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VELTPUNCH長沼 x ひとひら山北 特別対談ーー世代を超えて共有する感覚と音楽の力、新作「17歳と嘘つき」について語る

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VELTPUNCH 長沼秀典、ひとひら 山北せな(Vo.Gt)

VELTPUNCHが、2025年5月14日(水)に約2年半ぶりとなる新作「17歳と嘘つき」を発表する。VELTPUNCHが新曲をリリースするのは結成25周年イヤーの2022年に発表した『蛙の唄 / Merry Go Round Girl』以来。2023年と2024年は歴代のアルバムから時期ごとに区切って選曲をしたスペシャルなワンマン・ライブを開催してきたが、いよいよ本格的な新章の幕開けだ。


2010年代のエモ・リバイバル、『ぼっち・ざ・ろっく!』のヒットによる1990~2000年代・下北沢シーンへの再注目などもあり、ライブハウスから若手オルタナ・バンドが多数頭角を現している中、先駆者として活動を続けてきたVELTPUNCHには改めて再評価の機運が高まっている。そこで今回はVELTPUNCHの長沼秀典と、2021年結成の4ピース・ひとひらの山北せな(Vo.Gt)による対談を実施。両者は今年2月に開催されたひとひらとその感激と記録(山北はこのバンドのギタリストでもある)の共同企画『穴 vol.3』で初共演をしたばかりで、長沼も対バン前からひとひらに注目をしていたという。2人が世代を超えて共有する感覚から、現在のライブハウスシーンの熱を感じてほしい。

出会いとルーツ、そして「俺たちはこれでいいんだ」という自信について

ーーせなくんがVELTPUNCHをイベントに呼んだ理由から教えてください。

山北:『穴』はひとひらとその感激と記録の共催イベントなんですけど、その2バンドが共通してリスペクトしている先輩のバンドにお声がけしたいという話になったときに、VELTPUNCHの名前が挙がりました。ひとひらとその感激と記録のボーカルが男性と女性で、VELTPUNCHはツインボーカルなので、その中間という意味でも合うのかなと思って。

ーー長沼さんは誘われたときはひとひらのことはご存知でしたか?

長沼:結構早い段階で知ってました。ここ何年かはジャズとお笑い芸人さんの深夜ラジオと英語のポッドキャストばっかり聴いてて(笑)、新しいバンドを細かくチェックしてるわけではないんですけど、Xでフォローしてる「HOLIDAY! RECORDS」のポストでたまたまひとひらを知って、何気なく最初のミニアルバム(『Seasons of Someday』)を聴いてみたら、2〜3曲聴いた時点で、このクオリティで作ってるのはすごいなと思って。まあ、僕は世代的にエモとかが始まるような時代からずっと、30年くらいロックを聴いてきてるから、「こんなの聴いたことない」という感じではなくて、懐かしさも感じたし、いいところをくすぐってくるなって。あと僕も2本のギターの絡みをよく作るから、ここまでのものを作り上げる労力や時間も想像できて、年齢とか関係なく、ものづくりに対する姿勢としてすごく尊敬できるなと思いました。

山北:今回『穴』でお誘いした裏の理由みたいなものが一個あって、VELTPUNCHの公式がひとひらのXのアカウントをフォローしてくださってたんです。それを見て、「知ってくれてるんだったら、ワンチャン出てくれるんじゃないか」って、それでお誘いしたのもありますね。

長沼:コロナ禍以降はほとんどワンマンばっかりで、対バン形式のライブ自体ほとんどやってなかったんだけど、メンバーの中で「若いバンドさんともっとつながりたい、刺激を受けたい」みたいな話がちょうど出始めたタイミングでもあったんです。最近若くてかっこいいバンドが多いじゃないですか。我々世代の心をくすぐるような、エモとかオルタナみたいなテイストがありつつ、それをちゃんと今の時代に昇華させてるバンドが多いから、聴いててドキドキするというか、「いいねえ」って思うバンドが増えてきたタイミングでもあったんですよね。

ーーまさにひとひらからもエモ、ポストロック、シューゲイザー的な要素を感じますが、せなくんはどういう音楽に影響を受けてるんですか?

