【横浜市中区】横浜中央病院 看護記録にAI導入 負担減に期待 ケア充実へ
医療現場の負担軽減とケア充実のため、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)横浜中央病院(川田望院長)=中区山下町=がこのほど、人工知能(AI)を活用した看護記録作成支援システム「Caretomo(ケアトモ)」を神奈川県内で初めて導入した。
患者の状態やケア計画、経過など看護師が日々作成する「看護記録」は多職種連携や情報共有に不可欠な業務だ。しかしその作成に多くの時間が割かれ、多忙な中後回しになりがちに。残業原因の多くを占めており、特に入退院が多い病院はその負担も大きい。
同院は中華街に隣接する場所に位置し、14診療科、230床を有する地域医療の中核を担う急性期病院。救急搬送の受け入れも多く、昨年度は年間4477件と前年度と比べ、約113%増加した。院内で実施したアンケートでも「仕事の量的負担」をあげる声が多かったという。
この課題を解決するため同院は、医療機関向けソフトウェア開発・販売を行う(株)SIND(シンド)(長野市)が開発した「Caretomo」を導入。全国で8例目。看護師と入院患者の会話音声をリアルタイムで文字化し、記録作成を大幅に効率化するもので、10月17日から試験的に運用している。
数秒で作成
同システムは、ナースカート上のパソコンに接続したマイクデバイスを使用。患者との会話内容を文字起こしするだけでなく、AIが会話の内容を分析し、看護記録の様式である「SOAP(主観・客観的情報、評価、計画)」の骨組みを自動で生成してくれるのが特徴だ。患部の状況など視覚情報の入力や生成内容の確認修正を行った後、電子カルテに移行される。標準的な医療用語は搭載されているが、現場データに基づいて看護・医療の専門用語を日々学習し、使うごとに精度があがっていくという。看護師は「今までは患者さんとの会話をメモに書くか、その場でパソコンに打ち込んだ後、手入力でまとめていた。1人につき数十分かかっていたが作業がボタン一つで数秒で作成してくれる」と驚く。一方「まだ操作に慣れていないので、(残業時間が減ったなど)数値として効果が表れてくるのはこれから」と話す。
人材確保にも期待
現在看護記録のほか、医師が患者・家族に病状を説明する際や、多職種が集まって医療方針を検討するカンファレンスの場でも活用している。
同院の岡崎友香看護部長は、AI導入の意義を「記録業務にかかる時間を減らすことで働き方改革に加え、患者さんと接する時間に多く充てられるため、より質の高いケアができる」と強調。また「こうしたシステムを導入することで、病院の魅力アップにつながる」と話し、看護師など将来的な人材確保に向け、期待感を示した。