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地域と歩み10周年 デイサービスセンター善(平田) 多機能型介護導入で在宅生活を全面支援

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 釜石市平田の「デイサービスセンター善」が開設から10周年を迎えた。合同会社ZEN PROJECT(前川寛代表)が運営する同施設は、2018年に三陸鉄道平田駅近くの現在地に移転新築後、「小規模多機能型居宅介護サービス」も導入。自宅で暮らす高齢者が必要とする支援を1カ所で継続的に受けられ、利用者とその家族の安心につながっている。当初から掲げる「その人らしく日常の延長で」との理念を貫きながら、時代の変化、利用者ニーズの多様化に対応したサービスで、同市の在宅高齢者の生活を支える。

 同施設は、平田災害公営住宅近くに建てられた震災復興支援のプレハブ建物を借り、2015年に開所した。要支援、要介護の在宅生活者を対象にデイサービス(通所介護)を提供していたが、それだけでは在宅生活の継続が困難となってくるケースを目の当たりにし、「通い」「宿泊」「訪問」のサービスを1カ所で提供可能な「小規模多機能型居宅介護」の事業申請を決意。開所1年半ながら市の公募に手を挙げ、認可を受けた。サービス拡大に伴い18年、現在地に木造2階建ての新施設を建設。前施設の約3.3倍の広さ(延べ床面積約500平方メートル)を確保した。

釜石市平田第3地割、三陸鉄道平田駅近くにある「デイサービスセンター善」


昼食前に手指を動かす体操でリラックス。おいしいご飯を楽しみに…


 提供するデイサービスは、要介護者対象の「地域密着型」、要支援の一歩手前から利用可能な「通所型サービスA」、「認知症対応型」の3種類。デイサービスだけで対応が難しくなった場合は「小規模多機能型居宅介護」への移行が可能。介護予防の段階から施設入所に至る前まで、可能な限り在宅生活を支える体制を整える。「比較的元気な段階から関わらせてもらうことで、身体や認知機能の低下を緩やかにできれば。利用者のフェーズが変わっても同じ場所、同じスタッフのケアにより、本人や家族は大きな安心感を得られる」と前川代表(48)。現在、デイサービスには95人、小規模多機能型には29人が利用登録する。

施設では毎日、利用者の様子を写真に収める。室内には10年の思い出が詰まったたくさんの写真が飾られる


昼食づくりを手伝ったり、読書をしたり、話に花を咲かせたり…。2階のテラス(写真右上)も居心地のいい場所


 利用者は好きなことをして1日を過ごす。入浴、読書、手芸、塗り絵、会話…。時間の使い方は人それぞれ。開所当初から変わらない自由な雰囲気が漂う。昨年5月から週2回、デイサービスを利用する女性(85)は昼食づくりをお手伝い。食材を切ったり、盛り付けをしたり。他の利用者との会話も楽しみの一つで、「知らないことを教えてもらえるし、皆さん、いい方ばかり。ストレスもない」とにっこり。施設に来る日は朝から「今日は何を着て行こうかな、誰と一緒になるかな、昼食のおかずは何かな…とウキウキ、ワクワク。生活にも張りが出る」と喜ぶ。

この日の昼食は赤魚の煮付け、たけのこご飯など。栄養バランスのとれた食事がうれしい


職員の笑顔も利用者を元気に…。室内は和やかな空気に包まれる


 同社は大只越町に居宅介護支援事業所も開設。ケアマネジャー(介護支援専門員)が利用者のケアプランを作成し、適切にサービスを受けられるよう調整している。ケアマネ有資格者は5人。開所時7人だった職員は33人にまで増えた。18年に入社した介護士の鈴木歩美さん(30)は「最初は拒否反応がある方も積極的にコミュニケーションを取るうちに信頼関係ができたり、家に閉じこもりがちだった方がここに来ることが楽しみになったり。そういう変化が仕事のやりがいにつながっている」と実感。利用者から教わることも多く、「さまざまな経験をされてきた人生の大先輩」と敬う。

利用者は人生経験豊富な皆さん。若い職員らは学びが多いという


施設を運営する合同会社ZEN PROJECTの前川寛代表


 前川代表は大槌町出身、在住。2011年の震災津波で祖父母を亡くした。「いつ何が起こるか分からない。その人らしく人生を生き切る手助けがしたい-」。長く携わってきたデイサービス事業での独立を決意。釜石市で開かれていた人材育成道場「未来創造塾」で半年間学び、起業にこぎ着けた。施設開所から10年。この間、事業拡大、新施設の整備、コロナ禍など数々の山を乗り越えながら、思い描く理想の介護を追い求めてきた。

 目指すのは「施設のルールにはめるのではなく、利用者それぞれの立場に立ったサービス」。団塊の世代全員が後期高齢者となる“2025年問題”を見据え、もの言う高齢者にも満足してもらえるようなサービス、空間提供を心がけてきた。介護保険制度の浸透もあり、この10年で利用者層にも変化が。「60、70代が増えた。若年性認知症(64歳以下)の方も割合的には多い。早くサービスを受けようとする人が一般的になってきている」と前川代表。

 6月8日、施設駐車場で10周年記念イベントを開いた。地区の生活応援センターや小学校にもチラシを配り、来場を呼び掛けた。会場内には飲食ブースや子ども向けコーナーを設置。地元平田の虎舞や神楽、前川代表ゆかりの大槌町吉里吉里の神楽なども披露され、大勢の来場者でにぎわった。「地域密着」も事業理念に掲げる同社。現在地に移ってからはコロナ禍で地域との交流が難しい時期が続いたため、今回は施設の存在を広く知ってもらう機会にもなった。

10周年記念イベントで「恵比寿舞」を披露した平田神楽。利用者らと記念写真も


前川代表の地元から吉里吉里大神楽(大槌町)もお祝いに駆け付けた


豚汁や飲み物などは無料でお振る舞い。ボーイスカウトは子ども向けの遊びも提供した


 イベントをひときわ盛り上げたのは、開所当初からの職員鹿野正治さん(66)。“尚玉泉”の名で各地のイベントに引っ張りだこの女形舞踊の名手で、この日も多くのファンを楽しませた。調理師免許を持ち、普段は利用者の食事づくりでも力を発揮する。「10年か…あっという間。早いね」。利用者とのたくさんの思い出をまぶたに浮かべ、「みんなに助けられていると実感する」。施設規模の拡大で、より細かい対応が難しくなった側面はあるものの、若い職員には「『今日一日、楽しかった』と思ってもらえるようなお世話を。利用者一人一人の存在をしっかり認識し、あいさつから始まって必ず声を掛けることが必要」と思いを伝える。

あでやかな踊りで10周年を祝う職員の鹿野正治(尚玉泉)さん。施設では食事づくりを含む介護の仕事で奮闘する


幅広い年代の来場があった10周年記念イベント。地域との絆を強めた


 「会社設立時の気持ちを忘れずに。もう一度初心に立ち返って―」。10年の節目に誓いを新たにする前川代表。65歳以上の4人に1人が認知症またはその予備軍(軽度認知障害)とされる時代。「症状を正しく理解し、手を差し伸べられるまち」の実現を願い、「介護という枠にとらわれず、常にチャレンジし続けたい」と超高齢社会のより良い未来を模索する。

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