山北:ギターを始めたキッカケはKANA-BOONです。小学生くらいでKANA-BOONを聴いて、中1ぐらいからギターを始めました。今やってるような音楽の影響で言うと、高校生のときにösterreichやさよならポエジーを聴いたのが大きくて、シューゲイズ的な部分で言うと、きのこ帝国もすごく聴いてました。自分はずっと邦楽で育ってきて、海外のバンドを聴き出したのは大学生になってからなんですよね。

ーーそういう邦楽のバンドのルーツをたどっていったらAmerican Footballが出てきて、みたいな順番というか。

山北:そうですね。今では海外のバンドもすごく聴きますし、まさにアメフトとかはすごく好きなので、影響も受けてますね。

ーー高橋國光くんがösterreich以前にやっていたthe cabsが再結成を発表して、リアルタイムではライブを見ていない若い世代も含めて、かなり反響がありましたね。

山北:自分ももちろん、the cabsからもすごく影響を受けてます。豊洲PITでツアーファイナルとか、周りの自分より上の世代の人の話を聞くと、当時の規模感より全然大きい規模感になってるらしくて、活動してなかったのにこれだけたくさんの人に届いてるのはすごいなと思うし、同じ時代に共存できるのはすごく嬉しいことですね。

長沼:the cabsは俺もチケット買いました。当時そろそろライブを見たいと思ってた時期に解散しちゃったから、ちゃんと1回見たいなって。

ーーせなくんはVELTPUNCHのことはどうやって知ったんですか?

山北:自分のすごく好きな先輩のバンド、Fallsheepsのジュンチャイさんに「どういうバンドに影響を受けてるんですか?」って聞いたときに、VELTPUNCHの名前が挙がって、そこで初めて聴きました。さっきも言ったように、自分は邦楽で育ってきた人間なので、VELTPUNCHは邦楽のギターロック的な部分を持ちつつ、オルタナティブなアプローチをしているバンドだったので、自分の好みにすごく刺さって、そこからハマった感じですね。

ーー実際の対バンはいかがでしたか?

長沼:自分たちの普段のお客さんより客層は当然下で、ERAでやるのもひさしぶりだったんだけど、ライブはすごくやりやすかったです。山北くんたちが今頑張って作り上げてるシーンみたいなものにお邪魔してるような感じだったかもしれないけれど、当然そこでかっこ悪い姿は見せられないから、気合いを入れてやって、すごく楽しくできました。何人かお客さんとも話して、「ひとひらとVELTPUNCH両方大好きです」っていう人もいたりして、面白いなと思いましたね。あの日は外国の方はそんなにいなかったかな?まあ、売り切れちゃってるからか。

山北:そうですね。当日券では入れなかったので。

長沼:最近はチケットが売れ残ってると当日に外国の方がいっぱい来たりするんですよ。この間Texas 3000のライブをクアトロに見に行ったときも、途中からどんどん外国の方が増えてきて。センター街とか完全に観光地みたいな感じだから、ああいう場所でちょっとキャパに余裕があると、ロックを見たい外国の方がどんどん流れ込んでくる現象は面白いなと思って。とんでもなくエキサイティングなライブだったから、みんなバンバン動画を回して、あれが世界に発信されていくのであれば、自分たちのお客さんだけで売り切っちゃうより、ちょっとキャパに余裕があるところでやって、お祭りみたいなライブにするっていうのも、楽しみ方としてすごくいいなと思いました。

ーーせなくんはイベント当日はどんな印象でしたか?

