“仮面夫婦の親”に育てられた子どもたちの現実 #8「“育ちがばれる”場面で…」
互いに関心も愛情も向け合わず、形だけの夫婦で生活を続けるのが仮面夫婦。
自分たちはそれで納得しているかもしれないけれど、一方で置き去りにされるのが子どもたちの状態です。
生きる環境を選べない子どもにとって、両親の仲が冷めきっているせいで受ける影響は良い面も悪い面も大きく出てきます。
「親が仮面夫婦」であることは子にどんな現実を強いるのか、ご紹介します。
「小さい頃から、家を支配するのは父方の祖母で、厳しくしつけられました。
学校の成績が悪いと定規で手を叩かれたり、夏休みは学校の宿題のほかにもドリルを与えられて毎日勉強させられたり、そんな私と妹を父はなだめすかしていたのを覚えています。
母はずっと存在感が薄かったというか、祖母と父ばかり話すなかで興味なさそうにテレビを見ていましたね。
母は私と妹はかわいがってくれるけど父とは全然仲良しではなくて、子ども心に上手くいっていないのだなと思っていました。
つらかったのは、母と妹と3人で遊んでいると祖母がやってきて『勉強は?』とすぐ小言を言うことで、それを見て母が私たちをかばってくれることはなくて、仕方なく自分の部屋に戻るのが多かったことです。
リビングはいつも空気がぎくしゃくしていて、妹が水泳大会で賞状をもらった話をしても祖母も父も関心がなく、母だけが『よかったね』と言うような状態が、すごくストレスでした。
私も妹も祖母のせいで勉強が好きではなくて、外の世界の楽しみを知ると小言もどうでもよくなって、中学生になってからは友達と遊んでばかりいました。
成績が下がれば父も祖母と一緒になって文句を言ってきて、それを母は止めることなく見ているだけだし、あの頃は妹とよく『この家、終わってるよね』と話していましたね。
父も母も祖母も嫌いだったし、県外の大学に逃げてからは本当にすっきりして、帰省もほとんどしませんでした。
ただ、常識的なマナーを教わっていなかったので外では恥をかくことが多くて、いわゆる『育ちがばれる』ような場面を経験すると、自分に自信がなくなります。
親が人と楽しく交流する姿を見ていなければどうするべきかイメージがなくて、友達が『親がこうしていた』と前向きに話すのを聞くと、劣等感のような苦い思いが湧いてきます。
頭の悪い人間を見下す祖母の姿が目に焼き付いていて、他人を見て自分もそれをなぞるようなときがあり、ぞっとしますね……。
こんな人間たちの影響は受けない、と家にいる頃は思っていたのに、結局は自分もああなるのかと思うと、本当に胸が苦しくなります」(女性/30代/経理)
自分の理想を押し付ける祖母に仮面夫婦の両親にと、窮屈な家で育つと世間では当たり前のマナーなどが身につかないことがあります。
親から与えられる情報が偏るため、学ぶ機会がなければ外で恥をかく場面はあり、そのせいで自信を失うのは本当につらいことです。
生き方はやり直せると信じ、自分の幸せを諦めない気持ちが、親の呪縛を解く鍵だと感じます。
(ハピママ*/弘田 香)
