クローン人間って実際につくれるの?【眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話】
クローン人間って実際につくれるの?
ヒトへの応用は倫理面の問題あり
1996年、イギリスでのクローン羊、ドリーの誕生は大きな話題になりました。ほ乳類でクローンに成功したということで、ヒトへの応用の期待も高まりました。しかし、優秀なヒトのクローンをつくることは優生思想につながりかねないうえ、安全面の不安もあり、各国は即座にクローン技術をヒトに用いることを禁止しました。
ドリーは6歳半で肺疾患にかかり、安楽死を迎えたことから、クローンは短命ではないかと疑われました。しかし、ドリーの一卵性クローン姉妹が健康長寿だったことから、短命説は一応否定されました。
クローン人間をつくることは、理論上は可能ですが、ヒトへの応用は安全面や倫理面の問題があります。子どもができない夫婦は、どちらかの体細胞を使って子どもをつくることができるかもしれませんが、クローン技術によって生まれてくる子どもが無事に成長できるかどうか、まだわかっていないことがたくさんあります。また、男女両性に関係なく子どもをつくることがいいのかどうか、難しい問題です。
ドリー以後、クローン技術は、食糧の安定供給を目的に家畜の増産に活用されたり、医薬品の製造や移植用の臓器作製への応用の研究も進んでいます。クローン技術の応用をどこまでとするか、各界での議論が求められます。
クローンのつくり方
ほ乳類のクローンは、受精後発生初期の細胞を使う方法(受精卵クローン)と、成体の体細胞を使う方法(体細胞クローン)がある。
クローン人間の問題点
自分とは違う
自分のクローンがつくられたとしても、別人のように感じる。胎児のときにどの遺伝子を有効にし、無効にしたのか、どんな環境で過ごしたかに影響され、違いが生じる。
病気になりやすい
健康上の問題をもつ可能性がある。これまでクローン化された動物は、脳や心臓、肝臓、また免疫系の問題があった。
自分と同じ経験が必要
自分とまったく同じクローンをつくるには、自分と同じ人生を経験させなければならない。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子