不登校でも構わない!小2自閉症娘のためホームスクーリング開始も、1週間で再登校した意外な理由は?
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
小2で学校に行けなくなった娘。親子でホームスクーリングを始めることに
特別支援学級に在籍している娘は、小学校2年生の2学期、「約束と違う給食指導」や「交流学級の先生が注意する時の大きな声」などのストレスが引き金となり、学校へ行けなくなりました。私は娘の気持ちを尊重していったん学校を休むことを選択し、家での過ごし方を決めてホームスクーリングをすることにしました。
それまでは、家の中ではわりと自由にゲームができる環境にしていましたが、ホームスクーリングを始めてからはきっちりと時間を制限するようにして、運動の時間なども取り入れ、1日のスケジュールをたてて過ごすようにしました。
そして娘が学校を休むようになってから数日が経った頃、学校から呼び出しを受けて面談をすることになりました。面談に参加したのは私、特別支援学級の担任の先生、そして交流学級の担任で学年主任を兼務されている先生の3人です。
私は娘が学校に行けなくなった原因として、「給食指導が事前に約束していた内容と違うこと、交流学級の担任の先生が大きな声で怒るのが怖いこと、特別支援学級では一つの教室をパーテーションで分けて2クラスで使っているが、それが聴覚過敏の娘にはつらいこと」の3点を伝えました(特別支援学級ではイヤーマフを着用しています)。
先生方からは給食指導に関する謝罪と、週1回でも保健室登校でもいいから、少しでも学校に通えたら……と言われました。親としては、ホームスクーリングを始めたところでしたし、娘が望むなら不登校でも構わないと考えていたので、「家で娘と話してみます」と返答し帰宅しました。
学校の提案に対し、娘の考えは?
家に帰って娘に学校の先生との面談の内容を話しました。その時娘は何も言わなかったのですが、次の日に「私、給食がなければ行けるかも……」と言ってきたのです。
半信半疑でしたが、娘はその言葉通り、翌週の月曜日から午前中のみ再登校をはじめました。再登校の理由は「友達に会いたい」「たくさん休んだから少し元気になった」そして「ママとすごすホームスクーリングが想像より大変だった」からでした。
お休み中はわりとあちこちに行って娘の好きではない買い物に付き合わなければいけなかったり、ゲームの時間制限があったり……といったことが負担だったそうで……。いい感じで日中をすごせているものと思っていた私は、正直すぎる娘の発言に苦笑いをしてしまいました。
再登校後にありがたかった学校の配慮。そして予想以上に大変に感じたこととは?
再登校を始めた後は、特別支援学級の先生に配慮していただき、授業は4時間目まで受けることにし、交流学級の授業は別室教室(通常の教室に入れない場合に授業を受ける場所)に行かせてもらうことにしました。
娘が再登校するようになって、地味に大変だったのは送迎でした。朝に娘を学校へ送ったと思ったら、4時間目が終わる12時にはもうお迎えです。心の中で”幼稚園の年少の時よりお迎え早いな!”と思った日もありました。それでも娘本人が頑張っているのは分かっているので、急かすことのないように見守っていました。
そうするうちに、徐々にですが、お弁当を持参して通うようになり、交流学級の教室での授業にも少しずつ参加できるようになっていきました。ちょうどこの頃に、娘が学校を休み始めた時期に予約を入れていた児童精神科の受診がありましたが、再登校できるようになっていたので、特に投薬などは希望せず様子見となりました。しかし、今後も相談できる場所が増えたことで、安心材料になりました。
娘はいろんなことが重なり学校に行けなくなりましたが、この時は娘自身がホームスクーリングより学校を頑張るほうがいいと選択し、再び学校に通い始めました。また、娘が再登校しやすいように登校のハードルを下げてくださった学校の配慮にはとても感謝しています。
執筆/マミヤ
(監修:井上先生より)
娘さんが学校に行きたくないということを言われたとき、親御さんとしてはとても不安になられたことでしょう。休み中の生活リズムが乱れてしまうことを防ぐために、学校での時間割も意識したホームスクーリングを実施されたことは、良かったと思います。
また、マミヤさんは娘さんとしっかりとお話しされ、娘さんが学校に行きづらい理由を具体的に把握されたことが学校の配慮に繋がったと感じました。この経験から、娘さん自身も自分の苦手なことだけでなく、それに対する対処法や対策を学習できると、その後の自己理解にプラスになるのではないでしょうか。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。