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【誰が淹れてもおいしいコーヒー】をコントロールする圧倒的な技術(福岡 六本松・COFFEEMAN)

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COFFEEMAN ハンドドリップ

今まで九州・山口を中心に200軒以上のコーヒーショップを取材してきたため、よくこんな質問をされます。
「福岡市内でおすすめの自家焙煎店はどこですか?」
質問者がフルーティーなコーヒーが好き、逆に昔ながらのビターなコーヒーをよく飲むなど、嗜好が明確であれば答えは変わってきますが、そういった方向性が特になければ、よくこう答えます。
「六本松にある『COFFEEMAN』は間違いないですよ」

定番のブレンドは「3.8」「5.0」「6.4」「7.3」の4つ。そこにシーズナルや限定ブレンドが加わる。焙煎度合いの数字が小さいほど浅煎りという意味

理由は明確で、レギュラーでラインナップしているどのブレンドもコーヒーらしさを感じられ、シンプルにおいしいから。さらに焙煎度合いは比較的幅広く、誰が淹れても安定したおいしさを表現できる。この淹れ手を選ばないというのは豆売りをメインとしたロースタリーにおいては圧倒的な強みになります。『COFFEEMAN』のオーナー、江口崇臣さんにその意識はあるのか聞いてみました。

オーナーの江口さんは2014年ジャパン コーヒー ロースティング チャンピオンシップで優勝。”二刀流”の誤植は手書きゆえのご愛嬌

「当然それはあります。焙煎の技術的な部分で言うと、例えば抽出しやすくするために若干、焙煎時間を長めに設けたり。また豆のエイジング期間も考慮します。当然ですが、豆を購入いただいたあと、どんな淹れ方をされるか、どのぐらいの期間で飲まれるかはその方次第で、私たちがコントロールすることはできません。ですから極端な話、豆購入後、1ヶ月後、2ヶ月後でもできる限り劣化を抑え、味の変化が少ないコーヒーを目指しています。当店では焙煎後1週間後が味わいが落ち着いてベストといったブレンドも多いですが、おいしく飲んでいただける期間ができるだけ長くなるよう、焙煎後すぐの豆も販売。味わいの点数100点がもちろんベストなんですが、それはご自宅で淹れるとなると難しいので、80点以上が出せれば良しとする。ある程度、どんな淹れ方をしても80点以上が出る。そんな感覚も大切にしています」

『COFFEEMAN』の看板ブレンド、6.4ブレンド

さらに『COFFEEMAN』は基本的にブレンドのみで勝負。これもまたシンプルにおいしいコーヒーが飲みたいと考えている人に“間違いない”と勧められる理由の一つです。シングルオリジンでその豆の個性を存分に楽しむのも良いですが、ブレンドすることで味わいの余韻、骨格、奥行き、複雑な階層を表現することができる。個人的に飲みながら「この香りはエチオピアかな」「余韻のナッツ感はブラジルかも」といった想像をするのが好きで、ブレンドを飲むのが純粋に楽しいということもあります。なにより味わいのトータルバランスという点においてブレンドはやっぱり優秀。純粋なコーヒー好きを満足させる大きなポイントになると思っています。

抽出に用いる器具はクラシカルなものがメイン

江口さんはコーヒーの味わいを表現する時に「3.8ブレンドは綿菓子」「5.0ブレンドは出汁や煎茶」「5.6ブレンドは柚子を浮かべた吸い物」といったコーヒーショップでは聞き馴染みがない表現をします。コーヒーで出汁?って…と想像しづらいかもしれませんが、飲んでみるとその言葉通り不思議とホッとする味わい。江口さんはあえてそんな表現をするようにしていると話します。

9年間でさまざまなブレンドを提案(写真提供:COFFEEMAN)

「結局、私たちの目の前にいらっしゃるお客さまの多くはほとんどが日本の方で、ご自宅用に豆をご購入いただくと考えると、専門的な話より、なんとなくニュアンスで伝わるということの方が大切だと思っていて」と江口さん。
ブレンドの商品名を『3.8』『6.4』『7.3』のように一般的な焙煎度合い8段階にプラスして、小数点以下1桁で表現しているのも同じく分かりやすさからです。

焙煎前後のハンドピックもクオリティコントロールの大切な要素(写真提供:COFFEEMAN)

2025年2月11日で9周年目を迎え、10年目という節目の年に突入した『COFFEEMAN』。江口さんは毎年何かしらのテーマを掲げており、2024年は“デカフェ”をテーマに約1年をかけて自身が納得できるデカフェを作り上げたそう。そして2025年のテーマは“遊ぼう”。
「もちろん今までも楽しみながらコーヒーと向き合ってきましたが、今年は例えば積極的にグッズを手掛けてみたり、コーヒー以外の遊び要素も増やしていこうと思っています」と江口さんは話します。

ブレンドコーヒーは1杯500円〜。余談だが液面の泡は新鮮な豆から出るガスによるもの

店をオープンして以来、愚直なまでにイートインのコーヒーはブレンド500円を貫き、いわゆる“映える”スイーツなども一切提供しない『COFFEEMAN』。客単価は上がりませんし、決して効率が良いやり方ではないですが、ひたすら一人ひとりのお客にしっかりと向き合い、その人に合うコーヒーを提案して続けてきました。噂を耳にして、目にして、今では日本全国はもちろん海外から「福岡に来たら必ず足を運ぼうと思っていました」という“目的を持った”来店が相当あるそうです。そんなエピソードを聞いて感じるのが、やはり真摯に堅実に目の前のことと向き合い、しっかりとした土台を築くことがどれだけ大切かということ。コーヒーを味わうだけじゃなく、そんな姿勢に注目してみてもおもしろいロースタリーです。

COFFEEMAN
福岡市中央区六本松4-5-23
092-738-7051

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