山北:VELTPUNCHのライブを拝見するのはその日が初めてで、やっぱりやってる歴がすごく音に出てるなって。自分たちはまだまだ演奏とか拙いなって思うんですけど、VELTPUNCHはもう28年やられていて、その蓄積が全部音に出てて、すごいなと思いましたし、あと改めてライブで聴いて、やっぱり曲がいいなっていうのもすごく思いましたね。ライブで聴いたときに映える曲がいっぱいあるなって、改めて思いました。

ーー若い世代のバンドがたくさん出てきてる中で、長沼さんがひとひらに注目したのはどんな部分が大きかったですか?

長沼:日本のロックで、ちょっとエモ的なアプローチが強いと、サビで一生懸命声を張ったり、豪華にハモったり、それが聴いててちょっと熱すぎるというか、一歩間違えると少し臭く聴こえちゃう事もある中で、ひとひらはそうじゃなかったんですよね。もともとずっと邦楽を聴いてたっていう話があったけど、歌にすごく繊細な感じもあって、ちゃんと自分達のキャラが出てるというか。「ここがゴール」みたいなフォーマットの中でただ突き進むんじゃなくて、それを武器として使いながら、ちゃんと自分たちの世界観を作ってるのがかっこいい。あとこれはライブのMCでも言ったんだけど、ミニアルバムに入ってる「海」っていう曲があって、最近はあんまりライブではやってないんだよね?

山北:全くやってないです。

長沼:多分今は演奏的にかっこいい曲の方にシフトしてると思うから、あの曲をやらなくなる理由もわかるんだけど、すごく歌メロがいいんですよね。これだけのアレンジ力を持ちながら、本気で歌メロを書かせたら相手の心を一気につかむようなメロディーが書ける。それをあの曲で証明してると思うんです。

ーーひとひらは自分たちのオリジナリティについて、どんなことを意識していますか?

山北:意識してることは正直そんなにないんですけど……でも必然的に現れてる部分が、今おっしゃっていただいた歌メロの部分だと思っていて。今エモとかをやってるバンドたちって、海外をルーツとしてやってるバンドが多いと思うんですけど、自分は完全に邦楽がルーツで、そこに海外のアプローチを取り込むやり方だから、メロディーが邦楽的というか、わかりやすいメロディーで曲が作られてるのは、自分たちならではの特色になっているのかなと思いますね。

ーー今ってオルタナなサウンドで歌がはっきり出てるバンドが増えている印象があります。例えば、sidenerdsはVELTPUNCHのファンであることを公言していたり。

長沼:アイコが最近sidenerds好きだってすごい言ってて、一緒にライブを観に行こうと誘われたんで今度2人で行く予定です。

ーーせなくんは今のシーン的な盛り上がりをどう感じていますか?

山北:自分はそもそも身近なバンドにすごく影響を受けるタイプで、身近なバンドの曲もすごく聴きますし、ライブも結構よく見に行っていて。なので、自分たちのいる場所がみんなで盛り上がっていってるのはすごく嬉しいことだなと思いつつ、でもやっぱりその中でも飛び抜けてやりたいっていう野望とか野心みたいなものはありますね。

長沼:シーンで盛り上がっちゃうと、そのシーンが飽きられたときに、「最近あのシーン聞かなくなったよね」みたいにひとまとまりで見られちゃったりもして。だから周りのバンドとシーンを盛り上げつつ、やっぱりワンマンを軸にするのが大事だと思う。ワンマンに来た人たちを120%、150%満足させれば、その人たちは絶対次も来てくれるから。っていうか、俺が普通にワンマンを見に行きたい(笑)。

ーーベルパンは2000年前後の時期、シーンとの距離を意識してましたか?

