京都【しろ】~ヒトサラ編集長の編集後記 第80回
島根県浜田市で評判だった1日1組限定のレストラン【ミアパエーゼ】。昨年夏に京都の烏丸御池に進出するやいなやミシュランの星を獲得、話題になりました。京都での新店の名前は【しろ】。ちょうど「都をどり」の季節と重なり、京都はいつもにも増して人で溢れていました。
【しろ】は烏丸御池駅から歩いて3分ほどのIDOというビルの2階にあります。
「何を食べているのかはっきりわかるよう食材にスポットを当てたい」との思いからそう名前を付けたと語るのはシェフの竹中篤志さん。「余白、純白、白(もう)す」というのが店のコンセプトだそうで、店の壁や器も白を基調とした清々しさに満ちています。
IDOという建物の中庭には井戸があり、そこから汲み上げる地下水で料理が提供されます。地元・島根の食材と京都の軟水が合わさり、イタリアンというジャンルながら、京料理の趣もところどころに感じられる料理を味わうことができます。
席はカウンターとテーブルが2席です。それにシェフとマダムとサービスが2人、計4人それぞれのリレーションは無駄がなく、ホスピタリティも素晴らしい。
カウンターに座り、お水をいただいた段階で、この店は好きになってしまいました。
シャンパーニュをいただき、最初は新玉ねぎのスープです。玉ねぎを弱火で炒め、井戸水でのばしたもので、爽やかで体の火照りが静まります。魚醤やレモンでマリネされた島根の猛者エビのねっとりした食感もいい。
そして定番だという大アナゴのフリット、プロシュート乗せです。目の前でシェフがベルケルのスライサーでスライスしたものを熱々のアナゴのフリットに乗せて行きます。サクッとした香ばしいアナゴのフリットと、それをコーティングするプロジュートの油の旨み。イタリアや日本でも味わえる一皿ではありますが、ここではアナゴ自身の美味しさが魅力です。
メニューにはないのですが、と出してくれたのはオリーブオイルの香るふきのとうのアイス。ふきのとうはシェフのお母様が地元から送ってくれたものだそう。天ぷらっぽいニュアンスを出すために天玉と塩がアクセントとして添えられています。モーゼルのリースリングを合わせてもらいます。春の苦みのうれしい一品です。
春っぽいものが続きます。ホワイトアスパラです。蒸し焼きにされたアスパラに、爽やかなオランデーズ・ソース、濃厚なポーチドエッグが乗っかります。卵の黄身を割ってソースとからめていただきます。
カプレーゼですね。モッツアレラの中に新鮮なブッラータが忍び、柚子レモンの発酵ジャムでマリネしたトマトやキンカンの酸味が爽やか。合わせていただいた島根の純米酒「開春 イ宛(おん)」のミルキーな感じと、面白いペアリングです。
ホタルイカも欠かせない食材です。ソースはアンチョビやトマトで煮込んでいるそうですが、塩辛っぽい感じがいいですね。ホタルイカも目や嘴を丁寧に取り除いてあるから口の中でひっかかる感じもなく、青山椒のオイルのおかげでスッキリした感じも出ます。
トスカーナのサンジョベーゼで合わせます。焼きたてのパンがうれしいですね。ソースも全部パンに吸わせてワインとともにいただきます。
魚は浜田港からカサゴです。3日ほど熟成させて皮を炭火で炙ったもの。ソースはカリフラワーのピュレ、猛者エビのだしにコリアンダーがいい味を出しています。釣りのカサゴは肉厚で甘みも旨みもしっかりしています。
メインの肉は熟豊ファームからの経産牛のラムシン。ピエモンテの赤といただきます。ラムシンとはランプ(臀部)の芯の部分で柔らかな赤身です。中をレアで焼いているのでさっぱりしています。ソースと同時に添えられた塩や山ワサビを少しつけていただきます。甘いさつまいも「紅はるか」が肉に隠れています。
シェフが目の前でパスタを打ちはじめました。最後はタリオリーニを用意してくれるのだそう。打ちたてのパスタにフグの白子と青のりのソース。ワサビもふんだんに使われています。白子の濃厚さがクリームのようで、そこに青のり、ワサビの爽快感が合わさって満足。ワインはポルトガルから白のナチュール。
食事のあとのドルチェは2品。紅八朔と苺です。紅八朔でさっぱりして、苺の優しい甘さで締めます。
最後に出していただいたビスコッティをコーヒーに浸しながら、しばし余韻に浸ります。
都をどりが終わると、京都はだんだん暑くなっていくんですね。
次は祇園祭のときに来れたらいいな。そんな思いが頭をよぎりました。
しろ
【電話】070-6437-8605
【住所】京都市中京区蛸薬師町287IDO 2階
【エリア】京都御所/西陣
【ジャンル】イタリアン
【ランチ平均予算】-
【ディナー平均予算】-