osage、見る者の胸の中をバズらせ続けたツアーファイナル そしてメジャーデビューへ
osage『ENSEMBLE TOUR 2024』 2024.07.27(sat)渋谷WWW X
6月8日・愛知・名古屋ell.SIZE公演を皮切りに、全国9ヶ所を巡った約1年ぶりの全国ツアー『ENSEMBLE TOUR 2024』。各地で対バンを迎えた7公演を経て、大阪と東京公演はワンマンライブ。8月7日に配信リリースされる両A面シングル「マイダイアリー/透明な夏」でメジャーデビューする旨が発表されたツアーファイナルの7月27日・東京・渋谷WWW X公演の模様をレポートする。
ステージに登場した山口ケンタ(Gt Vo)、金廣洸輝(Gt Cho)、ヒロ クサマ(Ba Cho)、田中優希(Dr)を迎えた大きな拍手。スティックカウントを合図に「monologue」がスタートすると、会場全体が心地よいサウンドで満たされた。白いシャツの裾を揺らしながらハンドマイクで歌う山口の声は、爽やかであると同時に力強い。サビに差し掛かると、躍動するバンドサウンドに魅了された観客が一斉に飛び跳ねてフロアを揺らした。
「letter」と「少年少女」も披露された後に迎えた最初の小休止。「ファイナルでこの景色、本当に嬉しいね。あっという間の時間を一緒に共有して、全員で作りたいです。今日という日、ちゃんと伝説にして帰ろうぜ!」――山口のMCを経て、強力な曲がさらに届けられていった。怒涛の勢いで駆け抜けた「ノータイトル」「夜明けの唄」、エネルギッシュなサウンドを高鳴らせた「Greenback」を浴びながら明るい昂揚感を共有していた観客。「今日はワンマンライブなので、俺たちとあなたしかいない。極端な話、何やってもいいんだよ。手段を選ばず……いや。敢えて選ぶとしたら音楽。それだけでやっていきます。好きに踊ってもいいし、歌ってもいいし。帰るのだけはやめて(笑)。たくさん曲を持ってきたので、一生懸命やります!」――山口のMCを挟みつつ「ニューロマンス」「ニヒリズム」「フロイト」も披露され、盛り上がる観客のムードはどんどん自由で開放的になっていった。
「せっかくのワンマンライブ、しかもツアーファイナルなので、いつもと違うことをやりたくて。歌と鍵盤だけで勝負をしてみたいと思いました。大事にしている曲なんだけど、俺がめちゃめちゃ好きなので」と山口が語ってからスタートした「あの頃の君によろしく」。サポートプレイヤーの幕須介人のピアノ伴奏で彩られたこの曲の間、金廣、クサマ、田中は一旦ステージから姿を消して休憩。ステージに残った2人が呼吸を合わせながら響かせたサウンドを観客はうっとりしながら受け止めていた。そして金廣、クサマ、田中が再び合流してからは、「残り香」と「夜煩い」が届けられた。5人のアンサンブルによって、目一杯に輝いていた美メロ。生演奏を体感する喜びを存分に噛み締めたひと時だった。
「ホンネ」が先陣を切った後半戦は、力強いナンバーの連続。手にしたエレキギターを奏でながら山口が歌い、メンバーたちのサウンドが熱く高鳴った「赤に藍」「青かった。」。「オルタナティブロックを聴いてくれ!」と山口が観客に呼びかけてから披露された「セトモノ」……強烈なサウンドが冴え渡っていた。骨太なギターサウンドを奏でながら山口と金廣が浮かべた無邪気な笑顔が思い出される。「俺たち、少しは強くなったよ。でも、負けそうになったり、行き場を失くしそうになることだってあるかもしれない。その度に今日のことを思い出す。俺たちはこれからも歌うことをやめません。他でもないあなたもあなたをやめないでほしい。演じなくてもいいから、ありのままで。そんな曲を他でもないあなたに捧げて帰ります」――山口の言葉が添えられた「エピローグ」で本編は締め括られた。
