アレックス・スコルニック、自身のESPモデルは「どんなギグに出ても不安がない!」
ベイエリア・スラッシュのレジェンド:テスタメントでテクニカルなソロを聴かせたかと思えば、ジャズに特化した自身のトリオで深みのあるインプロヴィゼーションに興じる多才なギタリスト:アレックス・スコルニック。今年始めのNAMMショウ2024の会場で、2013年にエンドースを始めたESPと彼が全幅の信頼を寄せる同ブランドのシグネチュア・モデルについて、本人に話を聞いたミニ・インタビューをお届けしよう。現在制作中だというテスタメントの新作、さらには今後のESPとの新たな取り組みなどについても話してくれた。
ジャズにも映える良いクリーンとメタル向きのフィードバック音が得られること
YG:ESP製シグネチュア・モデル“Alex Skolnick FR”は2016年に発表されましたが、現在、使い心地はいかがですか?
アレックス・スコルニック(以下AS):素晴らしいよ。多様な音楽環境で俺が使うことのできるギターは数本ある。違うタイプのギターも持っているけど、使いどころが限られているんだ。クリーンのみだったり、ジャズ専用だったり、ヘヴィ・メタル専用だったり。このシグネチュア・ギターはそういった所すべてに適応できる。今こうしてNAMMショウに来ているけど、今回俺は多岐にわたるスタイルで演奏を行なった。ジャズもあればロックもあるし、メタル・アリージェンスのライヴではメタルを弾いたり、先日はレスリー・ウェストの曲を弾いたりもしたしね。俺のモデルは、そういったシチュエーションをすべてカヴァーできる。
YG:特に気に入っている箇所は? 入手当初から、スペック面で変更や改良を加えたところはありますか?
AS:そんなにたくさん変えているところはない。とても満足しているよ。ペグにちょっとだけ手を加えようと話し合っているところがある。というのも最近、ESPの違うモデルを手に入れたんだ。USA製で、そのモデルのペグがとても気に入った。自分のモデルにも搭載できないか、今検討中だ。それ以外はとても良い感じで、とにかく快適に感じるね。なぜなら、このギターがどんな風に振る舞うのか把握できているから。どんなギグに出ても不安がない。自分の探している音が必ず出せるんだ。
YG:つまり、1本のギターでどんな状況にも対応できるということですね?
AS:ライヴでは、曲によってギターを持ち替えることがある。トリオでプレイする時は特定の曲で別のギターを使うんだ。例えば「Culture Shock」(2018年『CONUNDRUM』収録)というカントリー・ソングでは、(フェンダー)テレキャスターを使った。その部分だけね。でも(テスタメントの)ライヴではESPだけを使うよ、音が良いから。
YG:ピックアップもセイモア・ダンカンのシグネチュア“Alex Skolnick”ハムバッカーですが、こちらにはどんなこだわりがあるのでしょうか?
AS:秘密のようなものはないと思う。開発時はいくつかの異なるモデルを試奏して、違うトーンの組み合わせを試したりした。俺はジャズのリックにも映える良いクリーン・トーンがほしいし、同時にメタル向きな大音量が出せて、良いフィードバック音が得られることが大切だ。ただし、キーキー言わないこと。俺がエレクトリック・ギターで叫ぶようなプレイをすると、ピックアップによっては許容範囲を超えて、俺が望まない高音を出してしまうものがある。そういう物は却下される。だからトーンが良いこと、静かであること、フィードバック音をコントロールできることなどが重要だ。
YG:演奏中にギターのトーン・ノブを調節したりすることはありますか?
AS:ジャズでクリーン・トーンの時は少しだけ絞ってプレイするよ。ただ、あまりやりすぎないようにしている。パット・メセニーなんかはかなりトーンを絞っているけど、俺の場合はほんの少しで十分だ。そうすることで、ジャジーなラインがよりスムーズに弾けるようになる。
YG:理想のサウンドを求めて試行錯誤するギタリストは多く、中には永遠に機材探しの旅を続ける人もいます。あなたは希望のモデルやセッティングが手に入ればそれを貫くタイプですか? それとも常に試行錯誤を繰り返しているのでしょうか?
