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跳ね馬たちの歓喜と饗宴 Ferrari Racing Days 2025

PARCFERME

本年は5ラウンドで実施された「フェラーリ・チャレンジ・ジャパン」。その中で、年に一度さまざまなホスピタリティを充実させて開催されるのが「Ferrari Racing Days」である。今年は2023年と同じく富士スピードウエイで開催された。フェラーリがサーキット走行向けに開発した最新のモデルで実施される同イベントを2023年、2024年と取材してきた本誌のカメラマン、J .ハイドがレポートする。

photo:J.ハイド 練習走行が始まる前にピット前で撮影。ノーズが美しく並ぶワンメイクならではの一コマ。

「Ferrari Racing Days」は昨年の鈴鹿サーキットでの開催を経て、今年は富士スピードウェイに帰ってきた。全長は鈴鹿の方が1.3kmほど長い一方で、コース幅は平均して富士の方がかなり広い。

フェラーリのようなややワイドなGTカーにとって走行に適したサーキットだといえよう。

また都内から渋滞さえなければ約1時間半程度で到着するという点で、一般観客はもちろん、関東圏のフェラーリオーナーにとっても参加しやすい会場であることは間違いない。

そのせいもあってか、今年、日本で10回目となる節目に全国から480台以上のフェラーリ、そして4000人を超えるファンとオーナーが参加したという。

photo:J.ハイド 欧米のクルマは俯瞰から見ることについてもデザインされていると感心することが多いが、フェラーリはまさにその真骨頂。跳ね上がったガルウイングとシンメトリーなパワーユニットが美しい。

さて今シーズンの競技車両「Ferrari 296 Challenge」は、パワーユニット、エアロパッケージ、そして動的な性能に大幅な改良が施されているという。エンジンはバンク角120度のV6エンジンを搭載。2992ccツインターボ仕様で、出力は700 cv、最大トルク740Nmを発揮する。

エアロパッケージも、250km/hでスポイラーの迎角が最大のときに870kgを超えるダウンフォースを発生させており、これはスーパーGTの300クラスに匹敵する。他にも高性能なABSシステムや新開発の19インチタイヤなど、ほぼそのままの形でサーキット走行が満喫できる仕様となっているのだ。

加えて、ドライバーに合わせたシートやLTE送受信によるコミュニケーションシステムなど、純粋なレースに相応しいカスタマイズが可能な設計となっている。つまり、通常のワンメイクという範疇を超えて、フェラーリが考えるレース用の最新技術の塊とも言える車両によるレースなのである。

レースそのものもハイレベルだが、ル・マン優勝レーシングマシンベースの限定車「499P Modificata」など新型車両の走りも見逃せない。さらに加えて、全国からのオーナーの愛車、数百台がパーキングに並び、サーキットをパレードする姿は毎回圧巻である。

photo:J.ハイド パーキングにあった白いフェラーリ2台と2023年6月に開催されたル・マン24時間耐久レースの優勝車「499P」をベース車両にした、新型モデル。滅多にお目にかかれないクルマ達だ。

非日常と緊張感は、視覚にも聴覚にも

パレード車両の中には、普段はなかなか見られない白や鮮やかなブルーのクルマ、そして赤だけでも様々な違いを確認することができる。毎年感じられるのだが、それだけでもかなりの非日常感を味わうことができるのだ。

photo:J.ハイド ピットロードの入り口、そして最終コーナーからストレートの立ち上がりは誰でも見やすく、撮影もしやすい場所だ。

イタリア本国からのスタッフが来日してヴィンテージのF1カーを走らせるイベントも、非常に貴重なものだ。

富士でF1が開催されたのは1976年と77年、そしてそれから30年後の2007年と2008年であり、それ以降は開催されていない。

理由はそれぞれに原因となる大きなアクシデントがあったからに他ならない。それだけにヴィンテージとはいえ、フェラーリF1が富士スピードウェイを疾走する姿には、筆者として感慨深いものがある。

毎回感じることだが、オーナーのみならずファンも、小さなお子さんをつれた家族や若いペアの方々が多く、イベントをマイペースで楽しんでいる様子であった。高騰する各種のイベント入場料の中、基本無料で駐車場代のみで観戦できることも大きな理由だろう。

それでいてレースのみならず、車好きにとってはここでしか味わえないノーマルアスピレーション時代のF1サウンドを味わうことができる。2013年以前のマシンによるそのエンジン音はまさに耳をつんざくような高音を伴う。

それもそのはずで、現在のハイブリッドエンジンを搭載するF1はエンジン回転数が15000rpm以内に制限されているが、当時は無制限である時代が長く19000rpmを超えていたと言われる。そのエンジンから発する金属音が聞こえただけで、そこに猛獣がいるが如く、人が制御できていない強大なエネルギーが存在するかのように錯覚するのだ。

その金属音を纏いながら富士スピードウェイを走るフェラーリF1は、速度もさることながら、近くにいる者にとてつもない「緊張感」をもたらすのである。

この「緊張感」を是とするか、耐えられないと感じイヤープラグが欲しくなるか。その点がクルマ好きという中でも、何かの分岐点になるようにも思われる。

photo:J.ハイド 美しい陽光を浴びてストレートを駆け抜ける2台。中でもヴィンテージF1マシンのサウンドは格別だ。

富士開催ならではの美しき饗宴


筆者は今年で3年に亘る取材となるが、フォトグラファーとしてもレースやイベントを「正確に記録する撮影」から、「記憶に残る美しいシーンを撮る」ことに狙いが移行した時期であった。その意味からしても、歴代の美しいフェラーリを堪能し、撮影できる本イベントは大変得難い機会であると感じている。

富士スピードウェイのメインストレートは、南西から北東に抜ける。晴れた日は、夕方近くになると最終コーナーを立ち上がったマシンがやや逆光気味の光に包まれてストレートに入ってくることになる。

ピットスタンド側に入れるようなイベントの場合、最終コーナーを過ぎたあたりは関係者の駐車スペースで、一般の観客も比較的入りやすい場所となっている。今年もストレートの立ち上がりやピットロードの入り口は、走るマシンをとても贅沢に真近で見ることができた。

さらに天気も良く、走りの背景には大きな富士山を臨むことができた。これこそ正に富士スピードウェイでしか見られない光景であり、やはり日本を代表するサーキットだと実感できるのである。

富士スピードウエイで開催された今年の「Ferrari Racing Days」は、2日間とも天候に恵まれた。10回目という節目の開催は、それを祝うかのような光輝く跳ね馬たちの咆哮が響きわたる「美しき饗宴」であった。

photo:J.ハイド

J.ハイド
写真家、ライター、ドローンパイロット。広告会社で大手企業の担当をする傍ら、ドローンなど最新の撮影技術を学ぶ。
現在は、フリーランスとしてFORMULA EでFIA公認フォトグラファーとして撮影を重ねる一方、
イタリアPHOTO VOGUE、スウェーデン1x.com に認定され、ポートレート作品が掲載されている。
新車の発表があるとディーラーで試乗も楽しむ一般目線の車好き。ランチア、アウディ、BMW、ボルボなど9台を乗り継ぎ、
2022年初代レクサスNX 200tに乗り換える。ニコンとライカのミラーレス機を駆使してココロが動く写真を追求している。

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