開発現場の精神的な「余裕」「余白」をつくるためにPMOは存在する【連載Vol.6】
エンジニア時代に知りたかった「開発現場の難所」突破のコツ
私の連載を読んでくださっているみなさんの中には、PLやPMを「目指すべきキャリア」としている方も多いと思います。PLもPMもプロジェクトを進めていくには必要不可欠な役割です。
しかし、私はキャリアのもう一つの選択肢として、PMOをお勧めしたいと思っています。私がそう思う理由として、今回はPMOの魅力や果たすべき役割をお伝えしていきます。
株式会社office Root(オフィスルート)
代表取締役社長
甲州 潤(こうしゅうじゅん)
国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画し、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動を開始し、多数プロジェクトを成功へ導く。企業との協業も増加し、2020年に法人化。さまざまな企業課題と向き合う日々。著書『DX時代の最強PMOになる方法』(ビジネス教育出版社)
目次
扱う業務領域が一気に広がるのがPMOの魅力PMを本来業務に集中させる。PMOは影の立役者視野を広げていくPMO的な発想は、エンジニアのキャリアにもプラス継続連載決定!書籍紹介
扱う業務領域が一気に広がるのがPMOの魅力
「PMOの魅力とは?」とエンジニアさんから問われたとき、私は「関わる業務の規模や幅が大きいこと。また、圧倒的な達成感ややりがいがあること」と話しています。
では具体的にはどういうことなのか。一つの例を挙げてお話ししてみます。
ある企業から「経理部内でのみ使う会計システムの刷新をしたいのだけど、甲州さん、PMOとして入ってくれる?」とお願いされました。三カ月間、主要メンバーやPMとともに刷新プロジェクトを進行。無事、このプロジェクトは成功することができました。
すると、その話を聞いた別部署のマネージャーからこんな風に声をかけられました。
「甲州さん、実は社内に経理部と営業部が使っているシステムがあってさ、今度はそっちのシステム刷新もしたいんだけど……」
経理部での実績が、今度は別プロジェクトを呼び込むきっかけになったのです。
経理部と営業部が使うシステム刷新も無事に成功。すると今度は、「甲州さん、実はね、生産部のシステムが……」と声がかかり……。
このように、PMOは一つのプロジェクトに関わると、次々と他のプロジェクトにも呼ばれるようになります。それはなぜか。PMOは、社内に属する社員や人間関係をはじめ、企業にある課題を深く理解し、解決に導いてくれるという圧倒的な信頼感を得ているからです。
会社サイドから見るとPMOは、「社内のシステムや仕組みを良くわかってくれている心強い味方」。そういったポジションで仕事をするのは当然責任も大きいですが、その分、やりがいも大きいのです。
いろいろなプロジェクトに入り、社内に存在する課題を一つずつ解決することで、PMOは社内全体を横断的に見るとともに、信頼を積み上げていきます。
すると最終的には、経営企画部や社長直下で動くような大規模プロジェクトを任せられる機会にも恵まれるのです。実際、私もいくつもの会社でこのようなプロジェクトに参画させていただきました。
何より、さまざまな規模のプロジェクトを経験していくと、PMOとしてのスキルが磨かれ、どんなプロジェクトが来ても対応できるようになります。つまりそれは、「どこに行っても重宝がられる人材になれる」ことを意味しているのです。
PMを本来業務に集中させる。PMOは影の立役者
PMOの素晴らしい魅力を前述しましたが、実際のプロジェクトにおけるPMOは、特段華々しい活躍はしません。「PMをサポートするポジション」として、どちらかと言えば「影の立役者」的な行動をします。
プロジェクト成功の一つのカギは「PMが本来業務に集中できること」です。PMの本来業務とは、プロジェクトの方針を決めたり、それに伴い目標達成に必要なタスク、不要なタスクを考えたりすること。
つまり、それ以外のスケジュール管理や課題管理、さらにはメンバーやリスクのマネジメントは本来業務ではないのです。これらをPMOが担うことで、PM自身は予定通り自分のタスクを進めることができるのです。
「甲州さんと仕事をすると、精神的に楽だし、すごく助かる」。
これは、あるPMさんから直接言われた言葉です。みなさんもご経験があると思いますが、精神的に余裕があるとすごく良いパフォーマンスを発揮できませんか?
まさにPMOは、PMや他のメンバーの精神的な「余裕」や「余白」をつくるために存在していると私は考えています。
目に見える形で、物理的な時間を確保できることで余白が生まれ、目に見えない形で、精神的な余裕をもつことで高いパフォーマンスを出すことができます。
視野を広げていくPMO的な発想は、エンジニアのキャリアにもプラス
「アプリを開発したい」「システム構築をするのが楽しい」と、エンジニアの業務に熱意を持って取り組んでいる方もいらっしゃるでしょう。そうしてエンジニアとしてのキャリアを積むのももちろん、大事なことです。
しかし、そのシステム構築を「なぜ」しなければならないのかと考えてみたとき、その原因はそもそもの仕組みや経営課題にある場合が多いのです。
そうした根本的な原因を知った上でシステムをつくるのと、そうでないのとでは、キャリアにおいて大きな差がつくでしょう。
もし、みなさんが「もっと大きな仕事にチャレンジしたい」「達成感ややりがいを持って働きたい」と望むのであれば、PMOをぜひ一つの選択肢に加えてみてください。
そうすればよりプロジェクトを俯瞰的にとらえることができ、「今何をすべきなのか」をより明確に把握できると思います。これはエンジニアとしても必要なスキルです。
さらには、PMOのスキルがあれば、業務という枠にとらわれずさまざまな「プロジェクト」を成功に導くことができるはずです。
例えば、自分の起業プロジェクト、趣味や興味のあるボランティア活動でも何でも構いません。「人あるところにプロジェクトあり」。PMOとしてプロジェクト進行スキルを発揮してほしいと思います。
それにもし、PMOをやってみて「やっぱり違うな」と思えば、エンジニアに戻ることもできます。ぜひPMOとしての経験も積んでみませんか。その第一歩を踏み出されることを心から応援しています!
継続連載決定!
全6回にわたり連載記事を書かせていただきましたが、大変うれしいことにご好評いただき、以下のように多くの方に読んでいただきました。
これまでお読みいただきました皆様、心より感謝申し上げます。
連載Vol.5『大型プロジェクトを成功させる五つのコツ』 5月の人気記事第5位
連載Vol.1『PMOになって分かった“開発現場の難所”突破法を発信』 1月の人気記事第4位
そして、この度、継続連載が決定いたしました!
次回の公開予定は 8月頃となる予定です。
通知ON&ブックマークをして楽しみにお待ちください。
今後も、みなさまのお役に立つ内容を発信できるように努力いたしますので、どうぞよろしくお願いします!
書籍紹介
『DX時代の最強PMOになる方法』
著:甲州潤
▼こんなエンジニアはぜひお読みください。
・今の仕事に不満を持っていて、現状を変えたいと思っている
・給料をアップしたい
・エンジニアとしての将来が不安だ
・キャリアアップをしたいが、何をしたらいいかわからない
・PMOに興味がある
・PMOとして仕事をしたい
【目次】
第1章 一番稼げるIT人材は誰か
第2章 これからはPMOが1プロジェクトに1人必要
第3章 SEとPMOの仕事は何が違うか
第4章 稼ぐPMOになる7つのステップ
第5章 優秀なPMOとダメなPMOの見抜き方
第6章 PMOが最低限押さえておきたいシステム知識とスキル
第7章 システムは言われた通りに作ってはいけない
第8章 どんな時代でも生き残れる実力をつけよう
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