AS:試行錯誤は常にある。だけど、これならOKと考えられるセッティングは決まっているよ。例えば初めて使うアンプに出くわした場合、すぐに「低音はこんなにいらないな。ミッドは多すぎると良くない。トレブルはちょっと多め。プレゼンスは多すぎない…」と、ひとまず自分が快適に感じるセッティングに落ち着けていく。実際の音作りの段階では、そこから微調整をやっていく感じ。これはエフェクト・ペダルの時も同じだ。新しい機材を試すのも好きで、ペダルも色々試すから、新しいペダルを追加するとそれまでのアンプやギター周りなんかにセッティングの変更が出てくる。だけど、通常自分の中で快適に弾ける“基盤のセッティング”というものはできているんだ。
YG:ゲインは通常、どれぐらいに設定していますか?
AS:弾いている状況によるよ。ヘヴィ・メタルの場合は、自分のペダルがある時はペダルで歪みを作る。組み合わせて使っている。
YG:ジャズ・バンド向けに作ったアイデアがテスタメントの曲にハマったか、もしくはその逆といったこともありますか?
AS:うん、時々あるね。今思い出せる中だと、「Dangers Of The Faithless」(2008年『THE FORMATION OF DAMNATION』収録)だ。5/4拍子という、いつもよりちょっと複雑な曲。サウンドがダークな響きなので、採用したアイデアがあった。本来はトリオで使う予定で実際に少し試してもいたんだけど、「これはテスタメント向きだな」ということになったんだ。
YG:そのテスタメントは、現在アルバムを制作中だそうですが…。
AS:その通り。
YG:進捗はいかがですか? あなたのインタビューで、新ドラマーのクリス・ドーヴァスが「バンド初期のエネルギーを蘇らせている」と話していました。あなたもそれに刺激を受けて、これまでとは違ったアイデアが出たりすることもありました?
AS:ああ、まったくその通りだ。これまで長年、たくさんの凄腕ドラマーたち…しかもベテランがバンドに加入してくれた。また、今の20代のプレイヤーには彼ら世代ならではの特別なものがある。彼らは、俺たちが20代の時にやっていた音楽をやっているんだ(笑)。クリスには特別な資質があり、それをバンドに持ち込んでくれた上、俺達全員に刺激を与えてくれた。その最も良い例が、つい最近の出来事で…一時的に助けてくれていたデイヴ・ロンバードが多忙を極めていて一緒に続けられず、クリスに入ってもらった時のこと。不満を漏らしたファンが一人もいなかった(笑)。知らせを聴いた時はがっかりしていたようだけどね、俺たちとデイヴが一緒にやるところが見られなくなったわけだから。実際、デイヴとバンドの組み合わせはいい音を出していたし。でもライヴが始まってクリスの音を聴いた途端、彼らはまったく不満を言わなくなった。とても満足してくれたんだ。だから、レコーディングが待ち遠しいよ。
YG:楽しみです。昨年9月のTHE BAY STRIKES BACK来日でのドラミングも素晴らしかったですからね!
AS:ああ、本当にね!
YG:さて、あなたが2013年にESPのエンドーサーになって10年以上が経ちました。
AS:そうだね、すごいなあ。
YG:今後制作してみたいモデルや計画中のことなどがあれば、話せる範囲で教えていただけますか?
AS:ハハハ(笑)。今の段階であまり話せることはないけど、ESPのUSAモデルで気に入っているものがあるんだ。カラーも特別なグリーンでね。俺は“Doctor Green”と呼んでいる。ファンもそのギターを結構気に入ってくれているみたいだ。だから、あのギターと自分のシグネチュアを組み合わせた市販モデルができないか、話し合っているところだよ。まだ制作段階で、あまり言えることはないけどね。
テスタメント公式インフォメーションTestamentLegions.com – Testament Official SiteESP 公式インフォメーションAlex Skolnick | ESP GUITARS
(インタビュー●ヤング・ギター編集部 取材協力●吉田理人)