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『リロ&スティッチ』から読み解く、“届け方”のディズニー戦略

フクリパ

『リロ&スティッチ』から読み解く、“届け方”のディズニー戦略

6月6日(金)、実写映画『リロ&スティッチ』が全国公開されます。舞台はハワイ、主人公はちょっとワケありの少女と凶悪なエイリアン。けれど観終わった人が口を揃えて言うのは「泣いた」「家族に会いたくなった」「スティッチが欲しい!」というエモーショナルな声ばかり。ディズニーの手にかかると、破天荒な宇宙人すら“愛すべき存在”に見えてくるのです。今回、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 映画部門ゼネラルマネージャー佐藤英之氏に、フクリパが単独インタビューを実施。配給の現場で日々「届け方」を考え続けている立場から、『リロ&スティッチ』という作品の裏側、そして地方戦略や配給の進化まで伺いました。

佐藤英之氏:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 映画部門ゼネラルマネージャー。テレビ・映画業界にて長年コンテンツビジネスに携わり、現在は劇場公開作品の配給・劇場宣伝を統括。マーベル、ピクサー、スター・ウォーズなど幅広いスタジオを通じて、日本市場に“観たい映画”を届けている。

 

 

 

実写映画『リロ&スティッチ』は、大人こそ泣ける

「めちゃくちゃ泣けますよ」。佐藤氏がそう語る通り、公開前から試写を観た関係者の間では「とにかくエモい」「観たらスティッチのぬいぐるみを買いたくなる」などの声が続出。小さな子ども向けに見えて、実は大人に刺さる普遍的なテーマ──“血のつながらない家族”や“心が通じ合うプロセス”──が、本作にはしっかり込められています。

 

©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 

佐藤氏自身、「観終わったあと、自分の感情が想像以上に動いていて驚いた」と振り返ります。CGで描かれたスティッチはまるで“そこにいるかのよう”な存在感で動き、ぶっきらぼうな彼が徐々に家族になっていく展開に、思わず感情移入してしまうと話してくれました。

 

©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 

子どもと一緒に観て、終わったあとに少し話をしたくなる──そんな映画体験が待っています。

 

 

 

ディズニー配給が扱う“ブランド”の多さ

「ディズニーの映画部門が担当している作品は、ディズニー作品だけ」と思っている方、実はディズニー・ジャパンが配給しているのは、以下のように多岐にわたるブランドなんです。

 

・ディズニー・アニメーション

・ディズニー・ライブアクション

・ピクサー

・マーベル・スタジオ

・ルーカスフィルム(スター・ウォーズ)

・20世紀スタジオ

・サーチライト・ピクチャーズ

 

たとえばこの夏は、ピクサーの『星つなぎのエリオ』(8月1日公開)、マーベル・スタジオの『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(7月25日公開)、冬には『ズートピア2』や『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』(12月19日公開)と、まさに“総合エンタメ企業”としてのラインナップが揃います。

 

佐藤氏はこう話します。

「観た人が“次のアベンジャーズが分からなくなるから観るべき”と語れるような導線設計も、配給の役割の一つです」

 

マーベルやアバターといった世界的な作品は、ただの“シリーズもの”ではなく、「ファンがどう行動するのか」まで含めて設計されているのです。

 

 

 

「届け方」で映画は化ける──配給の真髄とは

映画を「作る側」と「届ける側」があるなら、佐藤氏は“後者”の最前線に立つ人物です。劇場での上映スケジュールを調整し、メディア露出を仕掛け、どのように“観たい映画”として認識してもらうかを考え続けています。

 

 

「映画館で観てもらうためには、その映画が“今、観たい”と思ってもらえるような“仕掛け”が必要」と語る佐藤氏。ディズニーでは、

・声優には、ローカル(地方)でも人気の俳優・タレントを起用

・吹替比率を上げ、ファミリー層が観やすく

・日本のポスターや予告編を、日本人の感性に合うよう独自編集

といったように、細部にわたって“観るための敷居”を下げています。

 

特に近年では、「洋画=字幕」という認識は変わりつつあり、『リロ&スティッチ』のような作品では最初から“吹替メイン”の展開を行っているとのこと。ビジネス的にも、顧客の“選びやすさ”に合わせた柔軟なローカライズが求められる時代なのです。

 

 

 

福岡でこそ響く、“濃いキャラクター”と“動物もの”

今回の取材は、佐藤氏が全国のメディアをまわるローカルプロモーションの一環として行われたもの。なかでも福岡は「映画ファンが多く、スクリーン数も増えている注目エリア」だといいます。

 

「九州の方は、濃いキャラクターものや動物モチーフの作品がよく動く印象があります。スティッチはまさに“どハマり”だと思います」と語る佐藤氏。地方都市においても、観客の嗜好や生活スタイルに合わせた戦略的アプローチがいま求められているのです。

 

そのひとつが、イオンシネマとの取り組み。全国の劇場でブランドごとの特大アートを展開し、ビジュアルでの接触を強化。福岡ではイオンシネマ筑紫野にて展示されているとのことです。

 

 

 

ストリーミング全盛の時代に、なぜ映画館なのか?

最後に、映画館で観る意味をあらためて問うと、佐藤氏はこう答えてくれました。

「2,000円で、2時間現実から離れて“没入”できる体験って、映画館くらいしかないんですよ」

 

家のテレビでは味わえないスケール感、スマホを手に取らずに没頭できる数少ない時間──“エンタメに集中できる場所”としての映画館は、ストリーミングと競合するのではなく、むしろ補完し合う関係を築くべきだと語ります。

 

「届け方」が問われる時代。作品の魅力をきちんと届けるために、“どこでどう観てもらうか”まで設計する──それがディズニーの配給戦略です。

 

エモーショナルで普遍的な物語を、大人も子どもも等しく楽しめるように。

 

©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 

この夏、映画館で“動くスティッチ”に会ってみてください。

 

 

 

実写映画『リロ&スティッチ』

©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 

公開日:2025年6月6日(金)

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

監督:ディーン・フライシャー・キャンプ

日本語吹替:声優陣による豪華キャスト(公式サイト参照)

公式サイト(作品ページ)
https://www.disney.co.jp/movie/lilo-stitch

全国の公開劇場はこちらから
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=lilostitch

 

 

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