なぜ徳島は「ナマズ天国」なのか?無数の水路で楽しむデイナマ攻略ガイド
暗くなってからが本番といわれるナマズ釣りだが徳島には暗い時間にはねらわないアングラーがいる。その理由は明確だ。明るいほうが断然面白いからだ。ナマズの楽園へようこそ!
写真と文◎松本賢治
徳島というナマズ天国
多魚種アングラー系ユーチューバーの内田さん、通称うっちーは2年ほど前、地域おこし協力隊への応募をきっかけに、埼玉から徳島県阿南市へやってきて現在ゲストハウスナマズを営みながらユーチューブやティックトックなどで動画を配信している。
釣りユーチューバーとして活動をするのと同時にルアー釣りを始めたのは5年前。ルアー釣り人生初の獲物がナマズだった。そして、ナマズ釣りにハマってしまい、それからずっと映像映えもするナマズ釣りをしているという。
磯から渓流まで、あらゆる釣りができる全国屈指の釣り天国・徳島ではあるが、これほどまでにナマズ天国だと知ったのはこっちへ来てからだという。
暴れ川として知られる吉野川はよく氾濫した。だが、逆に台風の時期以外は水不足となっていたことから水路が発達。徳島には大小138の河川に加え、網の目のように水路が張り巡らされているためナマズポイントが無数にあるわけだ。
こんな田園風景が広がる中での釣りがメイン
デイゲームでも激しいチェイスが出る
ちなみに、うっちーはナイトゲームはしない。「最初からデイオンリーなんです。もちろんナイトもやりましたが、動画配信メインっていうのがあるんで夜は厳しい。それと徳島のナマズは活性が高いんでデイで普通に釣れるっていうのが大きいですね。しかもトップの釣りなんで水面が炸裂する瞬間を映像でお届けしたいですから」
うっちーがデイナマを楽しむポイントは牧歌的な田園風景の中にある水路がメインだが、住宅地の中や商業地の周辺でも普通に釣れる。とにかくポイントには事欠かないので1スポットへ数投したら次へ、というランガンスタイル。
マットカバーなどのシェード、護岸際、流れの落ち込みなどナマズの好むスポットをトレース。ナマズがいれば、すぐに激しく反応してくれるため勝負が早い。関東などの激戦区では夕マヅメからエサを追い回すため日中はジッとしていることがほとんど。そのため反射食い=リアクションバイトをねらうのがセオリーとされているが、徳島では普通に日中から激しくチェイスしてくるという。
徳島ではデイゲームでも激しくルアーにチェイスしてくる
デイナマの好条件
「僕はタイド(潮の干満)のあるところが好きなんです。気にしているのは水深ですね。釣りやすいタイミングをねらってポイントには入っています」
潮が影響しない完全淡水の水路でも同様に水位が重要という。理由はナマズのルアーへ対する反応に大きく影響するためだ。
「バイトが出やすい理想の水位は30~50cm。ナマズと水面のルアーの距離がほどよく、それ以上深いと水面まで出にくくなります。ナマズの頭上にルアーを通すとドバッと出てきやすいです。浅くてフラットなボトムでも、ちょっとした凹みにナマズが入っていて、その水深がそれくらいなら同じように反応しますね。そこに、多少の濁りがあると最高です」
ナマズは、水深が80cm以上あってルアーが丸見えのクリアな水質でも出てこない。濁りは好条件だが、深いとなおさら出にくくなる。水深が理想的でも、水質がクリアだとカバーや流れ込みとかナマズが身を隠せる何かがないと難しいという。
以上のような考察からも分かるとおり、うっちーさんがねらう川の規模は小さくなる。
「はい、小場所が好きです。幅30cmほどの溝から3mくらいの水路をメインにねらっています。4~6月は特に産卵絡みで本流から支流、さらに奥の溝にまで入ってくる時期。活性も高くて広範囲に散らばって釣りやすいです。チェイスもしつこくて、すごい手前でもド派手に出るし数も釣れる、何より動画映えします(笑)」
「一番近いポイントは家から1分。遠くても車で30分の範囲で、ほぼ毎日デイナマを楽しんでいます」といううっちー
デイゲームのルアーセレクト
ルアーカラーのセレクトは釣果に大きく影響するようだ。水質がクリアならクリア系、濁りが入っていればピンクやオレンジといった派手系が効果的という。
