まるで娘のマネージャー!? 緻密なスケジュール管理が必要な娘の放課後【読者体験談】
監修:藤井明子
小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長
まるで娘のマネージャー!? 緻密なスケジュール管理が必要な娘の放課後
現在7歳の娘は、6歳でASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動症)の4つの診断を受けています。基本的にチャレンジ精神が高く、万事に好奇心旺盛な性格ですが、重度のディスレクシア、DCD(発達性協調運動症)による粗大・微細運動のバラツキのある不器用さ、ASD(自閉スペクトラム症)のルーティンに対する遂行能力、ADHD(注意欠如多動症)による脳内多動などの特性があります。
すべて私がスマートフォンで管理し、車で送迎しています。放デイや習い事ばかりでは面白くないだろうから、休みの日も確保してお出かけもマメに企画しています。精神科、眼科、歯科などの病院にも定期的に通っているので、予定が被らないよう頻繁にチェック。まるでマネージャーの仕事をしているみたいです。
そんな娘の特性に合わせた放課後の過ごし方について、見つけたきっかけや内容などご紹介します。
入学式のチラシがきっかけに。診断前から始まった武道と学習塾
娘の習い事第一号は、小学校入学式で配られた一枚のチラシから始まりました。このチラシは武道教室のものでした。そを見た娘が「やってみる!」と言ったのです。当時はまだ発達特性について診断を受ける前でした。
同じ頃、私もインターネットでさまざまな育児論を見漁っており、通ってみたらどうだろうと思えるような学習塾の存在を知りました。これについて娘に「行ってみる〜?」と聞くと、またしても「やってみる!」という返事。こうして診断前から、始まった放課後の予定は2つ、武道教室と学習塾でした。娘の放課後は活動的になっていきました。
診断後の戦略的選択!3つの放課後等デイサービスを探し求めて
1年生の7月後半に診断を受けた後、私は娘の特性に合わせた支援を本格的に探し始めました。DCD(発達性協調運動症)が支援による改善が一番見込めるのでは?と思った私は、粗大運動にアプローチできる運動療法メインの放デイ(放課後等デイサービス)を探し、タイミングよく新しく開校するところ見つけすぐに申し込みました。
こちらに通うようになり数か月でかなり原始反射が統合され、身体のふらつきが減り、本人も手応えを感じています。毎回作業療法士さんからの詳しいフィードバックがあり、武道の動きを私が動画に撮って確認してもらい、療育プログラムを適宜ステップアップしてもらっています。娘にぴったりの放デイを見つけられてよかったです。
次に探したのは、娘の将来の趣味や進路のきっかけを見つけられそうな遊び・趣味探究型の放デイでした。募集はしていませんでしたが、体験希望を出しました。現在定期的な利用はキャンセル待ちなのですが、単発では通うことができるので、不定期で利用をしています。娘はこちらもお気に入りです。
難関だったディスレクシアの娘に合った放デイ
最も苦労したのがLD・SLD(限局性学習症)についての支援です。ディスレクシアがあるので落ち着いて読み書きのできる環境や活動・支援のあるの放デイが良いと思っていたのですが、該当しそうな放デイには空きがなく……。
1年生の時から数か月かけて説明会から利用予約待ちをし、ようやく新年度の入れ替わりで枠が空いて通えることになりました。思ったより早めに入れそうで本当に良かったと心底ほっとしました。こちらには、おそらく18歳まで通うことになるのではないかと思っています。
放課後の活動が「全部大好き」という奇跡
娘は通所受給者証の支給日数を23日いただいているので、このように娘にあった支援を受けることができ本当によかったです。また放課後の過ごし方も曜日によってほどよく趣旨がばらけているため、娘は今のところどれも嫌がることがありません。
運動型の放デイのおかげで身体がしっかり動かせるようになり、徒歩通学と武道で体力がつき、学習塾で勉強が楽しくなって学校でもすべての教科を楽しめています。探究型放デイでは創作活動やデジタルツールを使って毎回楽しんで帰ってきます。
どれが一番好きということもなく、学校含めてすべてそれぞれ「大好き」だそうです。これが本当に奇跡だと思います。そう言ってくれるから、私もマネージャー業を楽しんでやれていると思います。
娘にはこれからもチャレンジ精神と好奇心と優しさで、社会的に障害が出てきても乗り越えていってほしいです。特性は消えませんが、得意なことを武器にしながら世を渡っていってほしいと思っています。
イラスト/星あかり
エピソード参考/ハツネ
(監修:藤井先生)
娘さんが放課後等デイサービスに楽しく通っている様子が伝わり、とても心が和みました。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)、LD・SLD(限局性学習症)といった特性を持ちながらも、娘さんらしいペースで日々を過ごしていること、そして何より親御さんがその歩みに寄り添っておられることに、温かい気持ちになりました。子育ては悩みや不安の連続かもしれませんが、お子さんの「楽しい!」という気持ちは、親御さんの支えがあってこそ育まれるものです。療育も放課後等デイサービスも、お子さん一人ひとりのリズムに合わせて取り組むことが大切ですね。これからも娘さんの「その子らしさ」を大切に、温かく見守っていかれることを、心より応援しています。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。