長沼:当時はナンバーガールとか、福岡からバンドがいっぱい出てきて、そこから日本のインディーズがオルタナとかエモに寄って行ったから、音が近いバンドはいっぱいいたと思うけど、うちはあんまり横のつながりを作らなかったというか、作れなかったのかもしれない。MEAT EATERSとはずっと一緒にやってたし、自主イベントでいろんなバンドを呼んだりもしてたけど……ガッツリ「一緒にやりましょう」みたいなバンドは作らなかったし、今考えてもそれはいなくてよかったと思う。周りのバンドを気にするよりも、自分たちのお客さんとの関係性が上手くいってれば、その方が長く続くなって、いつからか思うようになったんですよね。周りと比較して、一緒にやってたバンドが売れちゃったり、逆にやめちゃったり、そういうのでイライラするのは不健全だなって。ちゃんと自分たちが大好きだと思える音楽を作って、それを好きだと言ってくれるお客さんをちゃんと満足させることができれば、いつの間にか規模も大きくなっていくと思うし。今ってインスタで海外の人からもメッセージが来たりするでしょ。自分たちはとにかく一歩一歩進んできたつもりだけど、そういうことがだんだん自信につながって、「俺たちはこれでいいんだ」って信じられるようになると、ライブも堂々とできるようになって、音の説得力にもつながるのかなって。

ーーひとひらもすでに海外からのリアクションがありますか?

山北:結構ありますね。SNSを通じてもありますし、去年中国に実際ライブをしに行って、たくさんのお客さんが来てくれて。自分が作った音楽が海を越えた場所で聴かれてて、届いていることにすごく驚きました。日本語で書いた歌詞をそのまま日本語で大合唱してくれたり、そもそも合唱なんて日本じゃ起こりえないし、自分のやってる音楽では起こりえないと思ってたから、すごく新鮮だったし、音楽の力ってすごいなと思いましたね。

ストレートなロック「嘘つき」と不完全だからこそ眩しい「17歳」

ーーではVELTPUNCHの新曲について聞かせてください。いつ頃作り始めて、なぜこの2曲を選んだのでしょうか?

長沼:VELTPUNCHはこれまでアルバムを9枚出してるんだけど、去年一昨年はそのアルバムを3枚ずつに区切って、過去の楽曲限定ライブみたいなことをやって、全公演ソールドアウトになって。そういうのを企画として一回やりきって、じゃあ次またワンマンをやるならどうしようかと思ったときに、やっぱり何かリリースがあった方がいいから、本当にそれくらいの簡単な理由で作った感じですね。ただ自分的には曲の作り方は少しずらしたというか、「嘘つき」はすごくストレートなロックで、アレンジはできるだけシンプルにしようとしたんです。難しくやろうとすると詰め込んじゃうんだけど、今回はあえてそれをやらずに、シンプルに、短く、わかりやすくっていう。「17歳」も割とそうかな。やっぱりメンバーは個々のアレンジで難しいことも色々やりたがるんだけど、この曲は高校生でもコピーできるくらいの感じにしたくて、アレンジの過程で引き算をしていった感じです。

VELTPUNCH「嘘つき」

ーー「嘘つき」の真ん中のクラップとかもあえてわかりやすく?

長沼:そうですね。やっぱりプレイヤーとしてはみんな自分の持ち味とか難しいことを出したいと思うんだけど、それはそれで、そういう曲をまた作ればいいじゃんって。今回はとにかくシンプルに、ストレートに作った感じでした。

山北:それでもやっぱりVELTPUNCHらしいというか、ずっと軸がブレてないじゃないですか。今回新曲を聴かせていただいて、それはすごく思いました。28年間バンドをやってて、アルバムも9枚出して、曲をずっと作り続けているにもかかわらず、変わらずにかっこいい曲が作れるっていうのは、自分からしたらもうとにかくすごいなって。自分はまだバンドを3〜4年ぐらいしかやってないのに、もう曲を作り続けるのって大変だと思う部分もあるんですけど、ずっと新しい曲を生み出していて、なおかつ最新のものがずっとかっこいいっていうのは、純粋にすごいなと思います。

