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【ピエール瀧が行く ファンキー!公園】荒川区「旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設」で下水処理のいろはを学ぶ〈後編〉

さんたつ

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ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」!今回も、前編に引き続き東京都荒川区の『旧三河島汚水処分場喞筒場施設』からお届けします。

旧三河島汚水処分場喞筒場施設(きゅうみかわじまおすいしょぶんじょうポンプじょうしせつ)

ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。
近著は『ピエール瀧の23区23時 2020-2022』(産業編集センター)。

怪しい雰囲気の地下へ潜入

案内人 さて、これから施設の地下に降りて行きますので、安全のためにみなさんこちらのヘルメットをつけてください。

了解です。うわ、みんなヘルメットよく入ったね、俺ちょっと浮いちゃってるわ(笑)。

案内人 こちらの階段から降ります。さっきまで雨が降ってたので、足元が濡れています。気をつけてくださいね。

ホントだ、すごく滑る。ほほ~。でも地下に降りるとなんかひんやりするね。

案内人 ここからが喞筒井(ポンプせい)接続暗渠(あんきょ)になります。二系統に分かれて流入した汚水がここで合流して各ポンプに流入します。ここで汚泥を除去したりしていますね。

なるほど。でもこのスペース感だったら、大雨が来たら一瞬でいっぱいになっちゃいそうですよね。

案内人 そうですね。この足元のモルタルの蓋に穴がありますよね。これなんのためにあるのか分かりますか

う~ん……交換の時に蓋を持ち上げる用の穴?

案内人 実はこの穴がある方が、蓋がピタッと密着するんですよ。

そうなんですね。なんかさっきからプシュープシューって音が聞こえてますけど、これはなんの音ですか?

案内人 ポンプの音ですね。

そうなんですね。しかし、この地下道はホラー映画みたいな雰囲気だなあ。ゾンビとか異形の化け物とか出てきそう。

案内人 ここから撮った写真が、昔朝日新聞の夕刊に載りましたね。

じゃあ便乗して俺らもここで写真を撮ろう。

なんの写真なのかぱっと見わかんなくていいよね。しかもかなり無骨な作り。汚水気分で進んでいこう(笑)。

案内人 ここから先はより狭くなりますんで、気をつけてくださいね。

はい。なんだか雰囲気は昔の貨物船の内部って感じですね。しゃれっ気がゼロ。

案内人 これが喞筒井と言います。桶みたいな構造ですね。ここから汚水がポンプに吸い上げられます。我々がストローでジュースを飲むときをイメージしてみてください。ストローで飲み物を吸うと、ストロー内の空気が減少して真空状態が作られます。この働きを利用して、ジュースはストローを上ってきます。喞筒井も、この原理を利用しています。真空ポンプが別途あって、それを使って吸い上げていました。

なるほど、その方が少ない動力でやれますもんね。

案内人 そうですね。では地上の方に戻りましょうか。そういえば、最近ではこの地下道はコスプレの撮影会にもよく使われたりしてますね。

ああ、日本刀持ったりしてね(笑)。確かにそういう怪しい地下道のシーンを撮るには最適だろうな。で、ここからまたポンプ室に戻ると。

案内人 2階に昔の写真が展示されてますので、そちらもご覧ください。ここが建てられる前からの写真もあります。昔、この辺は全部湿地帯だったんですよ。

おお。この頃の東京というかこの辺の土地の写真ということですよね。大正時代なのに上から空撮で撮ってるのはどうやって撮ってたんですか?

案内人 米軍が撮影したものと聞いています。右上の隅が広くなってるじゃないですか。この土地を利用して、公園とか池とか野球場を作ったはずですね。

—— 瀧さん、千葉ロッテマリーンズお好きじゃないですか。マリーンズの前身に当たる大映オリオンズって、この辺に本拠地があったんですよ。

そうなの? 荒川区がホームってこと?

—— はい。住所としては南千住で「東京スタジアム」って名前でした。今はその跡地に総合スポーツセンターが立っていて、すぐそこですよ。もう当時の名残とかは何もないんですけど、一応軟式野球場とかもありますね。

へえ。それで俺たちが今いるのはこの辺か。ナイス情報ありがとう。

快適な暮らしのために年々進化する仕組み

案内人 では、また外を見てみましょうか。昔は処理した汚泥を運ぶトロッコもあったんです。この辺から川に向かってレールが敷かれてね。それで汚泥船っていうのがあって、その船に積んでから海の沖の方に捨てていたんです。

最後は人力でポイだったんですね。

案内人 今は環境に配慮して、全部焼却炉で燃やしています。

なるほど!しかしこんなところが大正時代から動いてたんですね。おそらく当時は相当異臭が漂ったでしょうね、この辺に住んでる人からしたら(笑)。

案内人 はい。それはもう夏場とかはみなさん大変だったみたいですよ。

—— 今は奥に見える新しい汚水処分場でやってますけど、全然臭わないですもんね。

ホントだよね。こういうインフラ、汚水処理なんてのはさ、近代文明にしてみたらほんと先っちょの方の話だろうから、まだまだ改善できる余地はあるんだろうな。

案内人 汚水はきれいにした後、再度川に戻す作業があるわけじゃないですか。そのための微生物を活発にする技術というのも、この100年でものすごく進化しましたね。

自然界に戻しても大丈夫な水のクオリティにっていうことですもんね。川から海に流れて、また雲になって雨が降ってと、そういう繰り返しなんですもんね。小学生が自由研究で来るには最適な施設だね、ここ。SDGsな見方を学ぶには最適だもんね。施設内のお庭というか、植物の手入れもきれいにされてるようだし。

案内人 桜やツツジの開花時期には、花見の会も催されたりするんですよ。年に一度、夜にロウソクを置いてキャンドルナイトをやったりいろいろイベントもやっています。コロナ禍で一回ストップしちゃったんですけどね。

それは雰囲気良さそうですね。このレンガ造りの建物とも調和が取れてるし。

案内人 ハクビシンが出没することもあったりして、管理は手間がかかるみたいなんですけどね。ということで、汚水処理施設の見学としては以上になります。最後、エアコンが効いた部屋でアンケートだけお答えいただけますか。おみやげにマンホールカードを差し上げますので。それでは気をつけてお帰りください。

マンホールカード!やった!本日は、どうもありがとうございました。

旧三河島汚水処分場喞筒場施設

下水度 ★★★★★
ホラー映画度 ★★★★☆
おみやげうれしい度 ★★★★☆

水飲み場:なし  トイレ:あり
自販機:なし  灰皿:なし

旧三河島汚水処分場喞筒場施設(きゅうみかわじまおすいしょぶんじょうポンプじょうしせつ)
住所:東京都荒川区荒川8-25-1/営業時間:9:00~16:00/定休日:火・金/アクセス:都電荒川線荒川二丁目停留場から徒歩3分

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2024年12月号より

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