菓子パンまわりのデザイン~レトロでかわいい各地の菓子パンたち~
子供の頃、健康志向の親の影響で、ほとんど菓子パンを食べたことがなかった。中学生になると学校の購買で菓子パンを買う機会に恵まれるようになったが、要領が悪かったため、買えるのは残った甘食ばかりであった(もちろん甘食に罪はない)。
その土地ならではの菓子パンもある
大人になり、自分のお金で自由に食べ物が買えるようになった私は、幼少時の反動のように出先で菓子パンを買うようになっていた。
日本各地のスーパーには、もちろん大手メーカーの菓子パンも並んでいるが、そのご当地ならではのパンもある。これらのパンの多くは、昭和の時代から変わらないレトロなパッケージで、見ているだけでも楽しい。いつしか私は、こうした菓子パンをジャケ買いするようになっていった。
「菓子パン」と言っても、その種類はさまざまだ。チョコやクリームなどの入ったパンや、
メロンパン、
デニッシュ系のパン、
コッペパンなど多種多様である。
「トースト」型からほぼケーキと言ってもいいものまで
東北地方で多く見られるのが、食パンの中にクリームなどを挟んだ「トースト」型菓子パンだ。
本来「トースト」とは、食パンを軽くあぶった状態のことを指すのだと思うが、これらの「トースト」型菓子パンはだいたい生食パンが用いられている。「トースト」という名前にしたほうが、より食パン感が出ると考えてのネーミングなのかもしれない。
フカフカのパンの中にクリームを挟んだタイプのパンや、
それをロールしたパンなどは、「菓子パン」と「ケーキ」との境界線にいる存在である。
自ら「ケーキ」と名乗る「よしの屋製菓」(名古屋)の「ラインケーキ」や、
東京・池袋の『タカセ洋菓子』の「カジノ」「カステ」などは、ほぼケーキと言ってもいいだろうが、本人(?)たちが「菓子パン」と名乗っているので、菓子パンに分類される。いずれも昭和を感じさせる、レトロなデザインのパッケージだ。
良いデザインも受け継がれていってほしい
もちろん「菓子パン」は甘い系ばかりではない。「レトロなパッケージ」という観点から見ると、おかず系パンは少ないのであるが、
『つるやパン』(長浜)の「サラダパン」や「サンドウィッチ」などは、グッズも販売されるほどの良いデザインである。
今後、こうした良いデザインの菓子パンは少なくなっていくかもしれない。一方で、テレビ番組『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)で、有吉弘行氏が幼少期に食べた思い出のパンとして紹介していた「スペースアポロ」が復刻販売されるなど、レトロ菓子パンが脚光を浴びるケースもある。その味ばかりでなく、良いデザインもずっと受け継がれていってほしいと思う。
イラスト・文・写真=オギリマサホ
オギリマサホ
イラストレータ―
1976年東京生まれ。シュールな人物画を中心に雑誌や書籍で活動する。趣味は特に目的を定めない街歩き。著書に『半径3メートルの倫理』(産業編集センター)、『斜め下からカープ論』(文春文庫)。