。
常連さんから足元のカゴと2枚のマグネットの使い方を手ほどきいただき、この釣りは糸捌きに慣れることが肝心なので、頑張ってくださいと励まされた。釣り以前の問題である。
釣り方のコツは「忍耐」
最初はオコゼと呼ばれるポイントだったが、アタリはない。釣り方は、オモリが着底したら巻くだけ。早さは、船長によるとスローがお勧めらしく2秒で1回転ぐらいが良いとの事。やってみるともどかしい程に遅い。また、潮が速くオマツリになることも多く、そのたびに船長が駆けつけてくれる。私が慣れていないと言う事もあるが、そもそもくそ長い6本針仕掛けを操るわけなので、着底直ぐに巻き上げているのだが、何度も繰り返している内に隣とオマツリになるのはやむを得ないように思える。
大きな船に6名で満船なのはその辺もあるのかな……などと考えていたら、カツンと当たったが食い込みは無かった。因みにアタリがあっても合わせてはダメで、そのまま巻き続けるかよりゆっくりと巻き、ロッドが突き刺さるまで我慢するらしい。もどかしい……。せっかちなタイプにとっては、忍耐の釣りだ。
ビニールのカラーを変更
朝イチには数多くの遊漁船がひしめいていたが、どこも釣れた雰囲気がないままポイントを移動。沈船という沖の深場へ移動した。水深80m程度のポイントで、その名の通り大きな船が沈んでいるらしい。水深は深くなったが、オモリは30号のままとの事でオマツリが酷くなるのでは思ったが、船長の操船技術と潮の加減で気になる程ではありませんでした。沈船でもアタリはなく、船長によると潮が澄み過ぎているらしい。
澄潮にはブルーが良いとのことで、足元のカゴからブルーのビニール片にチェンジ。細長いビニールの太くなった方の端っこにチョン掛けするだけ。6本中3本をブルーに変更しました。
待望のマダイが船中顔出し
何度も潮上に戻り流し直している内に水深55~60mに反応とアナウンス。同時に右舷ミヨシで待望のアタリ。これは針掛かりしなかったが、Nさんにヒット。続いて左舷ミヨシでもヒットと連発した。チャンス到来と思うが、どうもオマツリしたようだ。急に重くなった。ミヨシの釣人のファイトと併せて巻き上げた。
船長がオマツリを解いてくれて無事にキャッチされたのは、40cm級の綺麗なマダイ。Nさんは60cm級を仕留めて満足げなお顔。羨ましい。調子付いたNさんは2匹目のマダイを仕留める。
筆者に43cm大型アジ
水深80mなので高仕掛けの長さを考慮するとカウンターで50m位まで探ったら良いのかと考えながら巻き巻き……。ククッとアタリがあったが、知らん顔して巻き巻きしているとギューとロッドに乗ってきた。緩めのドラグなのでなかなか上がってこないので、ドキドキタイムが長い。ドラグを締めそうになる指を押さえ込んで、やっとリーダーをキャッチ。高仕掛けを手繰り上げる。
しつこく引き続けるので、マダイではなさそうだと海中をのぞき込むとギラッと光りながら回っている。船長が差し出すタモに入れてキャッチしたのは、43cmの大型マアジ。マダイではなかったが、高仕掛けで初の獲物に肩の荷がおりた。
澄潮で不調
ついに時合い到来と色めき立ったが、アタリが途絶える。やはり澄潮で食ってこないらしい。
加えて早くも雨が降り出した。それも結構な本降りでドンドンとテンションが下がりポキンと心の折れる音がした。
濁り潮到来でマダイ連発
もう上がって和歌山ラーメンを食べに行きたいと思っていたが、船長がポイント移動を決断。友が島寄りの浅場に着くと潮が濁っている。大阪湾の濁った潮が突いてきたようだ。濁り潮にはチビ白が良いと船長。これは期待できるとNさんも言うが、ラーメンの事を考えている私。朝はあれほど居た僚船もすっかりいなくなって、ポイントには3隻のみ。
仕掛けを投入するとカウンターは20mで着底。水深は35m程度しかなく、起伏に富んでいるので根掛かりが連発する。集中力を欠いていたので、いきなり根掛かりでオモリを飛ばしてしまった。その間にあっちでもこっちでもロッドが曲がってマダイがバタバタと上がる。やはりチビ白に食っているらしい。
チビ白で初マダイをゲット!
