ビーチコーミングの主役 『宝貝(タカラガイ)』の身をアヒージョで食べてみた
ビーチコーミングの主役の一つタカラガイ(宝貝)。殻がとてもきれいな貝ですが、殻を割って取り出した身の味はいかがでしょうか?
ビーチコーミングの主役 「宝貝」
浜辺を歩いて貝殻などを拾うビーチコーミング。ターゲットの中で最も人気の高いものは、おそらく宝貝の殻でしょう。
宝貝はタカラガイ科に属する貝類の総称で、比較的南の海に多い生物です。独特の丸みを帯びた殻は入口が内側に巻き込まれたようになっており、殻の表面は光沢に富みます。
実はタカラガイ自体は基本的に磯に生息し、岩の表面に映える藻類や小生物を捕食しています。そのため砂浜には生息していないのですが、殻が非常に丈夫なために海中を漂い続け、浜辺に打ち上げられるのです。
中身よりも殻が大事
タカラガイの殻は模様や大きさが多様かつ美しく、古い時代より現代に至るまで人気を集めています。彼らは生きているときは外套膜と呼ばれる器官で殻を常に覆い隠しているのですが、この外套膜は貝殻の表面を補修し保護する機能を持っているため、常に美しく保たれているのです。
古代中国では祭祀用の飾り物、あるいは貨幣に似たような価値を与えられたこともあり、財産を表す「貨」の字に「貝」が含まれるのもそのためだと言われます。
そういうわけで、タカラガイの価値はもっぱらその殻にあります。殻は非常に厚みがあり、丈夫で死後暫くの間も光沢が失われないため、貝殻収集家にとっては最も欲しくなるもののようです。
殻を破壊して食べてみた
タカラガイは巻き貝の一種なのですが、殻の入口が極めて狭くなっているのが特徴です。そのため身を取り出すのは難しく、貝殻収集家は生体のタカラガイを手に入れるとそれを砂に埋め、微生物たちの力を持って身を腐敗させ、取り除きます。
一方でその身は美味しいとも言われ、特に大きな種類は食用にすることもあるといいます。身を取り出すには殻を割らないといけないので、殻が必要な人にとってはとんでもないことですが、筆者は味のほうが気になるので躊躇なく破壊することができます。
そういうわけで先日、鹿児島県でゲットした大型のタカラガイ「ハチジョウダカラ」を酒蒸しにし、殻を割って食べてみることにしました。殻の厚みは5mmほどもあり、大きなハンマーを何度も振り下ろしてようやく砕くことができました。
その身は弾力に富み、仄かな磯の香りと噛み応えが楽しめ、噛むごとに口に旨味が広がります。蒸すだけだとやや硬く感じたので、それをさらにアヒージョに加工してみると、まるでつぶ貝のような美味しさが楽しめました。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>