横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸計画が本格始動へ。2030年開業を目指した計画内容とは
日本2位の長さを誇る横浜市営地下鉄ブルーライン
藤沢市の湘南台駅から横浜市のあざみ野駅までを結ぶ横浜市営地下鉄ブルーライン。駅数は32で、営業距離は40.4km。地下鉄としては都営地下鉄大江戸線の40.7kmにわずかに及ばない日本2位の長さを誇る。おもな停車駅には、都心部の関内駅や横浜駅、新幹線も停まる新横浜駅などがあり、神奈川県民にとって重要な交通手段となっている。
そのブルーラインには11年前の2014年から延伸計画がある。そして2025年4月、横浜市はこの計画の設計業務や地質調査、環境影響評価(環境アセス)の委託業務を今年度中に発注する方針を発表した。いよいよ本格始動となるブルーラインの延伸計画。そもそもどのような計画なのか、実現すればどのように便利になるのかなど、詳しい内容を解説しよう。
あざみ野駅から新百合ヶ丘駅へ延伸する計画
横浜市営地下鉄ブルーラインの延伸計画は、横浜市のあざみ野駅から川崎市の新百合ヶ丘駅の約6.5㎞間をつなぐものだ。事業主体は横浜市交通局。概算事業費は約1,720億円で、新駅は4駅を予定している。
これまでの計画の経緯は以下のとおりだ。
2014年:事業化に向けた基礎調査を開始
2019年:横浜市と川崎市が連携・協力するとして覚書を交換。川崎市側の有力ルート案について意見を募集
2020年:概略ルートと駅位置について公表
2025年:設計などの委託業務を今年度中に発注する方針を発表
この計画の背景として新百合ヶ丘駅が位置する川崎市北部は、坂が多い地形といった理由から駅勢圏に比べてエリアの奥行きが広いという特性がある。そのため駅や商業施設へ行くためにバスを利用する人が多い。また、川崎市の主要エリアである新百合ヶ丘駅周辺は、新百合ヶ丘エルミロードなど利便性の高いさまざまな施設が集まっており、現在も開発が進んでいる。これらのことから、ブルーラインが新百合ヶ丘駅に乗り入れることで、鉄道とバスの連携による地域の活性化が期待されている。
概略ルートと駅位置の基本的な考え方
概略ルートと駅位置の基本的な考え方は、次のようになっている。
・周辺の地形や交通構造物への影響などを考慮し、地下トンネル構造を基本とする
・新駅については、駅の間隔を横浜市営地下鉄の既存駅と同様にすることを基本とし、4駅とする
・横浜市側ルートについては、公有地を有効活用し、既設のあざみ野駅から川崎市との市境となるすすき野付近を基本とする。駅の位置は嶮山およびすすき野付近を基本とする
・川崎市側ルートについては、北部地域の公共交通ネットワーク充実や駅周辺の活性化を図るため、ヨネッティー王禅寺付近に駅を設置する
延伸ルートと4つの新駅の位置
では、具体的に延伸ルートと4つの新駅の位置を確認していこう。延伸ルートは、まず、あざみ野駅から西へ延びていく。そして嶮山から北西方面へ進み、すすき野からほぼ真北に方向を変える。さらにヨネッティー王禅寺あたりで再び北西方向になり、新百合ヶ丘駅に到着する。
4つの新駅の位置
①嶮山(けんざん)付近
既存のあざみ野駅の次は嶮山付近が予定されている。具体的には複合施設「あざみ野ガーデンズ」の近くだ。あざみ野駅からあざみ野ガーデンズまで歩けば20分以上かかる。新駅が開業すれば利便性は大きくアップするだろう。
②すすき野付近
嶮山付近の次の新駅予定地は、すすき野2丁目交差点付近だ。こちらからはあざみ野駅行きやたまプラーザ駅行きのバスが多数発着している。こちらも新駅の開業による利便性向上が大いに期待できる場所だ。
③ヨネッティー王禅寺付近
ヨネッティー王禅寺とは、川崎市のスポーツ複合施設だ。この付近にも新駅が設置される。こちらの周辺は交通量が多く、渋滞が問題視されている。新駅の開業によって渋滞の解消も期待されている。
④新百合ヶ丘駅南口付近
この周辺は坂道が多く、徒歩や自転車の移動は大変だ。そのため、バスの交通網が充実している。だが、それゆえ渋滞が多いという課題もある。こちらも新駅の設置による渋滞解消に期待したい。
ブルーライン延伸のメリット
ブルーライン延伸で期待できることは、上記のような各新駅周辺の活性化以外にも次のようなことがある。
移動時間の短縮
現在、あざみ野駅から新百合ヶ丘駅まではバスを利用して約30分かかる。それが乗り換えなしで約10分になる。約20分の短縮だ。また、新百合ヶ丘駅から新横浜駅は約35分から約27分とおよそ8分短縮される。
新幹線アクセスの強化
新百合ヶ丘駅がある川崎市北部や隣接する多摩地区などから、東海道新幹線が接続する新横浜駅へのアクセスが向上する。
建設費の高騰など新たな懸念点も
横浜市営地下鉄ブルーラインの開業は、2030年予定とされている。その準備として横浜市が、設計などの委託業務を今年度中に発注する方針を発表したというわけだ。しかしながら、コロナ禍による鉄道需要の減少や建設費の高騰などで2030年の開業を危ぶむ声も聞こえてくる。今後の動きに注視したい。