麻生区片平地域 乗り合い交通 実験再開 有料運賃で採算性検討
山坂の多い麻生区片平地区で、乗り合い型のコミュニティ交通「かきまる号」の実証実験が9月2日(月)から12月27日(金)まで行われる。片平地域コミュニティ交通推進協議会(畠山和宏会長)を中心に地域の福祉団体などが協働する。有料で実施することで採算性を検討するとともに、住民の外出促進や、持続可能な交通の仕組みづくりにもつなげたい考え。
地域住民からの「山坂が多く買い物や通院が困難」という要望を同地区の民生委員児童委員が受け、2017年に片平町内会や北イトーピア自治会らで発足した同協議会。外出促進による地域活性化、交通手段の充実を目指して、アンケート調査を行うなど、新たな交通手段について解決方法を模索してきた。22年には市と協働して無料の試験運行を実施し、需要などの把握を行った。
地域企業も協力
2回目の実証実験となる今回は、同協議会のほか、地元福祉施設や柿生中央商店会など、地域活動の担い手たちが連携、協力して行われる。
採算性の確保を検討するため、前回とは異なり運賃を有料で実施する。ほかにも、運行経費の一部として協賛金を出資する「エリアパートナー」を募集。8月6日時点で地元病院や福祉施設など、計7社が協力を申し出ているという。市担当者は「サービス開始前から多くの方にご協力いただいていることからも、地域からの期待が高いと感じる」と話す。
今回は定時定路線の運行形態を採用し、片平3、4丁目を中心に4つのルート上に10の停留所を設置。全ての路線で起終点となる柿生駅に加え、多くの講座やイベントなどが行われる片平老人いこいの家、片平会館を主な行き先とする。前回の実験で利用者が少なかった五月台駅を対象外とし住宅街を走るルートを増やすなど、より効率的な運行を目指す。
フリー乗降区間も
運行には地元のタクシー会社・コスモ交通(株)(麻生区栗木)が協力し、同社の車両を利用する。定員は4人で、乗り合い型で実施される。
停留所のほかにも「フリー乗降区間」を設定する。この区間内では、安全に停車できる場所に限り、任意の場所で乗降可能となる。同協議会の畠山会長は「住宅地なので、今まではバスでの移動がメイン。用途に合わせてかきまる号をタクシーのように自由に使ってほしい」と話す。
多くの利用が見込まれる午前9時台、午後0時台、3時台の計6便は予約することも可能だ。4人以上の予約があった際には2台が運行する。予約は【電話】050・1809・3942。
高まる必要性
市によると22年の同地区での実験実施時には、1日平均44人、最大59人、1便あたり平均2・8人の利用があったという。畠山会長は「前回の実施から地域の皆さんも2歳年を重ねているので、さらに切迫している状態」と高齢化が進む中で運行の必要性を述べ、「免許返納も課題となる中で、安心できる要素の一つになれば」と思いを強くする。
今後は片平地域包括支援センターの協力のもと、外出を促進するイベントなども開催する予定だという。市担当者は「周知活動やエリアパートナーのケア、イベントの充実に力を入れ、多くの人に利用してもらいたい」と期待を寄せる。
運行日は毎週月曜日と金曜日の午前9時から午後4時台まで。1回あたりの乗車で一人300円の現金都度払い、もしくは「しま薬局」(柿生駅南口)で販売している回数券(11回綴り3千円)、定期券(1カ月3千円)で利用可能。
利用状況を把握するため、乗車するには会員登録が必要。問い合わせは同協議会【電話】044・988・8258、または市まちづくり局交通政策室【電話】044・200・2034。
麻生区内では各エリアで交通の在り方について検討を重ねてきた。23年には新百合ヶ丘駅周辺で路線を固定せず、利用者の予約に合わせて運行する「デマンド型」のシステムを採用した乗り合い送迎サービスの実証実験を行っている。