「カラダだけの関係」から恋人に…付き合いだした女性の足を引っ張ったモノとは
会って寝るだけの、いわゆるカラダだけの関係でも、そこからお互いに好きになって恋愛関係のお付き合いに進めたら幸せですよね。
「恋人」の立場になると、以前より関係は安定するのが理想ですが、その「以前のつながり」に足を引っ張られることもあります。
スキンシップのない「普通の関係」ではなかったからこそ、関係が変わった後で生まれる葛藤は、どう乗り越えるのがいいのでしょうか。
「恋人」になれたけれど
和佳子さん(仮名/32歳)は、マッチングアプリで知り合いカラダだけの関係を持っていた年下の男性とお付き合いをしていました。
「最初は、恋愛感情のようなものはありませんでした」と話す和佳子さんは、男性のほうからアプローチを受けて交際を決めたそうです。
「体の相性がいいのはふたりとも実感して話していたのですが、普通に話していても楽しいというか、観た映画とか仕事のこととか、ベッドの上でずっとおしゃべりできるのが楽しくて。
ホテルを出るのが嫌だなと私も思ったのですが、『もっと一緒にいたい』と彼のほうから食事とかお茶に誘ってくれて、そのうち普通にデートを楽しんでいましたね」
「常にスキンシップあり」のデートなら盛り上がるのは当然で、お互いの好意を確認したふたりはカラダだけの関係から恋人へとすぐ進んだそうです。
「ちゃんとお付き合いするとなってから、気持ちが大きく変わりました。
恋愛感情で『好き』と思うとベッドでの時間も前よりずっと楽しくなって、終わってからご飯を作ったり映画を観たり、お泊りしても嫌なことはありませんでしたね」
彼氏のほうは「こんなことがあるんだね」と、マッチングアプリの出会いから女性を好きになったのは初めてだったそうです。
ふたりの交際は順調だと思っていた和佳子さんでしたが、あることがきっかけで彼氏との仲が不安定になっていきます。
彼氏に感じる違和感
「私の部屋にいるとき、彼のスマホにマッチングアプリが残ったままであることを見てしまって。
『何で消さないの?』と言ったら『忘れていた』と返すのですが、それでも削除しないのが気になりました」
「今はもちろんやってないよ」と彼氏は言いますが、それならどうして残しているのか、お付き合いが始まってすぐにアプリを削除していた和佳子さんは違和感を覚えます。
「勝手にログインしたら痕跡が残るし、もう一度アプリをダウンロードして彼のプロフィールを探ろうかなとまで考えました」
恋人になったのなら、出会い系のようなアプリは削除するのが当たり前と思っていた和佳子さんは、そうではない彼氏の気持ちが不安だったそうです。
それでも、一緒にいるときにスマートフォンを触ることをしない、和佳子さんに操作を見られることも気にしない、何より「好きだ」と言ってくれる彼氏の姿を、和佳子さんは信用していました。
ですが、やっぱりアプリを残したままであることが気になり、あるとき思い切って「削除してほしい」と彼氏にお願いします。
「『俺を信用してくれないの?』と言われました。
そうじゃなくて、彼女としてそういうアプリが彼氏のスマホにあるのは気になるからって、素直に伝えたのですが……」
客観的に見れば、出会いがそれでなくても、交際中の恋人のスマートフォンにマッチングアプリがあれば、嫌な気持ちになるのは当然です。
和佳子さんはこう話したそうですが、彼氏のほうは「和佳子と出会ったものだから、記念に置いているだけ」「ずっと使っていたから、消すのがもったいなくて」と以前と違う言い訳を出してきました。
それを信じそうになるのは、先に書いたように彼氏が自分に愛情を向けているのを感じているからで、「休日も夜までずっと一緒にいる」現実を見れば、浮気をしているような不安はありません。
ただ、「ほかのことでは、私が嫌がったらちゃんと話し合ってやめてくれる人」であることが、かえってこの「抵抗」への違和感を深くしていました。
何を信じるべきなのか
「ふたりが出会った記念」と言ってアプリをスマートフォンに残し続ける彼氏について、和佳子さんは友人に相談します。
「彼を信じたいけれど、普通に考えたらやっぱりおかしいよねと思って、人の意見が聞きたかったです」
と話す和佳子さんは、友人から「いくら出会いがそれでも、彼女が嫌と言ったら削除するのが当たり前だと思う。和佳子はすぐ消しているのに自分は残すのって、フェアじゃないよね」と言われ、落ち込んだそうです。
「もう使っていないから」と繰り返す彼氏への違和感は、恋人関係になったのだからもう不要、と彼氏に話すことなくアプリを削除した自分とは違うから。
一方で、「でも、それだけ仲良しで浮気している感じもないなら、本当に記念で置いているだけなのかもね」と首を傾げる友人の言葉も、「気にする必要はない」と思える材料でした。
「いっそ、ふたりでアプリを開いて楽しんでみれば?」と友人は提案しますが、「それは悪趣味だし、やっていいことじゃないですよね」と、和佳子さんは前向きにはなれませんでした。
