開発前の栗木町残す 小林伸さんが自費出版
磯子区洋光台のまちは、日本住宅公団(現UR都市機構)による大規模な宅地開発などにより、50年以上前に誕生した。その洋光台開発前の栗木町の様子を知る小林伸さん(83)=港南区在住=がこのほど、書籍『栗木町界隈の昔日懐かしの洋光台開発前』を自費出版した。
約2年間の制作期間を経て今年3月に完成した同書には、戦前から戦後にかけての栗木町での生活や、家族・地域の絆などが描かれている。洋光台開発前を実際に目で見ている自分が、当時の様子を後世に伝えたいという思いで執筆した。
1945年、小林さんは4歳の頃に戦火を逃れ保土ケ谷区から栗木町へ疎開。現在の洋光台第二小学校門前にあった親戚が社員寮として所有していた建物で、それから約23年間を過ごした。当時自宅の周りには家が数軒しかなく、タヌキやウサギ、イタチといった動物たちも暮らす豊かな自然が広がっていたという。
小林さんは書籍の制作のほか、近隣の小学校での講演などを通して、当時の地域の様子を伝える活動をしている。栗木町の方言などを紹介した際は、「今と昔の違いに驚く子どもの反応を見るのが楽しい」と話す。書籍について「若い世代に開発前の栗木町を知ってほしいという思いで制作した。出版物は良くも悪くも事実として後世に伝わる。自分の確かな記憶に基づいた真実を残したいと思った」と語る。
同書は磯子図書館や横浜中央図書館、近隣の小学校、町内会などに寄贈された。