「港町の男が足を乗せるアレ」波止場にある認知度抜群の構造物の名前は『係留杭』
日常的に海浜の釣り場に立つ者は、筆者も含め、多くの人がなんとなーく風景を感じながら釣りをしていると思う。けれどそんな風景の中にも、何々と固有名詞を伴って指呼すべきものが当然ある。たとえば、イメージとして、「海の男が煙草をくわえながら、足を置くアレ」の名前を、ご存じだろうか?今回はそんな、「港で見るちょっとしたアレの名前」について紹介したい。
港町の男が足を乗せるアレ
「係留杭」と聞いて、何かわかるだろうか?そう。これが、「海の男が煙草をくわえながら足を置くアレ」である。
これはもちろん、「クールな海の男たちよ、これに足を置いて一休憩してくださいな」と、岬に立つ小さな白い教会のシスターが設置してくれたものではない。そんな用途ではないし、そんな良い話も(たぶん)ない。係留杭はきわめて実用的なもので、その名の通り、漁船(主に小舟)を係留するロープを張るためのものだ。
しかしまあ、「あの係留杭のところで…」なんて、わざわざ正式名称を出して言ってやるのもなんだか小っ恥ずかしい気はする。
そんな話をしていて思い出したが、10代の頃にどっかの工場でバイトをしていたとき「このシリカゲルどうすればいいですか?」と私が室内の誰彼になんとなく尋ねたところ、女性ばかりのみんなが振り返って「????」という顔をされたのを思い出す。「シリカゲル?」とむしろ馬鹿にするみたいに聞かれたものだ。そういうちょっとした専門用語みたいな言葉は、自慢する意図はなくても、人前で声にするものではないらしい。しかし「シリカゲル」は一般常識ではないかと、実はいまだに根に持っている。
沿岸の船の白いウキ
続けて、こちらこそ一般常識・教養の範囲内といえる海辺でよく見かけるアレ。
そう、白いヤツ。船の横にぷかぷか浮いているヤツ。これはブイだ。
しかし、ブイっていったい何の役目をするものなのだろう?…と調べてみると、どうも「標識」としての役割が主のようだ。境界を表示したり、航路を示すものだったり。つまりまさしく港の足元から数メートルのところに浮いているブイは、「ここには決められた船が泊まります」との意味なのだろう。
遠くのウキの数々
はたまた、「ブイみたいなヤツ」と私が勝手に思っているものがある。それが、オカッパリの釣りをしていて、主に外向きに対してフルキャストするときに沖にちらつく、あの大きな赤いウキだ。いや、赤いヤツだけではないかもしれない。色はそれこそいろいろあるだろう。
これは、「ボンデン」などと呼ばれるもので、ちょっとネットで調べてみたところ、漁網が入っていることを示すものだそうだ。「アバ」など、地域によって名前もかわる。ということは、単に漁網の範囲を示すだけでなく、組合別の縄張的な意味合いがあったりと、そのようなことも推測される。釣り人とは関わりのないものだが、すなわちそのような「ボンデン」がある一帯=回遊魚が入ってきやすい?とも想像できる。
これがイケスです
最後に、よくご存じの方もいれば、「そうだったんだ」と思われる方もいるかもしれない、イケス。
イケスは港を歩いていると、結構、あっちこっちにある。大きな回遊魚を生かして入れておくためのものだ。ところで、「イケス周りはよく釣れる」という説がある。筆者はわりとこれを信じている。特に根魚が釣れる印象がある。というのも、イケスには餌がまかれており、その残飯に魚がよりつきやすい。ただ、イケスの中は大型回遊魚だけあって、彼らの餌となるアジなどはあまり釣れる気がしない…。
ところで、イケスから漏れ出した個体が、まれまれ釣り人の仕掛けにヒットする。窮屈なところで回らされているだけに、口やヒレなどが変色したり曲がっていたりすることが特徴といわれる。まあ脱走したヤツをまさか意図して釣れないし、釣って戻しようがないし、そのまま持ち帰ってもいいだろう。
以上、いくつか「港で見るアレ」について解説してきた。ちょっとした話のタネにでもなるだろうか?
<井上海生/TSURINEWSライター>