アンコールを求める手拍子が始まった後、ステージの背景を覆っていた幕が左右に開き、投影された映像は特大級のサプライズだった。「ソニー・ミュージックレーベルズよりメジャーデビュー決定! 両A面シングル「マイダイアリー/透明な夏」を8月7日に配信リリース!」という文字が浮かび上がった瞬間、観客の間から起こった大歓声。10月から11月にかけて東名阪ツアーが開催される旨も発表され、メンバーたちがステージに戻ってきた。表情は明るいが少し照れくさそう。「アンコールありがとう。そしてメジャーデビューありがとうございます。すごいことになってきました。みなさんは大事な目撃者、かけがえのない証人なんですよ」という山口の言葉を聞いた観客は、温かい拍手を4人に送った。
早速披露されたメジャーデビュー作の収録曲「マイダイアリー」。瑞々しいメロディを受け止めながら観客が胸をときめかせているのを感じた。そして演奏後、想いをじっくりと語った各メンバー。
「メジャーデビューします! みんなからしたら“メジャーデビューしても変わらないよ”というのが一番安心してもらえる言葉だと思うんだけど、俺らはずっと変わり続けます。進化し続けます。もっと大きいステージも目指します。だからこそ、そんな景色をみんなと観たいと僕は思っています。これからもよろしくお願いします!」(クサマ)
「俺はもともとバッキングギターで、リードギターが1人いました。“あいつの方がかっこいいギターを弾くんじゃないか?”とか思って、レコーディングでも時間がかかっちゃって、心が何度も折れそうになりました。それでもがむしゃらに続けてきたから今日があって、俺はここに立ってギターを弾くことができています。ようやく俺は、胸を張って“osageのリードギターです”と言えるようになりました。本当にありがとうございます。高1の時に空き教室でアコギを弾いているケンタに声をかけて“一緒にバンドをやろう”って誘って、本当に良かったと思っています」(金廣)
「メジャーデビューってわかりやすく言うと、力を貸してくれる人たちが増えるっていうことなんですよ。力を貸してくれる人たちが増えて、みんなをわくわくさせたり、びっくりさせることがもっとできるようになるんです。俺たちからできる恩返しって、これからもっと面白い景色を見せること。ついてきてほしいなと思っています」(田中)
「俺たちってバズとは無縁で、何もバズったことがなくて。でも、ずっと観てくれているあなたがいました。見つけてくれて、出会ってくれて本当にありがとう。このスタンスは変わらないです。だからこれからも歌う理由をください」(山口)
……感極まって金廣と田中が言葉を詰まらせる瞬間もあった。喜びを分かち合いながら今後の活動への意欲に溢れていた4人。そんな彼らを観客は心から祝福していた。
「俺ららしい曲をやって帰ろうかなと思っています。あなたの大事な人を思い浮かべてください。あなたの大切な人を俺たちは想像することしかできない。俺たちが大事にしたい人に向けて大事にしたいと思っている曲を歌うから、あなたが大事にしたい人を思い浮かべて聴いてください。俺たちの始まりの歌を」と山口が語り、ラストを飾ったのは「ウーロンハイと春に」。観客の間から沸き起こった大合唱を受け止めたメンバーたちが、本当に嬉しそうだった。今後の活動を支える素敵なエネルギーを得たのではないだろうか。
別冊マーガレットで連載中の大人気少女漫画『君を忘れる恋がしたい』番外編コラボ楽曲として書き下ろされ、編曲を宮田“レフティ”リョウが手掛けている「マイダイアリー」と「透明な夏」を収録した両A面シングルで、osageはついにメジャーデビューする。山口はこれまでの活動を振り返りながら「バズとは無縁」とMCで言っていたが、ライブ会場に集まる人々の胸の内では既に猛烈にバズっているはずなのがosageだ。魅了されるリスナーは、今後、急速に増えていくと思う。気になり始めている人は、10月から11月にかけての東名阪ツアーにぜひ足を運んでほしい。
取材・文=田中大 撮影=後藤壮太郎