長沼:自分の中でこれだけは絶対やっちゃダメだと思ってるのが「新曲が良くない」っていうことなんです。もしできた曲がよくなかったら、もう出さずに解散だなって。っていうのは、僕がバンドを始めようと思った高校生の頃はThe Smashing PumpkinsとかDinosaur Jr.がもう好きすぎて、夢に出てくるくらいだったんですよ。ビリー・コーガンが「僕らはブリトニー・スピアーズに負けた」みたいなことを言って、当時一回バンドを解散させたときは悔しくて悔しくて、ボロボロ泣いたこともあったり。当時の自分はそれくらい純粋にバンドを愛していて、好きなバンドの新譜が聴けることが何よりの喜びだったから、逆にその新曲が良くなかったときはすごく裏切られた気分になって、「ふざけんじゃねえ!」みたいに思って。妥協したのか飽きたのかわからないけど、それがどれだけリスナーを裏切ってるのか、それに対する怒りを強く感じていたからこそ、自分は絶対にそれをやりたくない。だから俺は音楽では食わないって決めてて、ただ好きだからやるし、誰からも命令されずに、自分がいいと思ったものを自分のタイミングで出すっていうのを守りたい。新曲を褒めてもらえると、もちろん「ありがとうございます」とも思うけど、自分としては「そうなんですよ」っていうか。

VELTPUNCH「17歳」

ーー自分で本当にいいと思えなかったら、そもそも出してないということですね。今高校生の頃の話があって、新曲のアレンジも高校生でも弾けるように、あえてシンプルにしたそうですが、そこは「17歳」の歌詞とも関係してくるのかなと。

長沼:自分が大人になったからこそ、青春時代の先が見えない不安定さとかを一歩引いた形で見てる感じですかね。いろんなものに悩んだり挑戦したりしながら成長していく過程を客観的に見ていく中で、青春時代の真ん中にいる眩しさと、その一方での儚さとか脆さみたいなものを同時に感じるんです。大人から見ると幼稚で未熟なんだけど、それはもう我々が失ってしまった魅力でもあるから、そういうのを描いてみたくなったのかな。大人になると仕事でも責任のある立場になって、自分が失敗することはあり得なくて、その立場でいられる君が羨ましいよって思ったりもする。でも不完全だからこそ眩しいし、失ったものへの憧れもあるような気がしますね。

山北: VELTPUNCHは結構過去を、学生時代とかを悔いるような歌詞が多い印象を持ってるんですけど、「17歳」は年齢を重ねてきたからこそ書ける歌詞になってる部分は絶対にあると思うので、そういうことができるのもバンドを長く続けてきたからですよね。年を重ねたときの自分がどういう歌詞を書くんだろうっていうのは、自分でも気になります。

長沼:高校生のときって、共学だった? 男子校だった?

山北:共学でしたね。

長沼:俺、男子校だったんです。もうね、この劣等感がすごくて(笑)。これはいつまでも拭えないというか、中高男子校で、女子と喋りたかったとか、俺の青春を返せ!みたいな、この恨みつらみは一生取れないし、ずっとコンプレックスだと思うけど、だからこそ楽曲を生み続けることができる。自分の中でそういう怒りとかコンプレックスの対象みたいなものが常に原動力になってるかもしれない。ひとひらの歌詞も繊細なように見えて、「地獄」みたいなパンチのある言葉も出てくるのが面白いですよね。

ーーコンプレックスの種類は違っても、せなくんの中にあるある種の鬱屈とした部分が音楽に消化されてるという意味では、長沼さんとも一緒なのかなと。

山北:そう思います。やっぱり負の感情は歌詞に出しやすいですよね。そこで消化できるのは曲を作るものの特権というか、普通に生きてたらそういう感情ってなかなか吐き出せないけど、歌詞に落とし込めるのは曲を作ってる人ならではの権利な気がするんですよね。