大急ぎでビニール片を付け替えて着底から巻き出すとクククッとアタリ。思わず手が止まって、その後の食い込みがない。巻き続けろと言われていたのにやってしまった。再び着底させて巻き出すとバタバタと当たる。巻き続けたが針掛かりしない……、悶絶しそうだ。
4回目のアタリでやっと穂先がグーッと入った。バレないで~と祈るような気持ちで巻き続けてキャッチしたのは、35cmのマダイ。サイズ的にはまだまだだが、高仕掛けで初めてキャッチしたマダイは嬉しい。ミヨシの常連さんが我が事のように喜んでくれました。おおきに、お世話になりました。
大型グレにチヌもヒット
絶好調のNさんは、良型マダイに続いて45cmの大アジを連続キャッチして高仕掛け開眼やと勢いづいている。トモではハマチに続き、大型グレが上がった。グレもビニール食ってくるのかと思っていたら、ミヨシでもグレ。
元磯師の私とNさんは、グレには特別な思いがある。胴付きで、ましてやビニールでは釣りたくないなどと話していたが、私にガツンと引っ手繰るようなアタリ。巻き続けるとかの問題ではなく、いきなり5mもラインを引き出された。青物かと思ったが、底に突っ込む締め込みとリズム感……。この引きはグレだと慎重に仕留めたのは、43cm口太グレ。まだ抱卵していてボテボテに肥えていている。磯で食って来いよお前(笑)。
船長によるとグレも釣れるらしいが、これほどデカイのが連発したのは初めてとの事。釣れたマダイやアジはアミエビを吐いたので、磯周りにいる魚が猛っているのだろう。こりゃ、チヌも来るかもと話していたら、ミヨシとトモで大型チヌが上がりました。
良型マダイをバラシ
私以外の皆さんは40~50cmの良型マダイを仕留めていたので、何とか良型をと気合いを入れて巻き巻きしているとククッ。我慢していると穂先がグーッと突き刺さりドラグが滑る。節のある引きで間違いなくマダイ。しかも良型と大喜びでファイト。高仕掛けを手繰り寄せ、もう見えるというタイミングでテンションが無くなった。
思わずうわ~と悲鳴が出てしまう程の痛恨のバラシ…。船長にこれほど悔しがる人は初めてだと言われ、明日も空いているよと営業されました。
焦ってスカ
次に出たアタリは、前の針ハズレが過ぎってしまいアワセを送ったらスカを引かされた。何があっても平常心で巻き続けないといけませんね。
最終釣果と今後の展望
11時半に沖上がり。私は、35cmまでのマダイ(チャリコ?)3匹と大アジと大グレ。Nさんは59cmまで5匹と大アジ2匹と満足釣果。残念ながら良型には逃げられましたが、高仕掛けの魅力は十分すぎるほどに理解できました。釣った魚の3倍のアタリがありました。
今後の展望
マダイは通年で狙えるようですし、夏にはイサギも釣れるそうです。あのアタリをどうしたらモノに出来るのか、リベンジに行かないと。船代に高仕掛けが1セットレンタルで付いていて、ビニール片の付け替えは船長がアドバイスしてくれます。意外と敷居が低いかも知れませんよ。皆さんも伝統の高仕掛けにチャレンジしてみませんか。
<田中こうじ/TSURINEWSライター>
畑中丸
畑中丸(はたなかまる) >
マダイ釣りの名所 加太の遊漁船。マダイ、青物、良型のアジやサバが狙え、人気のタチウオ釣り、アジやガシラ釣りにも出船。畑中丸と第2畑中丸(日出丸)の2 隻体制。大物狙い(主にマダイ)はレンタルタックルが貸し出し無料でビギナーも手軽に挑戦できます。デッキには屋根もあり日差しや雨を避けられ快適に楽しめます。