「自分たちはこういう出会いだったから、普通に付き合っているカップルとは違うかもね」と彼氏が言うときがあり、それもアプリを残すことへの言い訳なのか、
「じゃあ、普通じゃない私たちっていったい何なのと、ひとりになると考えていました」
と、すっきりしない気持ちを和佳子さんは抱え続けます。
理解できないこと
ふたりの別れが決定的になったのは、和佳子さんがマッチングアプリを「開いてもいい?」と尋ねたときでした。
「『今は使っていない』という彼の言葉は本当だと信じていたので、ログインの履歴を見ても大丈夫だろうと思っていました」
その頃は、彼氏がアプリを残し続けることについて、受け入れていこうと思っていた和佳子さん。
だからこそ安心の証明がほしくてログインを要求したそうですが、彼氏からの言葉は
「そこまでするなんて、やっぱり俺のことを信用していないんだね」
と、拒否されたそうです。
「そうじゃなくて、本当に使っていないのならマイページを見せられるでしょ?」と返す和佳子さんに、
「いくらこれがきっかけだったとしても、そこまで見られるのは嫌だ」
ときっぱり断る彼氏を見て、「あ、これは私に隠れてログインしているな」と、和佳子さんは直感で思ったそうです。
「浮気をしているような感じはなかったのですか?」と質問すると、すぐに「それはなかったです」と返す和佳子さんですが、
「たぶん誰かと会うつもりはなくて、女性のプロフィールをチェックするとか掲示板を読むとか、見ていただけだったのかもしれません。
でも、やっぱりそれを手放すことはできないのだなと実感したら、何だか虚しくなってしまって」
と、これ以上付き合っていくのは難しいと感じたそうです。
「本当にやましくなければ見せられるはず」と言う和佳子さんは、「彼女にそこまで疑われたら、いい気はしない」とスマートフォンを渡そうとしない彼氏に「削除しないのであれば別れる」と告げ、その日は終わります。
「彼の気持ちが理解できなかったですね。
結局、アプリが好きな人って誰かと付き合っても刺激をほしがるのかもなと、正直に削除した自分が馬鹿みたいでした」
「誠実さ」の証明
その後、彼氏からは「アプリは消すからやり直したい」とLINEでメッセージが送られてきたそうですが、「こんなことでここまでこじれたのがもう嫌になっていて、彼のことはまだ好きだったけれどもういいと思いました」と、和佳子さんは別れを決めます。
本当に削除したところで「隠れて何をするかわからない」という不安は消えず、戻ったところでいずれ終わっただろうと、和佳子さんは思っています。
彼氏が口にする、「出会いのきっかけを残したい気持ち」が本当なら、アプリが載っている画面やふたりがやり取りしたメッセージをスクリーンショットで残すなど、いくらでも方法はありますよね。
どんな言い訳をしても、まともなお付き合いに発展した時点で「もう必要はない」とアプリを削除した和佳子さんの気持ちとはまったく違っているわけで、嫌がっているのにまだ残す様子に、誠実さはないと感じました。
一緒にログインするのを断固拒否するのも使っていることを勘ぐる理由で、たとえ目の前で削除されたとしても、「フォルダとかに入れて隠されたらもうお手上げです」と話す和佳子さんの言う通り、彼氏を信用するのは難しいのが現実です。
ふたりの関係に誠意を持って向き合っているのなら、すでにそれを使っていない彼女が「やめてほしい」と言うのなら、自分もすぐに削除するのではないでしょうか。
一緒にいるときに愛情を感じるのは確かで浮気の兆候はなかったとしても、その姿ひとつで愛情と信用を失うのは、それだけで誠実さがないと思うからです。
「体も性格も相性はよかったので、もったいないとは思うのですが、完全に信用できない時点でストレスがあるので私は無理でした」
和佳子さんは、自分を大切にするために別れを決めました。
どんなきっかけで交際まで発展したにせよ、大事にするべきなのはそれまでのつながりではなく、今のふたりの関係です。
本当に後ろめたいことはないとしても、現在の相手が嫌がることなら、きちんと話し合って解決を探すのが、誠意といえます。
自分だけが納得できる言い訳を押し付けるのではなく、これからのふたりを大切にできる人が、幸せな交際が叶うのですね。
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特にカラダだけの関係のように通常の出会いから外れるきっかけは、恋愛関係になれた後にこそ、互いに信用できる姿を見せ合うことが重要と感じます。
相手が抱える不安は確かに相手の問題ではありますが、それを生んでいるのが自分だとしたら、正しく向き合うのが愛情ではないでしょうか。
どんな始まりであれ、不安や心配をともに乗り越える姿勢を持てる人と長く安定した関係は続くことを、忘れてはいけません。
(mimot.(ミモット)/弘田 香)