お前は、どの種類のアメリカ人だ?出身地だけで“生死のジャッジ”を下す『シビル・ウォー アメリカ最後の日』本編シーン
A24史上最高のオープニング記録を樹立、興行収入ランキングで2週連続1位を獲得した話題作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が、10月4日(金)より公開される。このたび、出身地だけで<生死のジャッジ>を下していく、得体の知れない男を捉えた戦慄の本編映像が解禁となった。
もし、アメリカで内戦が起こったら?
今や世界を席巻する「A24」が、史上最大の製作費を投じ、アメリカで起きる内戦を描く本作。メガホンを執ったのは、『28日後…』で脚本を担当し、長編デビュー作『エクス・マキナ』で 「第88回アカデミー賞」視覚効果賞を受賞する快挙を果たしたアレックス・ガーランド。3月の「サウス・バイ・サウスウエスト」にてプレミア上映されると、「純粋に言葉を失う」「傑作だ。私の心臓は常に高鳴り続け、最終幕には顎が床についた」「今まで観たどの作品とも違う。最初から最後まで手に汗握る展開。狂おしいほどの緊張感だ」などと絶賛の声が相次ぎ、公開前からSNSを中心に大きな話題に。世界71の国と地域で公開を迎えた本作は、2週連続で全米1位を獲得した。
映画の舞台は、連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていく—。
得体の知れない男が、<生死のジャッジ>を下していく
「どういう米国人だ?」「中米か?南米か?」赤いサングラスをかけた“得体の知れない男(ジェシー・プレモンス)”が、リーたちの出身地を1人ずつ詰問。答えていくリーたちに、「米国的だ」「それが米国人だ」と、出身地だけで身勝手に目の前の人間の<生死のジャッジ>を下していく—。このおぞましいシーンは、監督が、今、現実世界で起こっている<差別の縮図>として描き出したという。
フロリダ出身の記者ジョエルを演じたワグネル・モウラも、有無を言わさぬあまりにも威圧的なこのシーンに対して「僕がアメリカ人ではないということもあり、プレモンスが放つ驚くほどに自然な人種差別の強烈な憎悪に向き合うことは本当に大変でした」「撮影に丸一日かかったこのシーンは、過酷で体力的にも苦しかった。自分と友人の命乞いをして、人種差別的なジェシー・プレモンスの演技を見て一日が終わる頃、僕は横たわって泣いたのを覚えています。このシーンのあと30分泣き続けたのを覚えています。とても強烈でした」と圧倒的な恐怖を抱えた撮影当時を振り返っている。
11月に迫った米大統領を控え、日本でも関心が高まる中、9月11日(日本時間)には、候補者による討論会も行われた。ガーランド監督は「『トランプの当選は世界にとって健全なことではない』というのが私の意見。彼は非民主的だし、腐敗している。あのような人が世界最強国のリーダーになるのは理にかなったことではない」「アメリカ国外においては、これが最も広く共有されている意見なのではないかと思う。トランプのことが大好きな人もいるのは知っているけれど、私は『それは違う』と思う、と確固とした意思を語っている。映像で映し出される、この<得体の知れない男>は、トランプを意識したキャラクターであることもガーランド監督は明かしている。
<得体の知れない男>を演じたのは、リー役を演じたキルステン・ダンストの実の夫、ジェシー・プレモンス。ヨルゴス・ランティモスがメガホンをとる『憐みの3章』にも出演しており、「第77回カンヌ国際映画祭」で男優賞も授賞、注目の俳優の一人である。今回本作での役柄はもともとは、別のキャストが演じるはずだったが、急遽予定のキャストが撮影5日前に降板。困り果てたガーランド監督をみたキルステン・ダンストが速攻で夫のプレモンスに連絡を取り、この稀有なキャステイングしたという。劇中と同じく姉御肌を炸裂させたダンストだが「アレックス(・ガーランド監督)はラッキーでしたね。私としては、もしジェシーを使いたいならどうぞって感じで。でも夫がすばらしい俳優だと役に立ちますね」と笑顔を見せながら語っている。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は10月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開