この夏 デビューしたバット、引退したバット。
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今日は野球のバットのお話。
実はこの夏、デビューしたバットと引退したバットがあったんですが、まずは引退したバットから。これは、ご存知。高校野球で使う金属バットの規格変更。これまで使っていたバットが公式戦では使えなくなって、引退することになりました。
廃棄バットを工業高校と農林高校のコラボで生まれ変わらせる!!
そのバットの山を、もったいないな、何かに生まれ変わらせないかな、と考えた人がいました。それが、沖縄県高校野球連盟の元会長で、県立嘉手納高校の校長だった、屋良淳先生。
DIYが趣味の屋良先生は、一人で廃棄バットの加工を始め、第一作はバットを輪切りにした、記念ボールホルダーを作りました。
(こちらが、廃棄バットを使ったアップサイクル品。 写真提供:屋良先生)
しかし、屋良先生、ある策を思い付きました。
沖縄県高校野球連盟の元会長 屋良淳先生
「職業柄、やはり教育に携わってますので、例えば高校生だと、工業高校には色んな加工の技術を高めるために、日頃、勉強してる子供たちがいて、機械があって。あ!工業高校の生徒たちの実習の一つというか、そういう風にもいけるかなということで、そこで何十本かのバットを加工して、花瓶のベースを作って、で、農林高校さんには、多肉植物を色んな種類、この大きさで作ってくれない?ってことをお願いして、コラボレーションして作ったセット、この売り上げで、新しいバットの購入の資金にしたり、熱中症対策とか色んなお金のかかることが必要とされてますので、そういったところに使わせてください!ということで、販売をして、一般の方にご購入いただきました。」
(こちらが高校生たちの作業風景 写真提供:屋良先生)
(それぞれの高校の特徴を活かしました! 写真提供:屋良先生)
県内の工業高校と農林高校のコラボで出来上がった「花瓶と多肉植物のセット」は130個。それを、野球部の春の大会が開催中の球場で販売しました。会場での販売も、また別の高校の生徒たちに担当してもらいました。
使い込んだバット、ロゴが薄れた廃棄バットの品が人気!?
この売上げを新しいバットの購入に・・・ということでしたが、さて、その結果やいかに。再び屋良先生のお話です。
沖縄県高校野球連盟の元会長 屋良淳先生
「130個、全部売れましたね。ノスタルジーで購入してくださる、野球やってたよ、という方ももちろんいらっしゃいますし、応援に来たんだっていうお母さま方が多かったです。で、バットの色んなメーカーさんありますけど、ロゴが結構綺麗なものもたくさんあったんですよ。そっちの方が先に売れるかなって思ってたら、実は結構使い込んだ感じの、少し傷があったり、ロゴの印刷がもう薄れてきちゃったりしてるような、使った感のあるモノが、これが良いんだよ!これって使い込んだ感じあるよね~って、そんな感じで買ってくださる方の方が多かったので、面白いって思ってくださったポイントはそこだったんだな~って。なんか、やって良かったなって思うのはそこですね。」
使い込んだバットだな~と分かる品の方が売れたんですね~!元高校球児も、今の球児の関係者も、高校野球ファンも、思い入れがありますからね。そこに、ドンピシャで届く結果となりました。
今回使った廃棄バットは70本、売り上げは14万くらいになりました。新しい規格のバットは、今までのバットよりも1万~1万5千円ほど高くなるそうで、この売上げから各校に新しいバットを届けることになります。(ちなみに、屋良先生は異動で、高校野球の現場からは離れてしまったので、今後はどうなるか?これとはまた別の廃棄バットの活かし方もあるかもしれないので、期待しながら応援していきたいと話していました。)
久しぶりに次世代の国産材のバットの材料、現る!!ダケカンバ!
さて、一方の、この夏デビューしたバットは、どんなバットなのでしょうか。新しいバットの素材を見出した、北海道立総合研究機構、林産試験場性能部の秋津裕志さんのお話です。
北海道立総合研究機構・林産試験場性能部・構造環境グループ専門研究員 秋津裕志さん
「白樺の仲間なんですけれども、ダケカンバという樹種を使ったバットで、硬くて強度があるということですね。それと、密度っていうんですけれども、単位当たりの重さですね、あまりにも重いと振り切れないし、軽すぎると折れやすくなってくるわけなんですね。それが、現在使われているバットと同じような重さであり、強度であるということなんですね。それと、今使われてるメープルというバットは、非常に硬い、弾くような感覚で、それと全く逆のアオダモですと、かなり柔らかくてしなるという性質がありまして、ダケカンバはちょうどその中間くらいの感覚で振れる、使えるというような特徴と言いますか、になりますね。」
ダケカンバは白樺の仲間で、ダケカンバも白樺もパルプ用のチップとしてしか使われない、あまり用途のない木でした。
しかし、秋津さんたちが、このダケカンバを調べたら、バットの材料として現在主流のメープルに近い素材だと分かったので、バットを作って性能を見てみることにしたのです。
(こちらがダケカンバのバット 写真提供:秋津さん)
ダケカンバのバット、社会人野球の日本製紙石巻のチームが、開発当初からモニターとして使ってくれていたのですが、ついに、この夏、社会人野球の都市対抗野球大会で、ダケカンバ全国デビューとなりました!!
(日本製紙石巻 野球部の選手たちとダケカンバのバット 写真提供:秋津さん)
国産材のバットと言えば、アオダモが有名ですが、人気のあまり、資源としてのアオダモが減ってしまい、今はほとんど輸入材を使ったバットになっていました。つまり、次世代の国産材バットとなる材料が、久しぶりに現れたのです。
モニターの選手たちからは好評!特にバットをうまく使ってヒットを量産するような選手からは自分の打ち方に合ってる!という声が届いています。
秋津さんは、使い道があまりないと言われてきたダケカンバが、今までになかった、国産材の輸出という扉も開いてくれたら、研究者も林業関係者も、もちろん選手たちにも、嬉しい未来につながるかも、と話していました。
使われなくなったモノ、使われていなかったモノを活かす技術のお話は、ワクワクしますし、未来が楽しみになりますね!両方ともこのまま引き続き、がんばってください!応援してます!!
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)