【青春18きっぷおすすめ旅】大阪発2泊3日、山陽で“異日常”な旅。食堂、朝市、工場夜景まで!(姫新線・芸備線・呉線ほか)
地元の通勤通学客のように各駅停車に揺られ、小さな駅で降りてみる。港町の食堂、街角の総菜店、地の物が集まる市場。地元人の日常は、旅人にとっては新鮮な体験だ。旅といえば“非日常”だけど、いつもと“異なる”日常を体験する旅へ。海から山、また海へと、山陽をぐるりとローカル線で。
「大阪発2泊3日 山陽“異日常”旅」のルートはこちら!
【1日目】
大阪駅→山陽本線・姫新(きしん)線→新見駅(泊)
【2日目】
新見駅→伯備線・芸備線・山陽本線・呉(くれ)線・山陽本線→福山駅(泊)
【3日目】
福山駅→山陽本線・赤穂(あこう)線・山陽本線→大阪駅
【1日目】大阪駅→新見駅 兵庫県の北部でローカルを感じる
時刻表を持って旅をするなんて、学生時代以来だ。元来がアナログなので、「レ」マークと数字の羅列を辿るほうが経路を把握しやすい。今回は5路線を乗り継ぐ鈍行旅。路線図に旅程をマーカーで色をつけると、姫路を起点に山と海をぐるりと囲む楕円が描かれた。
明石で立ち寄った『みどり食堂』のお姉さんたちに「いってらっしゃい!」と見送られ、姫路駅からキハ127形2両編成に乗り込む。交通系ICカードは使用不可、扉もときどきボタン開閉式になる姫新線は、文字どおりのローカル線。途中下車した本竜野は醤油の郷として観光客が訪れるが、佐用まで来るとほぼ学生しか乗り降りしないスクールバス然。駅前カフェの『コバコWork&Camp』では、「雇用創出により人口流出を食い止めたい!」とのオーナーの思いを聞いて、胸が熱くなった。
「美作(みまさか)」とつく駅名が増えると、岡山に入ったことを実感する。野を行き、谷を行き、渓流沿いを減速走行しながら東へ。鉄道のまち・津山で降りたら駅前のSLと対面し、新見へ。20時前なのに駅前には明かりはなく、居酒屋も早々に店仕舞いしていた。津山でアテとカップ酒を買っておいてよかった。
【明石駅】『みどり食堂』ふかふか玉子とぷりぷりタコの相性ばっちり
1946年に祖父が始めた店を家族で継ぐ。焼き魚に煮魚、ケースに並ぶおかずをめいめい取り、ライスで定食にしても、ビールの肴(さかな)にしても。鮮度抜群の魚に負けないぐらい、働くお姉さんたちの笑顔もいきいきしている。
☎078-911-3579
9:30~19:30(日曜は~17:30)、月休(ほか不定休あり)
兵庫県明石市本町1-12-11
JR山陽本線明石駅から徒歩8分
【本竜野駅】醤油の郷をしみじみ散策
【本竜野駅】『醤油の郷 大正ロマン館』400年の発酵文化が息づく
旧龍野醤油同業組合の事務所として大正13年(1924)に建設。現在は醬油醸造の歴史や観光資料を展示。同敷地内の旧醸造工場にはカフェと物産品販売の「クラテラスたつの」が入り、発酵ランチや醬油ソフトが大ブレイク中だ。
☎0791-72-8871
10:00~17:00、月休(祝日の場合は翌日)
兵庫県たつの市龍野町上霞城126
JR姫新線本竜野駅から車5分
【佐用駅】人々も熱い気持ちも集まる場所
【津山駅】鉄道のまちで歴史を体感!
【2日目】新見駅→福山駅 山間を抜け、車窓景色も緑から青へ
新見駅始発の列車の外で、ゆっくり夜が明ける。芸備線は中国地方で最も長いローカル線。備後(びんご)落合駅で乗り換え、三次(みよし)へ向かう。
『広島三次ワイナリー』は朝9時半からワインの試飲ができるという天国のような施設。さすがに朝なので控えめにし、ほろ酔いで呉に着く。
ここからは海沿いを走る呉線~山陽本線だ。経由する三原駅は、三原城の石垣の上にホームがある珍駅。鉄道用地がないため、城の敷地内に駅を造ってしまった発想がワイルドだ。
【三次駅】『広島三次ワイナリー』地産ワインで朝からほろ酔い気分
日本ワインの先がけ的存在。2007年から地元の自社農園と契約農家でブドウを育て、TOMOÉシリーズを中心に醸造。ワイナリーでは製造工程の見学ほか、無料試飲、プレミアム銘柄の有料試飲ができ、カフェやレストランも併設する。
☎0824-64-0200
9:30~18:00(カフェは8:00~17:00)、1〜3月の第2水休
広島県三次市東酒屋町10445-3
JR芸備線三次駅からバス10分の三次ワイナリー下車すぐ
元軍事路線の名残がここに
【三原駅】『おはぎのこだま』地元民溺愛。行列覚悟な母の味
昭和42年(1967)におはぎや寿司の店として創業。現在の名物は直径30cmほどあるタコ天1000円で、揚げたてにかぶりつくと「プリッ!」と音がするほどジューシー。たこ飯や鶏唐揚げ、げそ天などケースの揚げ物につい目移り……。
☎0848-63-4275
7:00~18:00(売り切れ次第終了)、月休(祝の場合は営業)
広島県三原市城町1-6-1
JR呉線三原駅から徒歩2分
【3日目】三原駅→大阪駅 朝市に工場夜景……海沿いで一日中遊ぶ
翌朝、わざわざ赤穂(あこう)線を通って網干(あぼし)に向かったのには理由がある。伊里(いり)駅近くの『真魚市(まないち)』は、にぎわいのピークが朝7時というガチな朝市。旅途中なので海鮮天ぷらなどを買い食いする程度にとどめ、再訪を誓った。
赤穂を経由し、最終目的地の網干へ。旅のフィナーレに『旧網干銀行湊倶楽部』は訪れておきたかった。レトロな空間でディナーを楽しんだあとは、工場夜景で締めくくり。デートかよっ!と自分にツッコミを入れるが、たくさん折り目のついた時刻表にいろんな人との出会いが刻まれているので、寂しくはないぞ。
【伊里駅】『真魚市』瀬戸内海の幸が大集合
25年続く朝市で、決して観光市場化していない「ザ・地元の市」。伊里漁協や向かいの小豆島(しょうどしま)などの漁師が朝獲れの魚介を運び、その場で値付けして直売。魚以外にも青果、豆腐、パン、総菜、海鮮屋台など30以上の店舗が出る。
☎0869-67-0016
日の7:00~12:00(平日の小売り営業は9:00~15:00、水休)
岡山県備前市穂浪2837-5
JR赤穂線伊里駅から車4分
【播州(ばんしゅう)赤穂駅】レトロ博物館にはあの頃の日常が?
【網干駅】『旧網干銀行 湊倶楽部』歴史薫る空間で本格洋食を贅沢に
大正11年(1922)に網干銀行本店として竣工した風格ある建築を、「まちの財産として遺そう」と現オーナーがレストランに。元パン職人だった料理長による“パンに寄り添う洋食”がいただける。食パンの購入も可。
☎079-289-5189
11:30〜14:00LO・18:00~21:00LO、水・木休
兵庫県姫路市網干区新在家640
JR赤穂線網干駅から徒歩10分
取材・文・撮影=猫田しげる
『旅の手帖』2024年7月号より