デイゲームの醍醐味はなんといってもド派手なバイトシーンが丸見えなこと。それでいて、なかなかフッキングに至らないもどかしさも魅力のひとつ。「ナマズは視力が悪いんでバイトがヘタ。だからアワセのタイミングが難しいです。基本的にワンテンポ遅らせてからアワセを入れますが……それでもすっぽ抜けることが多いですね(笑)。でも、食い損ねても再チェイスしてくるケースも多々あるんで」ルアーを追い越すほど活性が高いときは速巻きすると食ってくるナマズもいるが、止めたらまた出るのもいる。だから基本的にはそのまま巻き続ける。
「ナマズは食うのがヘタなんで、基本的にチェイスしてチェイスして、その末にミスバイトをするという憎めないやつです(笑)」
ふく鯰とだいふく鯰
ルアーは各種使うが、最近よく使って実績を上げているのが、ダイワの「ふく鯰(54mm)」と「だいふく鯰(65mm)」。使い方としては基本的にはスローリトリーブするだけ。
「いかにもナマズが好きそうなカップ音とラトル音、さらにはブレードとボディーの接触音でアピールしてくれます。スローなただ巻きをメインに、ここぞというピンポイントではドッグウォークで首を振らせて移動距離を抑えたアピールもします。そのポイントにいる大きいのから食ってくる傾向はありますが……サイズは選べないですね。これまでのナマズの最小記録は22cmなんですけど、このルアーに食ってくるのは小さくても40cm以上で60cmオーバーまで釣れます」
サイズの使い分けは、活性を伺う時や活性が低めな時はふく鯰から使い、明らかに高活性であったりアピールを大きくしたい時、飛距離が必要な時にだいふく鯰をセレクトするという。
ふく鯰とだいふく鯰
水温が上がったらイイ感じ
「潮の影響があるポイントではイナッコとか海の魚も食ってるんでいいサイズが出やすいのも特徴ですね。かといって、シーバスみたいにベイトフィッシュを追い回すことはなく、あくまでも待ち伏せ型です」
うっちーの住む阿南市には紀伊水道に注ぐ那珂川と桑野川の2本の大河川があり、そこから縦横に水路が延び、干満差のあるポイントも多い。4月下旬の取材当日も数ヵ所を見て周ったがナマズの姿を確認することはできなかった。
「ちょっと涼しいですもんね。でも、もう奥の水路に入ってきているのは確認できているので、今日はそっちがいいかもしれません」と桑野川の支流をランガン。朝の冷え込みが強かったせいか最初の数ヵ所は出てこなかったが、気温が上がってきた午前10時過ぎ、幅1m強の水路でだいふく鯰に激しいバイト!この一発目が出て、すぐに二発目の激しいバイトがあったものの両者とも乗らない。
でも、落胆することなく間髪入れずに次のキャストでまた出た!今度はフッキングが決まってパワーファイトで一気にぶち抜いた。コンディション抜群のふくよかな徳島ナマズにひと安心のうっちー。「気温も上がってきてイイ感じになってきたと思ったら出てくれました。これでアベレージです。抱卵してますから」とすぐにリリース。
コンディション抜群の60cmクラス。どうしても1尾獲りたかったので前後をトレブルフックに交換
その後も同じ水系で何度かチェイスを味わったのち、那賀川水系の支流へ移動した。「普段はクリアなんですが、今日は代掻きが入って濁ってますね」と言って強アピールのだいふく鯰をチョイス。
ヘチ際をポコポコとスローにトレース。すると、ドバッ!と出た。が、乗らない。すぐにキャストを再開すると、またもドバッ!と心臓に悪いバイト。今度はフッキングも決まり、またまたナイスバディーのナマズを草の上へ。
護岸際をトレースして食わせた2尾目もコンディション抜群。濁りがあることからカラーはマッディピンクをチョイス
「今日はちょっと渋めでしたけど、サイズが揃ってくれたので楽しめました。今日はこれから宿に新しいお客さんが来るので終了します」
うっちーのナマズライフは続く。
内田優樹【うちだ・ゆうき】プロフィール
YouTuber『多魚種アングラー【うっちー】』で主にナマズ釣り動画を公開。徳島県でGuesthouse NAM
AZUを経営。ナマズの自己記録は75cm。
内田優樹
Guesthouse NAMAZU
阿南市でうっちーが営むGuesthouse NAMAZU。素泊まりのみ。料金は時期によって異なる。無料レンタル自転車あり。1名から1組最大5 名まで。共有バスルーム、共有キッチンあり。お遍路さんで利用する方が多いという。周年ナマズ釣りガイドも行なっている。3時間で1名1万円、2名1万5000円。6時間で1名1万5000円、2名2万2500円。
詳細・予約はGuesthouse NAMAZUの宿情報またはメールにて。
Guesthouse NAMAZU
※このページは『つり人 2025年7月号』を再編集したものです。