『黒潮大蛇行』が約7年ぶりに終わる可能性 過去には短期間で蛇行が再発達したことも
我々の生活に多大な影響をもたらしてきた黒潮大蛇行に、いま異変が起こっています。
黒潮の大蛇行
周囲を海に囲まれた我が国では、海洋が気候に大きな影響をもたらします。中でも最も大きな要素となるのが黒潮。
日本海流とも呼ばれる黒潮は、フィリピン東方沖で北赤道暖流から分離し北上、日本の南岸を進んで茨城県沖で離れ、ハワイ方向に進んで不明瞭になります。
しかしここ数年、この黒潮の流れが蛇行する「黒潮大蛇行」という現象が起こり続けています。これによりこれまで獲れていた場所で魚が獲れなくなったり、海水温が異様に上昇し環境が悪化する、北日本における気温上昇の遠因となるなどの影響がもたらされたりしています。
黒潮大蛇行は終わった?
そんな黒潮大蛇行がいま「終わるかもしれない」と言われています。
黒潮が蛇行すると、四国の沖合で一旦南下し、紀伊半島のそこから静岡沖合にかけて北上します。この状態が7年以上続いてきたのですが、ここ数週間はこのS字カーブが見られず、多少左右にうねりながらも概ねまっすぐ東北東に向かって流れる形になっています。
この変化を受け、気象庁が「黒潮大蛇行に終了の兆し」と発表、にわかに注目を集めました。もし大蛇行が終われば、黒潮続流と呼ばれる茨城沖から北上する暖かい海水の流れが、東方に向けた流れに変化すると見られており、北日本の気候にポジティブな影響を与える可能性があります。
まだわからない
黒潮大蛇行は本当に終わるのでしょうか。いくつかの説がありますが、筆者は「一時的なもので、再び蛇行が発達する」という説に賛同したいと思っています。
黒潮大蛇行は、偏西風が北上し黒潮を東に向かって流す力が弱まることで発生するという説があります。現在もこの偏西風の北上は続いており、そのため蛇行が止まるためのポジティブな理由となりえません。
加えて和歌山県沖には寒水渦という冷たい海水の塊と、その周囲を取り巻く暖水の渦があります。この渦と黒潮の本流が合流してしまえば、再び蛇行が発達すると見られています。
実は2020年にも今回同様「大蛇行が止まる兆し」がありましたが、この時は数ヶ月後に再び蛇行が発達してしまいました。個人的にも大蛇行はすぐに終息して欲しいのですが、残念ながらその可能性はあまり高くないのではないかと予測します。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>