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VOW WOW、14年ぶりの奇跡的再集結で見せ付けた唯一無二の魅力 2024.6.30 川崎クラブチッタ

YOUNG

1976年にメジャー・デビューを果たし、邦ロック黎明期を牽引するバンドの1つとして名を馳せたBOWWOW。結成以来不動のメンバーで活動していたが、1983年に斎藤光浩(g vo)が脱退することを受けて、彼らは人見元基(vo)と厚見玲衣(key)をメンバーに迎え入れ、1984年にVOW WOWとして新たなスタートを切った。始動と同時に大きな注目を集めたバンドは、後にイギリスを拠点にして全世界を舞台に活動を行ない、国内はもとより海外でも高い評価を得た。ハイ・クオリティなアルバムをコンスタントにリリースし、世界を股にかけて精力的に活動を行なったものの…VOW WOW は1990年に惜しまれながら解散してしまう。解散後の彼らは、2010年12月25日・26日にSHIBUYA-AXで<“ヴァウの総て All about VOW ”>と銘打った再結成ライヴを行なってはいるが、メンバーがバンド名を掲げて正式に一堂に会したのはその時限りで、以降フル・サイズのライヴが行なわれることはなかった。 しかし2024年、VOW WOWの1stアルバム『BEAT OF METAL MOTION』がリリース40周年を迎えること、そして前年に亡くなったBOWWOWとVOW WOWのドラマー新美俊宏の一周忌追悼を行ないたいという思いから、山本恭司(g vo)、人見元基、厚見玲衣の3人は再び集まることを決意。14年ぶりとなる再結成ライヴ<VOW WOW Beat of Metal Motion 発売40周年記念公演 〜新美俊宏 一周忌追悼〜>が、6月29日・30日に川崎クラブチッタで開催された。あのVOW WOWが再び…というニュースのインパクトは絶大で、チケットは両日共にわずか1分で完売。両日ともクラブチッタの場内は最後方までビッシリとオーディエンスで埋まる“ガチの満員御礼”となった。ここではそんな特別な公演の、2日目(6月30日)の模様をお伝えしよう。

ブランクを微塵も感じさせない健在ぶり

開演時間を迎えて場内に厚見玲衣による壮大なイントロダクションが流れ、ステージ前に降ろされていた幕が上がると、ステージ上にはメンバーが並び立っていた。客席から大歓声と熱烈な拍手が沸き起こる中、人見、山本、厚見によるVOW WOWならではの分厚い三声コーラスが場内に響き、ライヴは「Beat Of Metal Motion」でスタートした。ステージ中央に力強く立ち、超絶なハイ・トーンを織り交ぜたブルージーな歌声を聴かせる人見。しなやかにステージングを行ないながら、スリリングなギター・ソロを奏でる山本。ステージ下手に組まれた要塞のようなキーボード・セットに負けることのない存在感を発しながら、煌びやかな音色で楽曲を彩る厚見。そして、スケールの大きなグルーヴを生み出すサポート・メンバーの永井敏己(b)と岡本郭男(dr)。うーん、凄い……。筆者は仕事柄、様々なライヴを拝見させてもらっているが、VOW WOWの重厚さとキレの良さを併せ持ったサウンドの迫力は桁外れで、始まった瞬間から強い衝撃を受けた。

「We Are VOW WOW! 久しぶりだぜ。前回は2010年くらいですか? だいたい十何年に1回しかやらない(笑)。今回はね、ドラマーの新美の一周忌、そして『BEAT OF METAL MOTION』の発表40周年ということで…」人見によるそんな感慨深いMCを挟んだ後は、様々な曲が続けて披露されていく。躍動感にあふれた「Siren Song」や、スタイリッシュ&エモーショナルな「I Feel The Power」、大陸的なノリを打ち出した「Rock Me Now」…など、1曲ごとに表情を変える起伏に富んだ流れが絶妙で、上質な轟音が全身に心地いい。何よりメンバーたちの健在ぶりは驚異的で、14年という長期間のブランクを微塵も感じさせないどころか、それぞれがより進化していることが分かる。同窓会のような和やかな雰囲気などは皆無で、“ビシッ!”としたステージングを行なう彼らに感服せずにいられなかった。

「昨日、6月29日はね、新美の誕生日だったの。次の曲はみなさん新美のこととか、色々思い出して聴いてもらえたら嬉しいです」…そんな山本の言葉と共に届けられたバラード「I’ve Thrown It All Away」でオーディエンスをより深く惹き込んだ後、人見が一度ステージから去り、山本と厚見両名によるセクションへ。ここではノスタルジックな「I’m Gonna Sing The Blues」や、山本がアコースティックを弾きながらエモーショナルなヴォーカルも聴かせる「I’ll Wait A Lifetime」、厚見が彼ならではの情熱的な歌声を披露する「Somewhere In The Night」など、フル・バンドとはまた違った味わいで観客を魅了する。2人だけのパートを設けたのはおそらく人見の喉を考慮したためだろうが、結果的にこのセクションは非常に効果的なチェンジ・オブ・ペースになっていた。そしてVOW WOWの奥深さを味わえるという意味でも大正解だったように思う。

