令状を読み上げないまま……鹿児島県警によるウェブメディアへの無茶苦茶な強制捜査
7月5日(金)、ニュースキャスター長野智子がパーソナリティを務めるラジオ番組「長野智子アップデート」(文化放送・15時30分~17時)が放送。午後4時台「ニュースアップデート」のコーナーで、ジャーナリスト・上智大学教授の奥山俊宏氏を招き、鹿児島県警の不祥事について話を伺った。
長野智子「鹿児島県警で3月まで生活安全部長を務めていた男性が、退職後に警察情報を北海道にいる小笠原さんっていうジャーナリストに提供した疑いで逮捕されたニュースです。そのあとジャーナリストさんが原稿を寄せていた福岡のニュースサイト『HUNTER(ハンター)』に中願寺さんっていう方がいるんですけど、この事務所に警察が家宅捜索に入って、そこで取材資料を差し押さえて、生活安全部長だった男性を情報提供者として特定して逮捕したということで。すごい簡単に説明しました」
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「なんか令状も読み上げないまま(事務所に)入ってきたっていうね?無茶苦茶な話ですよね」
長野「中願寺さんが、こないだご一緒したイベントでお話しされてたんですけど、(警察は)令状も読み上げずに入ってきたみたいで、ひどいんですよ。それこそ入口で『うちはメディアですよ!』って中観寺さんが言ったのに、どんどん入ってきたみたいで」
奥山「『HUNTER』という、あまり多くの人は目にしないサイトかもしれませんけれども、警察の不祥事について真面目に追及してきたサイトで。わたしも時々、記事を読むことがあったサイトでした」
長野「メディア自体がべつに犯罪を犯したわけじゃないんですよ、今回。なのに、こういう形で強制捜査って、これはどういうことなんですかね?」
奥山「戦後の日本でいまの憲法が施行されて以降、そういう前例は、わたしが知る限りはまったく無かったと思います。言葉は悪いですけれども、北朝鮮とか中国とかロシアとか、あるいは戦前・戦中の治安維持法があった頃の日本であるとか、そういう社会でならば報道機関の事務所に警察・検察が捜索に入って資料を差し押さえて、その情報源を突き止めて逮捕してしまうというようなことも、もしかしたらあるのかもしれませんし、あったのかもしれませんが、いまの日本の社会でそんなことがあるということが驚きました」
長野「驚きましたね。そこがまず一つの大きな問題点なんですけども。もう一点の問題点として、奥山さんはこの一連の鹿児島県警のことを追ってらっしゃったんですけど、元生活安全部長の人が公益通報者なのかというポイントですよね。そこはどういうふうにご覧になってますか?」
奥山「さまざまな形で公式・非公式に情報提供っていうのは行われて、それに基づいて記者たちは事件や事故、災害に関する原稿・記事を発信しています。それを理由に、出しちゃいけない情報を出したっていうことで警察幹部を逮捕するなどということは、これもわたしの知る限り、ここ70数年の日本では無かったと思います。今回の鹿児島県警の本田さん(元・生活安全部長)という人のケースは、警察といういわば権力機関の内部で警察官が犯罪に手を染めていたかもしれないという疑いに関する情報をジャーナリストに提供したというものです。これをいきなり、そういう情報を提供したということを理由に逮捕するなどということは、江戸時代の悪代官がやっているような、非常識な印象を受けました」
長野「じゃあなんで今回こんなことが起きてしまったんだろうっていう問題ですよね」
奥山「そこについてはちょっと解せないところが多々あります。わたしも昔、警察・検察を記者として担当していた時代があって、いろんな警察官あるいは検事の人たちに取材してきた経験から言うと、相当慎重な組織内部での検討を経てもやらないっていうことが、わたしの知ってるこれまでの警察・検察のやり方だったと思いますので、それを一挙に大きく踏み越えたようなやり方を、なぜ鹿児島県警が今回やったのかっていうのは、ちゃんとした検討を経ずにやったのか、それとも何らかの別の背景があってのことなのか、ちょっとまだよくわからないというのが正直なところです。ただ、極めて異例なやり方であったということは間違いないですし、このような在り方を前例としてまかり通らせると、ちょっと末恐ろしい世の中になってしまうのではないかという一抹の恐怖を感じています」