縁結びを願う桃の節句に、田村市船引町の食堂へ愛の「箱パカ」プロポーズ
第90回「呑みめしや いっぷく」
新生活を目前にようやく春めきだした3月。第90回の「ふくしま定食部」は田村市船引町を目指します。
福島市内からは、高速道路を使わずとも二本松の小浜街道から三春を抜けて約1時間半。JR船引駅近くの船引バイパス(国道349号線)沿いに『呑みめしや いっぷく』さんがあります。
2006年に田村市船引字石崎にオープンののち2015年に現在の場所に移転。高台から微笑みかけるように佇むクリーム色の外観。
腹ペコわくわくしながらマスタードイエローの暖簾を潜ると、ナチュラルカラーの明るいテーブル席へ滑り込むようにゲートイン。今日は平日、よーいドンの開店11時を5分過ぎたばかりの到着でしたが、すでにシード選手の如き2名先客の人気。
これまで何度かお邪魔してきましたが、『いっぷく』さんは、味わいはもちろん盛りの良さでも人気。先客のオーダーに気持ちが揺らぎますが、今日はお店の代名詞「上カツ丼」と決めてきました。
セルフのお冷を注ぎに行きつつオーダーを告げたら、店内を眺めて食堂浴。さすがは“呑みめしや”、店内に並ぶ焼酎や冷蔵庫の日本酒が誘ってきます。あぁ…近所なら常連になりたい!
聞こえてくるお客さんのコールは高確率で代名詞の「かつ丼」。毎回迷う、「かつ丼」か、「上かつ丼」か。いずれも、厚切りでも柔らかな麓山高原豚。100gロースの通常かつ丼でも十分な満足感。
でも、170gオーバーのロースかつが鎮座する“上”の特別感に浸りたくなるものです。
個人的に「かつ丼」と双璧を成すのは「焼肉定食」。柔らか豚バラ焼肉は、しっかりとニンニクが効いた甘めのタレによく絡みます。
そしてタレを染ませたキャベツがまた旨い。このタレを経由したら、基本的にご飯が進むシステム。ぽってりと添えられたマヨネーズは、スライドきゅうりや焼き肉を掠める味変の重要アイテム。
到着か!と思いきや、他のお客さんへ届く「上かつ丼」に数回フェイントを掛けられるも、焦れるほどに恋しさは募るばかり。
待つこと10分ほど。ついに目の前に供された「上かつ丼」(1,300円)の、毎度ながらの圧倒的ビジュアルにニヤケもよだれも止まりません!
丼に蓋を立てたそのさまは、ひざまづいてプロポーズする、婚約指輪の箱をパカッと開けたような眩さ。
本日、あらためて食堂愛を誓います!
丼を覆うほどのカツは玉子のえくぼも愛おしく、食べやすく縦横にカットされ、ちょっとした大会で優勝レベルの腹筋のよう。トップの三つ葉も“食堂のモヒート”の如くほのかに鼻腔をくすぐって食欲を増幅。
さて、カツを食べるときのルーティン、鍵盤でいうところの“ミ”から箸入れを。
香ばしくクリスピーな衣の先には、上質なロースの程よい弾力。スッと歯が入ったかと思えば、黒糖ニュアンスを感じるコクと甘みのタレの風味。
玉子もしっかり火の入った部分と、とろりTKGのような部分のグラデーション。
すべてを混然一体に、夢中で掻き込むなか、息継ぎに箸を伸ばしたのは、これがうれしい冷ややっこ。大豆をしっかり感じる木綿豆腐に、削ったかつお節が小鉢と侮れない旨さ。
気づけば店内は満席の賑わい。カツ丼が届くたび、いたるところでマリーミー!
『いっぷく』さんは「かつ丼」を始め、飯もののイメージがありますが、麺類もオススメ。野菜たっぷりな「タンメン」や「ちゃんぽん」、「みそラーメン」をオーダーする声も多数。
最後まで温かく楽しめるようにと、スープは熱っつ熱つ!中太ストレート麺を野菜と一緒に頬張ると体の芯まで温まります。
そして忘れてはいけないカレーの驚き。
初オーダーのときに、いわゆる食堂の「黄色い」カレーを想像していたら、黒寄りの褐色カレーの旨さにびっくり!スパイスや小麦粉をじっくり炒めたカレーは、レストランカレーのような優しい味わい。
カレーが食べたいときは、ちゃんぽんを麺半分にして、半カレーを添える呪文、「チャンポンハンブンハンカレー」を唱えましょう。鶏の旨みが詰まった鶏白湯が染みるちゃんぽんと、肉と野菜の旨みが溶け込んだ上品なカレーの往復が大好きで、寒い日は特にオーダーしたくなる組み合わせ。
代表は食肉技術専門士の資格を持つ肉のスペシャリスト、肉の見方に関して間違いありません。さらに、米、キャベツ、玉ねぎ、長ねぎなどの野菜は自家栽培。
『お客さんに毎日喜んでもらいたい』と、上質な肉と新鮮な野菜をリーズナブルに惜しみなく提供されているんです。最後のひと切れですべてを拭うように胃に納めたら、満腹満足でお会計ですね。
近隣の方のひと休みの場になればとの想いと、食べに来てくれた方に「ふく」が訪れるようにと名付けられたいっぷくさん。
この味わいを求めて船引町まで足を運ぶ価値のあるお店です。
ごちそうさまでした!
呑みめしや いっぷく
住所
田村市船引町東部台3-69
電話番号
0247-82-2833
営業時間
11:00~14:00(13:50ラストオーダー)、17:30~22:00(21:50ラストオーダー)
休み
毎週火曜日、月曜日の夜
※祝日は営業する場合あり。店舗へ問い合わせを
駐車場
15台
リンク
https://www.instagram.com/nomimeshiyaippuku/