JR観光列車「ひなび」三鉄に初乗り入れ 鉄道がつなぐ秋旅!いわて観光キャンペーン進行
JR東日本の観光列車「ひなび(陽旅)」が9月28日、初めて三陸鉄道に乗り入れた。釜石駅では両社の関係者らが宮古駅からやって来た乗客をお出迎え。津軽三味線と墨絵という和のテイストたっぷりの催しで新しい魅力を発信した。いわて観光キャンペーン推進協議会とJR盛岡支社が主催する「いわて秋旅キャンペーン」の開始に合わせた企画。岩手県内の観光素材をピックアップし多彩なプログラムを提案していて、12月31日まで楽しめる。
ひなびは通常、JRの東北本線、釜石線の盛岡-釜石間で運行されている。三鉄リアス線に乗り入れるのはこれが初めて。開業40周年を迎えた三鉄と連携し、3つのツアーを用意して団体客向けの臨時列車として運行した。グリーン車・普通車の2両編成で、定員は59人。満席となった車両は宮古駅を出発し、乗客は三陸海岸の景色や地元食材をふんだんに使った弁当を味わいながら釜石駅に到着した。
釜石駅でのもてなしは、墨絵のライブペイント。JRの髙橋恒平釜石駅長(44)による津軽三味線の演奏に合わせ、日高寺(礼ケ口町)の菊池錬城住職(47)がえとにちなみ龍(竜)を描いた。ひなびと伝統芸能の虎舞をテーマにした作品も事前に仕上げてあり、キャンペーン期間中、2作品が駅構内に展示される。
「ひなびに乗ってみたかった」という人が多く、大槌町の佐藤忠義さん(71)は「車内は快適で、ゆっくり走ってくれたり、サービスも歓迎もされ楽しかった。ビールを飲みながら海鮮弁当を味わえたし、相席になった人と話すのもいい思い出になった」と満喫。盛岡市の小学4年生、葛巻澪緒莉さんは「大きな窓から見える景色がきれいだった」とはにかみ、母親の史子さんは「車内モニターに運転席から見える風景が映し出されていたのが印象的」と笑顔を見せた。約1時間の停車時間に駅周辺を散策。関係者に見送られながら、終点の盛岡駅に向かった。
三鉄の山蔭康明駅長(60)は、沿岸部を出発点とした鉄道旅を歓迎。「互いに取り組みながら交流する機会が増え、沿岸がにぎやかになるといい」とうなずいた。8月中旬に県内に上陸した台風5号の影響で、一部区間で運休が続くが、40周年記念事業は進行中。10月6日~11月10日までの土、日曜を中心に釜石駅-盛駅間で「あわび列車・まつたけ列車」を運行する。秋の味覚づくしで三陸の魅力を上乗せ。上下線でメニューが異なり、「景色と豪華2大食材をぜひ楽しんで」とアピールする。
同キャンペーンは10月1日にスタート。「秋は短し旅せよ岩手」をキャッチコピーに、県内の多彩な魅力の発信や企画を実施しながら、県全域への誘客を図る。沿岸エリアでは長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」や三陸の絶景日の出クルーズ(宮古市・田野畑村)、おおつち潮風テントサウナ(大槌町)といった自然体感スポットを紹介。グルメ・お酒ではヤマキイチ商店 ガストロノミーツアー(釜石市)などのイベントを提案している。
JR釜石駅では10月12日に「鉄道まつり2024」を予定する。釜石初企画の運転シミュレーター体験のほか、鉄道模型(Nゲージ)展示、ひなびの塗り絵展示などの催しを用意。髙橋駅長は「おいしいものがあり、紅葉が美しい季節を迎える。岩手は広く、まだ知らない魅力がある。ひなび、列車でたくさん旅をしてほしい」とPRした。