3人の息子たちが継承した、香椎に根付く創業50年の老舗レストラン
香椎の「ビストロ」が今年の3月に50周年を迎えました。
「ビストロ何々」ではなく、「ビストロ」という店名です。
それこそまだ「ビストロ」ということばが、全く一般的ではなかった50年前から、洋食、フレンチを個人店としてやっていたとは驚くべきことです。なにしろ、当時、フレンチというのは高級料理で一部のホテルで食べるようなものでしたから。
そんな時代にここを立ち上げたのは安武弘志さん。1974年のことです。安武さんは「花の木」が中洲にできたとき(現在は大濠公園内)の創業メンバーで、サービスを担当していました。
それから今に至るまで、調子がいいときも、よくないときも、信頼のおけるスタッフたちとこの地で料理、そして憩いの場を提供してきました。
安武さんには3人の息子さんがいて、3人それぞれ東京の別々の三つ星レストランなどで修業をして、数年前から1人、2人と父の元へと戻ってきました。そして2022年3人全員が揃い、親子4人と元からいるスタッフたちで、コロナも乗り越え50周年を迎えたのです。
50周年を機に創業者である弘志さんは現場を退きましたが、3人の後継者たち、そして弘志さんとともに45年働いてきた高橋三千年シェフ(写真右端)、36年働き続けているサービスの岩村隆弘さん(写真左端)が切り盛りする「ビストロ」を久しぶりに訪問しました。
夏になると外壁を覆う蔦の葉の緑が青々と繁ってきます。扉を開けると創業当時からほとんど変わっていない落ち着いたレストランの佇まい。私の記憶では舞鶴にある「花むら」に色合いや太い柱などの雰囲気が近いように感じましたが、フランスの郊外にあるレストランといった風情です。
メニューにはハンバーグ、グラタン、ステーキ、パスタなど、カジュアルな洋食メニューからクラシックなフランス料理までたくさんありますが、きょうは「とうもろこしのクリームスープ」(500円)と「牛タンの赤ワイン煮込み」(3980円)を選びました。
この店のスープはどれも絶品なのですが、シンプルなこのコーンスープにこそ実力が出ている気がします。ごまかしの利かないこのスープを一口流し込むと、滑らかな舌触りと素材の甘みが口中に染み渡ります。
そして「牛タンの赤ワイン煮込み」は丁寧な下処理により臭みなく柔らかで、たっぷりの赤ワインでしっかり煮込んだ味わいはたまりません。
この日はさすがに入りませんでしたが、ファンの多い「ワタリ蟹のクリームパスタ」(1630円)や「カニクリームコロッケ」(1320円)もおいしいんですよね〜。
50年の老舗であり、蒼々たるメンバーによる料理にサービスと聞くと尻込みする方もいるかもしれませんが、一度行けば誰もが実感できる香椎という町に根付いたアットホームなお店です。家族の誕生日を祝うファミリー、若いカップル、熟年のご夫婦など、あらゆる年齢層の方々がそれぞれ楽しそうに食事をしているのが印象的です。そしてそこにつかず離れずの距離感で寄り添うスタッフたち。これこそ50年の歴史が築きあげたお店の風格なのかもしれません。
Restaurant Bistro(レストラン ビストロ)
福岡市東区香椎駅前2丁目15−1 香椎永野ビル 1F
092-671-3770