長沼:やっぱり完全に満たされちゃったらダメなんだよね。月金でスーツを着て、毎日電車通勤でとか、そういう中で怒りとか鬱屈したものが溜まれば溜まるほど、それが音楽の原動力になるし、早く週末スタジオに入りたいと思う。これがフルタイムのミュージシャンになって、毎日ギターを弾いて、いっぱいのお客さんの前でライブができて楽しいってなっちゃうと、自分の中で音楽をやる意味が変わっちゃうと思う。リスナーと限りなく同じような生活を送っていく中で、「音楽が救いである」みたいな感覚をずっと変わらずに持ててるのは、自分としてはラッキーかなと思ってる。

ーーちなみに、「嘘つき」のMVでは青いテレキャスを弾いているのが新鮮でした。

長沼:さっき言ったワンマンを6本やって、ある程度ギャラもいただけたんだけど、俺は音楽でもらったお金は基本的に全部音楽に使おうと思ってるから、ずっと縁がなかったテレキャスを買ってみようと思って。で、仕事帰りに普通にスーツで楽器屋さんに行ってギターを弾く日々を2週間くらい続けて。あのギターはフェンダーカスタムショップのマスタービルダーだった人が独立して作ったIconic Guitarsっていうブランドのギターで、日本にはまだほとんど入ってきてなくて。多分それまでに20〜30本弾いたんだけど、あれを弾いたら他と音が全然違って、超いいと思って。これに出会うために頑張ってたんだと思って、もうその場で「これにします」って決めて、今は毎日のように弾いてます。

「みんなに満足してもらえるように」リリース記念ワンマンライブ開催

ーーでは最後に、両バンドの今後の展望を教えてください。ひとひらは昨年はリリースがなかったわけですが、今後の予定はどうなっていますか?

山北:去年の4月からメンバーが全員社会人になって、仕事と並行しながら活動をしてるんですけど、曲は作り続けているので、今年中にまとまった形で作品を出せたらいいなと思ってます。もちろん自分がかっこいいと思うものを作り続けるのは前提で、これだけいいものが作れてるんだったら、それをできるだけたくさんの人に聴いてもらいたい気持ちはやっぱりありますね。それで結果的にバンドの規模が大きくなっていけば、それが一番じゃないかなと思います。

ーーVELTPUNCHは新曲のリリース後にリリースライブが決まっています。去年一昨年は時代ごとに区切ったライブをやってきたわけですけど、今回のリリースライブはどんなものになりそうですか?

長沼:やっぱりワンマンは対バンライブのときにはできないような曲とか、みんなの思い入れが強い曲をやる場であるべきかなって。さすがに楽曲が増えすぎちゃって、「これは外せない」みたいな、シングル的な扱いの曲を入れていくだけで8割ぐらい埋まっちゃうんだけど、「これは今回あえてやらない」とかも考えつつ、ワンマンが2回あるので、なるべくやる曲は変えようかなって…でもやっぱり選曲は難しい(笑)。

山北:長くバンドをやってるとそうなりますよね。

長沼:そうだね。でもやっぱり来た人みんなに満足してもらえるように、バランスも考えながら選んでいくと思います。で、当然その先にはアルバムも作りたいなっていうのが頭の片隅にはあるんだけど、そこはもうちょっとゆっくり、自分たちのペースでやろうかなって。今回完全に自分たちだけで作って、エンジニアもMVも全部自分たちで手配したから、2曲でもかなり大変だったんですよ。これがアルバムとなるとさらに大変だなと思うんですけど、でもライブをやったらまた新しい曲を作りたくなると思う。

ーー若い世代との対バンが増えたら、そこからもらう刺激も大きいでしょうしね。

長沼:影響を受けちゃうのはあんまり良くないと思うから、今は自分も1ファンとして若い世代のバンドを聴いてたりするんだけど、そうする中で、自分たちもまだまだかっこいいなと思えてるんですよね。若いバンドも超かっこいいんだけど、自分たちが一緒にやっても全然古くないと思えるから、今はすごく楽しいですね。

取材・文=金子厚武 撮影=冨田味我
取材協力=POOTLE

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