「VOW WOWという奇跡を続けていくべきなんじゃないかな」

人見が再びステージに姿を現したライヴ中盤では、アッパー&ゴージャスな「Don’t Tell Me Lies」、力強さと洗練感を併せ持った「Don’t Leave Me Now」、オリエンタルな翳りが香る「Mountain Top」など、また別の様々な曲調で楽しませてくれる。今回のライヴを観て筆者が感じたのは、VOW WOWの楽曲は’80年代に作られたものでありながら、古びた印象が全くないことだ。それは当時の彼らが時代性などに捉われることなく、独創的で、なおかつ時代を超える普遍性を持った音楽を生み出していたことの証といえる。その結果、VOW WOWは時を経ても色褪せることのない存在になったということを、あらためて感じさせられた。

そんな風に終始良い雰囲気で進んでいったライヴは終盤へ突入し、華やかな高揚感を湛えた「You’re The One For Me」、パワフルなシャッフル・チューン「Nightless City」、緊迫感とキャッチーさを巧みに融合させた「Hurricane」と畳みかけるように演奏される。ステージを行き来しながらエネルギッシュに演奏を繰り広げるメンバーたちの姿、そして爽快感みなぎるサウンドの応酬にオーディエンスのヴォルテージはさらに高まり、「Shot In The Dark」でとてつもない大合唱を沸き起こしながら本編を締め括った。

オーディエンスのアンコールを求める熱烈な声に応えてステージに戻ったVOW WOWは、深みのある世界観や山本の奏でる長尺のアドリブ・ソロなどをフィーチュアした「Shock Waves」で再び感動を引き起こす。それに続いたラスト曲は何と、現在も山本とBOWWOW G2で活動を共にする斎藤光浩をゲストに加えた編成での「Summertime Blues」だ。最後まで全くパワー・ダウンすることなく圧倒的な歌声を聴かせる人見、そして山本/厚見/斎藤による凄まじいソロ回しに、客席からは何度となく大歓声が上がった。

爽やかな余韻を残しながら、2日間に渡る14年ぶりの再結成ライヴでそのミュージシャンシップの高さを遺憾なく見せつけたVOW WOW。今回こうして観覧する機会を得て、変わらぬハイ・レベルな演奏、そして年齢などを全く感じさせないエネルギッシュな姿に筆者は深い感銘を受けた。メンバー同士が火花を散らすかのようなヒリヒリした往年の空気感とはひと味異なり(もちろんそれも大きな魅力だったが)、自分たちが生み出したこのバンドの音楽を演奏することを楽しむと共に、最良の形で届けたいという思いが伝わってきたのも実に良かった。現在もVOW WOWは群を抜いた魅力を備えていることが分かっただけに、ライヴ中のMCにて語られた「VOW WOWという奇跡を続けていくべきなんじゃないかな」という山本の言葉の通り、今後も定期的にライヴを行なってくれることを願うし、それこそ海外公演も実現させてほしいと思わずにいられない。まずは2025年1月8日・9日に東京ドームシティホールで開催されることになった追加公演を、楽しみに待ちたい。

VOW WOW Beat of Metal Motion 発売40周年記念公演 〜新美俊宏 一周忌追悼〜 2024.6.30 川崎クラブチッタ セットリスト

1. Beat Of Metal Motion(1984年『BEAT OF METAL MOTION』収録) 2. Siren Song(1985年『CYCLONE』収録) 3. Break Down(1984年『BEAT OF METAL MOTION』収録) 4. I Feel The Power(1988年『VIBe』収録) 5. Too Late To Turn Back(1984年『BEAT OF METAL MOTION』収録) 6. Rock Me Now(1988年『VIBe』収録) 7. Helter Skelter(1988年『VIBe』収録) 8. I’ve Thrown It All Away(1990年『MOUNTAIN TOP』収録) 9. I’m Gonna Sing The Blues[山本恭司&厚見玲衣](1990年『MOUNTAIN TOP』収録) 10. Cry No More[山本恭司&厚見玲衣](1987年『V』収録) 11. I’ll Wait A Lifetime[山本恭司&厚見玲衣](山本恭司/1982年『ELECTRIC CINEMA』収録) 12. Somewhere In The Night[山本恭司&厚見玲衣](1987年『V』収録) 13. Don’t Tell Me Lies(1987年『V』収録) 14. Don’t Leave Me Now(1987年『V』収録) 15. Mountain Top(1990年『MOUNTAIN TOP』収録) 16. Pains Of Love(1986年『III』収録) 17. You’re The One For Me(1988年『VIBe』収録) 18. Nightless City(1986年『III』収録) 19. Hurricane(1985年『CYCLONE』収録) 20. Shot In The Dark(1986年『III』収録) [encore] 21. Shock Waves(1986年『III』収録) 22. Summertime Blues[with 斉藤光浩]

(レポート●村上孝之 Takayuki Murakami 撮影●森島興一 Koichi Morishima)

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