四日市の神楽酒造酒蔵兼釜場と西酒蔵が国登録有形文化財に
三重県四日市市室山町にある醸造元、神楽酒造の酒蔵兼釜場と西酒蔵が3月21日、国登録有形文化財(建造物)に登録された。同日開かれた国の文化審議会で登録についての答申が出された。
市の資料によると、神楽酒造酒蔵兼釜場は、江戸時代末期の1858(安政5)年の建築とされる。大正時代に増築、平成19年に改修されてはいるが、当時からの醸造業の様子を伝えている。
神楽酒造がある四郷地区は、19世紀に入ると味噌、醤油、清酒、清酢といった醸造業が盛んになり、製茶、製糸、紡績も発達して、三重県の経済を牽引する地区に成長した。神楽酒造は四郷地区の歴史的景観を構成する要素となってきたという。
「神楽酒造酒蔵兼釜場」は2階建て切妻造りの東西棟で、東西28.2m、南北14.5mで、南側に東西6.5m、南北8.2mの釜場が突出している。1階は土間で、洗米場、蒸米場、麹室などに利用され、瓶詰作業も行われているという。
2階も醸造作業に使われていたが、現在は物置になっているという。釜場には煉瓦造りの煙突を備え、一部は検査室や事務室になっている。
全体として、内部は作業場として大規模な空間を設けており、それを支える柱や梁などの豪壮な構造部材が露出し、迫力ある景観になっている。これらには、かつて醸造で使用した部材などを設置した痕跡も残っており、当時の作業手法を考えるうえで貴重だという。
このように、機械化以前の醸造業のあり方を検討するうえで貴重な建造物であり、地区の歴史的景観に寄与する建物として、その価値を認められた。
もうひとつの「神楽酒造西酒蔵」は酒蔵兼釜場に接しており、両者は一体の建物にみえる形状をしている。酒蔵兼釜場の西側に2棟の東西棟を密接して並行させている。内部はあ一体の空間になっている。全体として東西21.8m、南北18.6mで、醸造作業に使われていたという。現在は、2階を倉庫、1階を仕込みの作業場として利用、一部を酵母室や神楽酒造の歴史を伝える道具や史料を保管・展示する展示室にしているという。酒蔵兼釜場と同様、柱や梁の豪壮な構造部材が露出し、迫力のある景観を見せている。
2棟が並行する外観の「神楽酒造西酒蔵。画面右奥が酒蔵兼釜場
西酒蔵の2階内部2棟接合部
建築は明治の中頃とみられる。道路拡幅により、一部が減築されたものの、なお、大規模な空間を保持し、こうした空間を実現する建築手法などを伝える貴重な建造物と評価された。酒蔵兼釜場と一体となって、地区の歴史的景観に寄与する建物になっているという。
市によると、市内での登録は、今回の2件を含めて47件になったという。