長浜で生まれる、和楽器の音を紡ぐ弦
【長浜市木之本】
ピンと張られた黄色い線。
これは、日本古来の和楽器、お琴の弦。
滋賀県長浜市木之本町には、
日本で唯一、機械を使わない伝統技法で
琴線を作る会社がります。
それが、丸三ハシモトです。
養蚕の里、長浜市木之本
賤ヶ岳(しずがたけ)のふもとから湧き出る良質な水に恵まれたこの土地では、
滋賀県の北部に位置する長浜市木之本町。
戦国時代の合戦地・賤ヶ岳で有名なこの地では、
良質な水が湧き出ることもあり、昔から養蚕が盛んでした。
繭から生まれる絹糸は、
強さとしなやかさをあわせ持ちます。
そんな特性を活かし、
この地域では、和楽器の弦づくりが根付いていきます。
中でも、大音(おおと)地区では、
生糸をそのまま引き出す「生挽き」の技法が伝わります。
これは、強い弦を作るために
欠かせない技術でした。
伝統を紡ぐ日本の音
丸三ハシモトは、明治41年(1908年)に創業。
お琴や三味線の弦を作り続け、
今では400種類以上の弦を手がけるようになりました。
特に、文楽の義太夫三味線では、
プロ向けの弦のほぼすべてを供給しています。
一本の弦を仕上げるまでには、
熟練の職人による繊細な作業が必要です。
絹糸を束ね、撚りをかける。
指先の感覚だけを頼りに、
強さと柔らかさのバランスを調整していきます。
地域の文化を残していく
かつて、日本中で作られていた絹の弦。
でも、今では化学繊維が主流になり、
作り手は、わずか数軒になりました。
それでも丸三ハシモトは、
昔ながらの製法を守り続けています。
「生の音」には、人の手で作られたからこその温かみがある。
絹だからこそ出せる、やわらかく、深みのある音。
それを未来へつなぐために、伝統の技は今も受け継がれています。
(文・しがトコ編集部)
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