【中学受験】「社会」地理・歴史の忘れない勉強法を解説
教育ジャーナリスト・佐野倫子さんによる「中学受験伴走」連載。中学受験専門塾「ジーニアス」代表・松本亘正先生に「社会を得意にする勉強法」を取材。今回は受験勉強が本格化する4・5年生の地理・歴史の勉強法について(全3回の2回目)。
入塾者殺到! 中学受験専門塾「ジーニアス」代表・松本亘正先生教育ジャーナリスト・佐野倫子です。「中学受験伴走(サポート)」連載、今回は社会の勉強法について。大手中学受験塾では4年生で地理、5年生で歴史と再び地理、そして公民を学びます。土台をつくる、とても重要な時期です。
でも、同じ社会でも全分野が得意という子は案外少なく、また次々と新しいことを学ぶので、取りこぼしてしまうということも。そこで確実に社会が身に着く学習法を中学受験専門塾「ジーニアス」の代表であり、社会科講師の松本亘正先生にお聞きしました。
4年生で集中すべきは「地理」 納得の理由とは?
──多くの中学受験塾が、まず地理を一通り学んだあとに歴史を学ぶという順番ですが、理由はあるのでしょうか?
松本亘正先生(以下松本先生):歴史を学ぶ上で、地理の素養はとても大切です。地名が多くでますし、気候や文化、特産物も関わってきます。まず日本のことについてしっかり学んでから歴史を勉強するほうが身につくことが多いですね。
──それでは、暗記が得意じゃないというお子さんの場合、4年生のうちから先取りして歴史を学ぶというのは非効率的ですか?
松本先生:基本的に地理を授業で学んでいる間は、それに集中していいと思います。何なら4年生の間は、歴史は漫画や本で興味を持つくらいでも十分ですよ。
一通り地理を学んだあとならば、できる範囲で歴史の先取りの勉強も悪くないかもしれません。授業よりも先に教科書や参考書を読む、という程度でも効果があります。
社会という科目は、知識がベースですから、単純に「知っている」ということがアドバンテージになります。予習するデメリットはさほどないですね。
ただ、大切なことは授業で習ったことの基礎を確実に身につけていくことですね。
学んでもどの子もある程度は一度忘れる!?
──暗記という観点で考えると、せっかく習っても忘れてしまうことが懸念です。4年生で習った細かいことは6年生まで覚えていられるのでしょうか?
松本先生:ご安心ください、どの子もある程度は忘れてしまいますから(笑)。だからこそ、前回でもお話ししましたが、できるだけ体験や実感に紐づいていると強いのです。
覚え方としては、「これは絶対に必要」なキーワードをに絞って繰り返ししっかり覚えることが大事です。一番良くないのは、とにかく適当に大量の宿題を終わらせることだけを考えて雑にやってしまうこと。それだと結局何も残りません。
もちろん演習に慣れることは大切ですが、それは6年生になってからでも間に合います。まず4・5年生は、基礎を必ず押さえるようにしましょう。
基礎問題ばかりでは上位層と差がつく気がするけれど…
──4・5年生のうちは宿題や演習の量と、子どものキャパシティーをよく見ることが重要ですね。とは言え基礎問題ばかりやっていると上位と差がついてしまうのでは!? というのも親としては気になるところです……。
松本先生:「上位の子は演習量も多いから、差が広がるのでは?」というご懸念ですよね。
もし、社会があまり得意ではないお子さんでしたら、他の科目に目を向けるようにしましょう。4科目のうち、どれか1科目だけは難しい問題にも挑戦する。そうすればお子さんも「算数はがんばっている!」と自己肯定感が上がります。
苦手な科目を無理に家庭学習量だけで攻略しようと思わずに、バランスや得意不得意で考えるのがいいと思います。
松本先生:大切なことは、4・5年生の間はとにかく6年生につながる勉強を意識すること。その場しのぎではなくて、じっくりと基礎を反復して、着実に勉強していくという姿勢が後からものを言います。
──焦りは禁物ということですね。では社会が得意なお子さんが取り入れるべき勉強法はありますか?
松本先生:基本は塾の進度に沿って勉強していけば大丈夫です。余裕がある場合は、例えば5年生の後期くらいになると、やさしい市販の問題集を解いてみるのはいいと思います。
注意したいのは、4・5年生で『メモリーチェック』(みくに出版)やSAPIXの『コアプラス』(代々木ライブラリ)などの6年生用の1問1答問題集ばかり解いても効率が悪いということ。
松本先生:また、苦手な分野の問題集を解かせたくなる大人の気持ちもわかりますが、子どもにとって、自分のできていないところだけをひたすらやる、というのは苦行。それよりもやさしく感じられるくらいの問題でOKです。
「問題慣れ」するという意味で、やさしい問題を解いていくことのほうが効果があると思いますね。
──社会が苦手な場合、復習の仕方が大切かと思うのですが、具体的にアドバイスをいただけますか?
松本先生:頭に知識があまりない状態で宿題をやるのは効率が悪いです。たとえば、私の塾では配信授業もしていますが、お通いの塾でも配信授業があれば、一度習った内容を復習用に1.5倍速で観るのをおすすめします。
2回目ですから1.5倍速でいいですし、流れや要点を頭に入れてから問題が解けます。宿題を始めても問題が半分以上解けない場合は、こういった方法で勉強し直すといいですね。
──授業で習ったことを帰宅後、親御さんに「再現授業」のごとく話をするといい、と聞いたことがあります。復習と演習のセットが大切ということですね。
松本先生:はい。それができれば理想ですね。塾では定期的にテストがあると思います。偏差値を上げようと、その狭い範囲だけを毎回やってしまいがちだと思いますが、少しでもいいのでぜひ昔やったところも軽く見直してください。定着しやすくなりますよ。
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次回3回目では、6年生の社会の勉強法について。「社会は最後の詰め込み」説、本当なのでしょうか!? 引き続き松本先生にお聞きします!
撮影/日下部真紀
取材・文/佐野倫子
『改訂版 合格する地理の授業 47都道府県編』著:松本亘正(実務教育出版)
『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)